つれづれのおと

ディアマイロックスター

リストなきソリストのリスト

「リストなきソリスト」。
このタイトルと告知を初めて目にした時の動揺と震えときたら、今でも手に取るように思い出せる。

あべどんさんが、ソロアーティストとして舞台に立つ。
今まではバンドメンバーがいたけれど、もちろんそれはそれでとても素敵で楽しかったけれど、今回はおそらく、彼らはいない。
ファンになって初めての状況に、どんな顔を見せてくださるのだろう…と高まる緊張。ましてや一庶民のわたしが、あのビルボードというラグジュアリーな空間に再び足を踏み入れ、音楽を楽しむことができるとは。

1公演だけでも参加できたら…と思っていたのだけれど、幸運にも、仙台と東京1日目の1st以外は参加することができました。
ひとつひとつのライブは約1時間半。普段のバンドのライブと比べたら短いけれど(と言っても二回まわしだから実質1日3時間なのだけど)、どの公演も、音楽の楽しさやうつくしさ、あべどんさんのセンスや思いつきがぎゅっと詰め込まれていて、素晴らしく素晴らしい空間でした。
そして、あんなあべどんさん…いえ、阿部義晴さん、は、9年ずっと追いかけてきたけど、初めて見た。見たことのなかったお顔とたたずまいに、ずっとドキドキさせられっぱなしでした。
とてもとても、わたしなんかが文章で表すことなんかできない。けれど、思ったこと感じたことは山のようにあって煮詰まりそうで、東京公演を中心に、とにかく思うままに色々と書き連ねました。そしたら予想以上に歩絵夢(ぽえむ)になってしまった…
あの空間を垣間見たい、体感したいという方は、ぜひ9/6発売のブルーレイで。ぜひ。本当に良かったから…!個人的には自分の誕生日と1日違いの発売に心が浮き立っています。この方はわたしにどれだけたくさんプレゼントをくださるのか…(勝手に)。
そしてUCFCツアーを観た今、この公演で観せてくださったことは、これからのユニコーンの中でもかなり重要になってくることなのではないか、とも勝手に思うのです。なので、ご興味が少しでもありましたら、本当に、ぜひブルーレイを。綺麗な画面で見るに値する映像だと思います。



ビルボード東京はフロアに入るまでに階段がある。それを慣れない靴とスカートでそろりそろりと歩いて、目の前が開けた瞬間、息を飲んだ。
1173 studioだ…!
ステージの上は絨毯が敷かれていて、トルコランプやキャンドルを模した間接照明(と、それに似た色のステージ照明)であたたかく照らされている。
中央にテーブルとそれに向かう椅子が二脚。下手に、小さいキーボード(ムーグ?)をのせた白いオルガンのような楽器(のちにメロトロンとの説明があった)、上手にグランドピアノ。ビルボードスタインウェイブルーノート名古屋はFAZIOLI(ファツィオリ)というイタリアのメーカーのものだそうで。東京以外は蓋をとってあったような。
のちに大阪1stで「自分のスタジオにセットを組んで、そのまま持ってきたんでね。自分の部屋にいるみたい」と仰っていたけれど、これまで写真や動画で一部を目にしていた、あべどんさんのアトリエと言ってもいい場所、その空間の一部をそうっと切り取って、壊さないようにそっくりそのまま逗子から都心に持ってきたようだった(開演前はカーテンはしまっていたけれど、東京ではそれが開いてガラス張りの壁、というか一面の大きな窓があらわれた時には、この"1173 studioのかけら"が、大事に大事にガラスケースの中にしまわれているようにも見えた)。
テーブルと椅子の後ろ、つまりステージの奥には薄型テレビのようなモニターがあって、そこには地球がぽっかりと浮かんでいる。人工衛星から撮影したみたいに、ゆっくりと周囲を回りながら、"今"の地球を映し出す(LIVING EARTHというアプリだそう)。
落ち着いた照明と、ちらほらと交わされている話し声、食器のぶつかるかすかな音、どこか懐かしさを感じる洋楽のBGM。
なんだか勝手に、特別にスタジオにお招きいただいて、なのに約束より少し早く着いてしまって主の帰還を待っているような感覚におちいる。テーブルに案内された後も毎回、どきどきとうっとりが止まらないのだった。

時間になり、フロアの照明が落とされる。
シャンパングラスを片手にフロアを通って登場する、あべどんさんと高橋さん。
出入り口は、ビルボード東京はフロアの真ん中よりちょっと前あたりの下手側、大阪とブルーノート名古屋は上手側の舞台の端。どちらにしろ少なからずフロアを通るので、お客さんに軽く会釈しながら舞台へ。
と、冷静に説明していますが、もう毎回、この時点で息ができませんでした。なんたって、お召し物が、素敵すぎる…!!!!!
インナーが青か白のVネック、ちょっとぶかっとしたロングジャケットかロングカーディガンかややカジュアルめのジャケット(どれも黒)、あの細いおみ足にぴったりのジーンズか黒っぽいパンツ。全て無地でシンプルなデザインのそれらを、色々組み合わせて身につけていらした。
靴は銀色で、紐のないシンプルなスニーカー。ネックレスは組紐みたいなやつで、ブレスレットもしてらしたような。
あの、まあ、写真やブルーレイの告知動画でも出てるから見てほしい。とにかく見てほしい。あまりかっちりはしていない、けれどきちんとしたところの服だとわかる、シンプルだけどだからこそ"大人"を感じる出で立ち。兼オタの悪い癖だけど、どこかエマさんを彷彿とさせる、というか黒のロングジャケットとかモロじゃん、そういうの着てほしかったんや…!!と心の中で毎回大パニックでした。
もちろん、バンドの時のツナギとか限りなくイケメンなスーツとか、あべどんちゃんバンドの白シャツ+短パン+スカーフなんかもそりゃあ素敵だった。けど、今回のこれはなんというか…その、いい意味で、衣装ではなくフォーマル寄りの普段着っぽいというか。それこそスタジオに居る、けど誰かしらお客さんが来るみたいなシチュエーションで着てそうだ、と思ってしまって、なんだかわからないけどやたらドキドキした。
琥珀色の御髪も、照明にキラキラ照らされて、動くたび静かにサラサラとなびいて、いつもと同じなのにどこか大人っぽかった。

席に座るかと思いきや、おもむろに舞台奥のモニターの下へ向かうあべどんさん。そこに、盤を縦に置くタイプのレコードプレーヤーがあって、なんと開場中のBGMはそこで流していたのだ(もちろんスピーカー通してだけど)。
高橋さんやヨッシーさんにもアシストしてもらったりしながら、レコードを取り替えるあべどんさん(東京の1日目は、『あ、これ取り替えなきゃ!』と思いついたように言ってらして、まだ慣れてない感じだけどそれがなんだか素敵だった)。
下手側の椅子にウクレレを手にした高橋さんが座って(大阪ではフライングVウクレレにしたような楽器を持っていらした、弦は6本だった気がするけど違うかもしれない…)、緊張気味のお客さん一人一人と目を合わせてにこにこ会釈。この後も何度かやってらして、それがなんともジェントルで素敵だった。
替えたレコードから流れてくるのは、寄せては返す波の音。
あべどんさんは上手側に座って、テーブルに置いてあったタンバリンを膝にのっける。2人で目と呼吸を合わせて、1曲目。


1.SO SO GOOD/SEA SIDE STYLE
多分毎回、1stがSO SO〜で、2ndがSEA SIDE〜だったのかな。
膝の上のタンバリンを両手で叩きながら、緩やかな(それこそ『G』の特典CDに入ってた、レゲエぽいver.のような)テンポで、テーブルの上のマイクに向かって猫背気味で歌うあべどんさん。
波の音とウクレレの音、それから東京では、青い地灯りにまだら模様が回る白い灯りが真上からいくつかおりていた。
海だ。穏やかでキラキラしていて眩しい、湘南の海。
歌い方はどこか甘くて、けれどのびやかで、本当に、堤防か砂浜に2人でちんまりと座って、逗子の海に向かって演奏しているようだった。

名古屋1stでは曲が終わると、おもむろに手をじっ…と見て、「手が痛いの」「木は硬いでしょ?手は柔らかいでしょ?」と子供のような口調で仰っていて、うん……そうだね………と吐血しそうになりながら心の中で相槌を打った。かわいすぎる。
東京1日目の2ndでは、
A「jr.くんは日本語より英語が得意だから。(歌詞の)『ティウティウ♪』って何て読むの?って言ってたよね」
高「『ていう ていう』??って」
なんて話も。まあ日本語ネイティブでも読めないです…w


ここで楽器を替えながらちょこちょこお話。
というか、全体的にあべどんさんと高橋さんのゆるゆるとしたやりとりがとても良かった。
大阪の2ndでは「ジュニアくんとは生まれが同じイギリスでね…(ここでくすくす笑いが起きるw)。酒がなくても、茶だけで朝まで渡り合えるのはジュニアくんだけ」みたいなことも仰ってた。高橋さんも、いつぞやあべどんさんの家に居候してたことがあった…とのお話を。そんなに仲良しだったのか!「うちの子になる?ってねw」と笑うあべどんさん。阿部家のキャパシティでかいな。
高「生まれ変わったらあべどんになりたい」A「おれはジュニア(高橋さん)になりたい」
なんてやりとりも。
あと名古屋1stでは、高橋さんにオファーする時に「さみしいから一緒に来て、って言った」とも。どんな誘い方!wでも、居てくださると安心な、音楽的にも人間的にも信頼できる存在なのだろうなあ。


2.不思議は不思議
高橋さんはアップライトベースをセット。あべどんさん、立ったままおもむろにグランドピアノに向かい、なんと左手を中へつっこむ。え、と思った瞬間、右手が速いリズムで奏でたのはくぐもった音。ピアノを挟んであべどんさんと反対側で観られた回があって、そこでやっと、もしかして一部だけミュートしてるのか!と、弦楽器のような使い方(まあピアノも弦を叩いて音を出してるんだけど)びっくり。
「場所に座り〜」と歌った後、左手も鍵盤に戻し、両手で弾き語るあべどんさん。
ピアノって真ん中のペダル踏むと全ての音がミュートされて、つまりくぐもった音になるはずだけど、でもこういういいとこのグランドピアノには付いてなかったりするんだろうか。または一部だけそうしたかったのかなあ。1番が終わるとまたすぐ立って左手をつっこんでいらしたし。
なんか、元からこういうピアノの使い方ってあったのかもだけど(どっかで見たような気もする…と思って調べたら、普通はまずやらないらしいけど、海外のアーティストでやってる方がいらした)、発想がすごいなあ、そしてきちんと人に聴かせられるレベルまで持ってけるのがすごい。…という感想を、ここから何度も抱くことになるのだった。
高橋さんのベース指弾きもとても素敵だった。
東京2日目の2ndで気づいたのだけど、座って間奏やアウトロを弾いてる時、左足がリズムに合わせて前後に動いてステップを踏んでるのがとても素敵だった。


3.ときどき雨
この曲もグランドピアノ+アップライトベースで。サビのベースは弓で弾いてらしたかな。なんだか楽器が少ない分、よりパーソナルな歌になってたような。
「箱根に行こうか〜」のところ、東京では「…ビルボードでも行きますかねw」とちょっと間をおいてやや照れながら?仰る。大阪では「…ビルボードに行きますか?」「…大阪に行こうか?」だったけど、名古屋ではさらっと、名古屋に行こうか〜と歌ってらした。


4.三角系
告知動画とかでもスタジオに置いてあったギターを抱えるあべどんさん。高橋さんは下手側に座ってブルースハープを手にする。
歌い出しはテーブルの真ん中あたりに置いてあった背の低いマイク。なんだかデッドな声というか、微妙なエフェクトのかかった声。リズムに合わせてじゃかじゃかとギターをかき鳴らしながら歌う様がカッコいい。サビは普通のマイクで、座っているのにすごく伸びやかな声だった。
個人的にこの曲ものすごく好きなのだけど、ライブで聴いたことがなかったから嬉しかった。見当違いかもしれないけど、どことなくあべどんさんなりのブルース(ユニのではなくw)のようだ、と思った。


演奏が終わると、高橋さんがおもむろに「ちょっとコンビニ行ってくるわ」と立ち上がる。え、と思ううちにあべどんさんが「ちょっとコーヒー買ってきて(と、あべどんさんから言い出すこともあったw)」「じゃあちょっとのど飴買ってきて」などと声をかけ(毎回、悪ノリするんでなく、ひとつだけ買い物を頼むのがらしいなあと思った)、そのまま高橋さん退場。
余談として、東京では演者の通り道付近の席にいたのだけど、通りすがりにグラスを持った高橋さんがお客さんへ「では、後ほど」とニッコリされていてめちゃくちゃドキドキした。ディズニー映画の登場人物みたいだった。


ビルボード東京では、ここで入れ替わりにゲストのコーナー(?)。
東京1日目2ndはヤックさん。
お盆にコラボカクテルのグラスをのせて運んでくる。「俺ビーサンで来ちゃったよぉ」と言いつつ、グラスをあべどんさんに渡すと、お盆を股間の前で裏表にひっくり返すヤック100%さんになってしまい、あべどんさんに優しくたしなめられる。
ヤ「これはどういうカクテルですか?」
A「ええーと…(キョロキョロしながら)説明(書き)ある?」ここでお客さんがみんな探してあげてるのがなんだか素敵だったw
ヤ「こういうの作ってって言ったの?」
A「何がいいかって言われたから『シャンパンが好きだよ?コーヒーもチョコレートも好きだよ?』って言ったの」←ハテナマークのとこで語尾がいちいち上がっててかわいい
ヤ「ふーん(あべどんさんが口をつけた反対側から飲む)」
A「あっ、それ(グラスの縁についた、粉砕されたコーヒー豆)は食べないの。こうやって香りを楽しむんだって」←ちなみにこの口調がとても素っぽいというか、まさしく友達との会話のような感じで、こんな顔見たことない…とドキドキした。
ちなみにコラボカクテル、名古屋だけは元からあべどんさんが好きな銘柄のシャンパンを使っていたらしく、味が違う!と仰っていたような。

以下のお話は順不同。

・ヤックさんとやってたE.R.Oのライブの話
A「青山のマンダラでビールが出てきちゃってね」
ヤ「飲まないわけにいかないから、飲んだら俺ずっとこう(マイクに額をつけたまま動かない)で動けなかった」
A「ここ(額)にアミアミ(マイクの痕)がついちゃってねw」そうかヤックさん下戸だった。カクテル飲んじゃって大丈夫だったのかしらw

・あべどんさんソロの話
ヤ「2年くらいずっと『1人でやれ』って言ってたんだけど」←ナイスアシストすぎる
A「でも毎日ヤックに電話してたよね。『どーすんのよ!?MCとかどーすんのよ!?』って」ヤックさんの包容力…
A「ヤックも1人でやるんでしょ?」
ヤ「そう。だから盗みに来たの」
A「これ(カーディガン)貸そうか?(これも?という感じでネックレスをつまむ)」
本当にカーディガン脱いで渡されるヤックさん、着てみて「なんで笑いが起こるんだよ」とムッとしてたw

A「(ヤックさんに何かしてもらって)すいません」
ヤ「や、すいませんじゃないよ」
A「ありがとう。…そんな歌あったねw」

ヤ「(曲)全部知ってる!そこで聴いてたんだけど、全部知ってた!」←当たり前
A「俺のこと好きでしょw」
ヤ「大好き!w」

そしてヤックさんがはけると、「近所に住んでる…親友です」とあべどんさん。

ちなみに、関係者席が多分下手側のスタンド席の1番前、ソファ席みたいなとこで、ヤックさんやら健くん(座らないで立ってた)やら、あと東京2日目はダーハラさんや有太さんがそこで観ていらした。

東京2日目1stは、健くんがサラッとカクテルをサーブ。
短パンだけど、ハット、襟付きシャツ、蝶ネクタイ?でフォーマルめにキメた健くんに、ヤックさんと同じように、羽織っていたロングジャケットを着せてあげるあべどんさん。しかし、短パンなもので、お客さんから笑いが起こるw
A「昨日と違うやつだから」
健「お父さんのスーツ着た子供みたい…」

2ndは有太さんが「出るつもりじゃなかったんだけど…」と苦笑しつつお盆にのせたカクテルを持ってくる。2人で座って談笑。
途中で健くんが有太さんの分?のカクテルも持ってきたら、「健もここ座りな」と声をかけるあべどんさん。無言で従って、ピアノの椅子に腰かけるのかと思いきや、あべどんさんの左隣りに正座する忠犬のような健くんw
同じ鍵盤奏者に観られているのが気になっていたらしいあべどんさん、「ずっと有太くんのこと考えながら弾いてた」と、そこだけ抜き出したら誤解を生む発言。人たらしさんめw
A「ヤックから1人でやれって言われて…」有「俺もちょっとそう思ってたよ。見てみたいって。もちろん一緒にもやりたいけど」
A「最近何やってるの?」
有「最近?ほら、あなたたちのバンドの…w(ここで、あ〜、みたいなリアクションしつつも、名前は出さないあべどんさん) 奥田民生のツアー終わって、ソロアルバムを作ってます」
A「そういうこと言わないと。アルバム出すんだよね?もうできてるの?」
有「ほとんど。マスタリングはあべどんにやってもらおうと」
A「この前までヤックの(ソロアルバムのマスタリング)やってたのよw(オファーは)黄金ルートがあるから」
有「そう、直接ねw」
そして、これ見て!とばかりに、後ろの画面にバッハの肖像画とイーガのジャケ写のあべどんさんの顔をコラージュした画像を映すあべどんさん。有太さんから「これ、なんかいいw」とコメントをもらってご満悦。
この画像については、どこかで一人で紹介してた時に「『(宣伝画像が)できました!』って言うから見てみたら『これリストじゃないじゃん!!』ってw」と仰っていて…デザイナーさんも、間違ったわけじゃなくて試しに作ったら面白かったからリストじゃないけど出してみた、とかなのだろうけどw、なんか、何も言わなくても"リストじゃなくてバッハじゃん!"と、面白ポイントを有太さんにはパッとわかってもらえるの、嬉しかったのかなあ、なんて邪推。

ちなみにこのコラ画像と、仰向けでこちらを見ているかわいいハチワレサバ猫の画像が、別コーナーでiPadをいじってる時にふわっと出てくることがあってw
「まちがえた」とか仰ってたけど、本当に間違えてフォルダの中身が画面に出ちゃってた時、その二つの画像しかなかったから、わざとか!?仕込みか!?と思ったりしました。ふふふ。


さて、再び1人になったあべどんさん(大阪と名古屋はゲストはいなくて、大阪では『そこで買ってきたの。聴いてみる?』と、あべどんさんと同じ誕生日だというミュージシャン3人、ポール・アンカとか、のレコードをちょっとずつ聴かせてくれた)。おもむろに下手側のメロトロンに近づく。
と、その上のムーグ?をいじると、ラテンぽいチャカポコした軽快な音楽が。それに合わせて踊るあべどんさん。"ヘイ!"という曲中のかけ声に合わせて、WAO!のイントロみたいに腕を広げてポーズしたり、ヘイ!をお客さんに言わせたり。
最終的に、リズムに合わせて「す〜いませんを〜♪ ありがとうにかえた♪」と「ことば」の1番のAメロを歌う。妙に明るい曲になったなあwと思ってたら、名古屋の2ndで「観に来た知り合いに『あんなアレンジにするな』って言われた…」と仰っていた。や、良いと思うけど…そして最後の公演でそれ言うのかw
終わり際に毎回、若干赤い顔で「これを一人でリハしてるんだぜ?w」と仰るあべどんさん。大阪の2ndではそこに「愛おしいだろ?w」と加えてらした。むしろそういうこと言っちゃうとこが愛おしいです!!!(大声)


さて、真ん中の椅子に戻って来るあべどんさん。
テーブルに頬杖をつきながら、ひょいひょい、とiPadをいじると、モニターに現れるのは座標軸がブラウン管に映っているような画面。ふわーん、みたいな、宇宙空間をあらわすような音がかすかに鳴っている。
あべどんさんが指を動かすと、座標軸の上に、ぱ、ぱ、と直線があらわれる。タップしたところを結ぶ線ができるのかなあ、と思って見ていると、線が描くのはオリオン座のような鼓型、はたまた一筆書きの五芒星、そしてBDの告知動画にもある若葉マークのような形(を、一公演につき一つ描いていた)。余談ですが東京2日目の2ndでそれを見たわたくし、ふっと(にゃんこみたい…や、流石にないなw)と思ったのだけど、後からそれが自爆装置になるとは。
画面の向かって左上あたり、くるくると小さく周回していた3つの点。それがあべどんさんの合図で?しゅうっと流星のように、描かれた線の上を走り始める。終点にたどり着いたらまた戻って、最初から。それぞれの点の動きに合わせて、ぐわんぐわんと高低する音程。大阪1stでは確かムーグ?からも似たような音を出していて、それらを調整している過程で「この響きは良くないな」と調整し直したり、ふと我に返って「夢中になってしまいました」などと仰る場面もあったけど、ものすごく集中して、あべどんさんにしかわからないような微妙な調整をしながら世界を構築しようとしているのが見てとれる。
頃合いを見て、ドミノあるいはジェンガを置いた時のように、そっと、けれど勢いをつけて椅子を離れ、下手の鍵盤達に向かうあべどんさん。


5.Beautiful Day
マイクに向かって顔を傾けて「流れる水にー…」と歌いだす瞬間は、毎回毎回ぞわりとした。
あべどんさんが奏でる音と、小さな点が行き来する音、そして歌。その3つが不協和音?マーブル模様?のように混ざり合って、混沌とした渦に巻き込まれる。
讃美歌みたいだ、と思った。きちんと聴いたことはないけれど、広い教会とかでパイプオルガンの音が響きまくって、前後の音が混ざり合って形成されたような音。
演奏し終わったご本人も思わず「カオスだな!」と、科学者が小さいけど新しい発見をした時のような淡いドキドキに満ちた声で仰っていた。
点が描く軌道は、たとえ同じ図形を描いたとしてもフリーハンドだから毎回微妙に違っていた。だからこそ、そこに合わせて?演奏するというのは、即興というより実験みたいだ、と思った。ここに限らずではあるけど、この場面で一番、機材と機材の間をうろうろしながらひたすら音の調整をしていたあべどんさん。でもそれは迷いや必死さからではなく、ここをこうしたらいいんじゃないか、という、純粋な興味や勘が赴くままに、音楽のことだけを考えてアイデアを形にしようとする研究者のようだった。

ちなみに、件の東京2日目2nd。何の図形かわかる?みたいにお客さんに聞いた(んだったか)あべどんさん。あまり芳しい答えが上がらず、
「猫ちゃんだよ!!わかれよ!!!」
とやや顔を赤くしながら叫ぶあべどんさん。
合ってたー!!!
ていうか猫ちゃんて!!
ね こ 「 ち ゃ ん 」 て ! ! !
わかってましたよ!!!と叫んでビルボードの床という床を転がりたい気持ちを必死で抑えつつ悶えていたわたくし。かわいすぎた………


さて先ほどの椅子に戻るあべどんさん。
ヨッシーさんの手助けを受けながら(というか、公演の前後も含めてステージ脇にいつも待機していて、いろんなアシストをしていらした。安心感ぱない…)、黒くて細長い板のようなものを、座った膝の上にセットする。
見える?と、上の方の席のお客さんのために持ち上げてくれるのだけど、名古屋1stでは「板さんです!!」と持ち上げたそれを頭に擦り付けてまた持ち上げて「こうすると下じきみたいだね」と仰っていたw
ちなみに、おそらくROLI社のseaboardという楽器のようなので、"板さん"という呼び名もあながち間違ってない(そうか?)。
ここで毎回、お客さんに向けて、板さんとはなんぞや、ということを説明してくださるあべどん先生。以下は東京1日目2ndの説明をベースに、他の公演で仰ってたことを追加してます。
A「これねえ、この板。50の祭の時にニューヨークで買ったんですけど(サンフランシスコ、って仰ってた公演もあったけど、それは一回だけだったので多分NYで良いのだと思う)。(並べられてる)フロアに人がいなかったの。で、こう…(弾く)、普通、鍵盤って、ドミソだと(ピアノを弾いてみせる)こうなるんだけど、これは(弾いてみせる)斜めに弾くとこうなっちゃうのよw(ふわーんと、弦楽器で出したような滑らかに他の音に移行していく音) だから売れないんだよ!wキーボーディストには弾けない。これは俺にしか弾けない(さらりと)」
他の公演ではピアノを和音でなく単音で弾いていて「ピアノは安定した楽器だけど、これは不安定な楽器」と違いを説明してらした。つまり、板さんの上には鍵盤の模様はあるけれど、いかんせん板…つまり平面なので、出したい一音があるならそこを確実に押さないといけない、少しでもズレたら他の音になってしまう、ということみたい。
でも裏を返せば、それこそが板さんの特長なのだ。
弾いた方がわかりやすいと踏んだのか(もちろん最初からそのつもりだったろうけど)、「たとえば」とiPadをいじって音色を変え、試奏してくださるあべどんさん。
これがもう、すごかった。
まずはバイオリンのような音色で、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」。ラフマニノフの曲を弾いたこともあったらしいけど、いかんせん知識がなくてわからず。でもすごい。本物のバイオリンのような音の出し方、つまりグリッサンドとかビブラートとか(と、いうのかわからないけど)が再現されている。鍵盤で弾くとどうやっても一音一音区切れてしまうけれど、板さんなら指を滑らせたり細かく振動させたりすることで表現できるのだ。確か音の強弱もつけられていたような。
そして「これ知ってる?」と同じ音で弾き始めた次の曲に、息を飲んだ。
賛美歌のような、ゆったりとしてクラシックっぽい曲。けれど、どこかで聴いたことがある。
そうだ、Boys&Girlsだ…!!
サビの「オオカミが〜今も胸に生きてる」の部分までのメロディを演奏していらしたのだけど、赤いフライングVを抱えたあべどんさんがシャウトして分身がパーンと飛ぶ、あのめちゃくちゃにロックで盛り上がるカッコいい曲が、こんなに美しくも切ないメロディだったなんて。聴いているうちに自然に涙がこぼれて、我ながらびっくりした。
ユニコーンの曲なんですけど、元はこんなクラシックで…でも(アルバムに)明るいのが要るっつって、テンポ上がったんですけど」と仰るあべどんさん。
あの曲を聴いてると、確かに楽しいしテンションが上がる。けれど個人的に、なぜか切なさが胸をよぎることがあって、歌詞のせいかなあと思っていたけれど、メロディの美しさによるものだったんだ、と初めて理解した。衝撃だった。
今度は音色をエレキギターに変える。猫背が余計に丸まって、奏でたのは「WAO!」のサビのライトハンドのフレーズ!「もうギター要らないね!w (奏でながら)お〜かみが〜…違った、ライトハンドの曲…『輝く波は』か」とひとりごちて、歌いながら弾いていらした。
すごい。板さんはギターにもなるのか。だとしたら、たとえば以前氣志團ちゃんのドーム公演でサポートした時のように、キーボードでギターフレーズを再現するみたいな場面でも、より本物に近い音が出しやすくなるんじゃないか(もちろん、本物の代用として使うという意味ではなく、できることがものすごく広がるという意味で)。
iPadの画面はモニターにも映し出されていて、板さんの上のタッチしている部分とか、どんな風に動いているかを示した画面や、字が細かくて読めなかったけど音色を選択する画面なんかを見せてもらえた。東京2日目1stでは「なんか自慢みたいになってきたなw」と仰ってたけど、いやはやどうして、ここまで手の内を明かしてくれるなんて、もしかしなくてもものすごく貴重な時間だ。存分に自慢してください、と思った。この楽器のすごさをきちんと自慢できるほどの技術を習得されているって、きっとすごくすごいことだと思うのです。
そして「ここは俺が自由にやっていい時間なんでw」と東京2日目1stで仰っていたけれど、普段からこうしてスタジオで試行錯誤を繰り返しながら音の渦の中にいるのだろうか…と思うと胸が熱くなるのだった。実際、鼻をピッといじったり楽器から楽器へとウロウロしたりする様が、なんとも芸術家ぽかったのだ。
高橋さんが出て来るためにスタンバイしてるのが見えて「もう終わりってことだねw」とも仰ってたけど、なんだかこう、わからないなりに、ずーっと見ていたいなあと思う時間だった。


さて、そうこうしていると、「コンビニ行ってきたよ!!」と高橋さんがレジ袋を持って戻っていらっしゃるw
東京1日目2ndではペットボトル入りの水。名古屋のどちらかでもだったかな。ガーッとほぼ一気に飲んで、最後にちょこっと残すあべどんさん。高橋さんに「あげる」「しあわせは分けないとね」みたいなこと言いつつ残りを差し出す。高橋さん、飲み干して「少なっ!w」などとニコニコしていらした。
東京2日目や名古屋2ndではよくコンビニとかでも売ってる紫の龍角散のど飴(開封済み)。「これ開いてるよ!危ないよ!」「俺のカバンから持ってきたでしょお」などと言いつつ一粒頬張るあべどんさん(今口に入れちゃっていいのか?w)。
大阪1stでは「誕生日プレゼント」と渡された包みを受け取るや否や、「外国の子供ってこうやるよね」と、豪快に包装紙を破って放り投げるあべどんさん。フルハウスのちびっこか。中身は懐かしのオタマトーン!「これも"不安定な楽器"だね。そこで売ってた」と高橋さんは仰ってたけど、個人的にわたしも開演前に寄った楽器屋さんで売ってるのを見かけてたからなんだか嬉しかった。
そして2ndでは「のど飴買ってきたよ」と大きなペロペロキャンディーを取り出す。「喉にはいいけど歯に悪いねw」とあべどんさん。そして板さんのギターの音に合わせて、キャンディーでギターを弾く真似をする高橋さんw そしてここで「吉田くんにも」と小さめのペロペロキャンディーを進呈。びっくりしつつも嬉しそうなヨッシーさん(後述しますが、なんとあべどんさんと同じお誕生日なのだそうです。びっくり!)。
あと、名古屋1stでは、板さんからテルミンのような音を出して、テーブルの上のマイクをテルミンに見立てて周りで手をふわふわ動かしてた。そして「あのねえテルミンてゆう…」と説明し出したら、高橋さんがふっと板さんに触れて音を出したもんで「あっ!?びっくりしたあ、触ってないのに音が出たから」と素で驚いていらして、かわいかったw


6.森ノ(中)
あべどんさんが板さんでイントロを奏でている間、横に座る高橋さん。と、懐から眼鏡を取り出してかけ、1冊のペーパーバックを開く。よくよく見ると表紙はBLACK&WHITEの時のまるめがあべどんさんの小さな写真が、赤、青、黄など一色に加工されてモザイク状に並べてある。タイトルのとこには「SUN SET SUN」の文字。
「In the forest」。三角系で使っていたデッドな(?)マイクに向かって、高橋さんがペーパーバックを読み上げる。内容を聞いていると、どうやら「森ノ(中)」の歌詞だ。
読み終わったところであべどんさんが歌を。それに付随してもう一度、英訳された歌詞が読み上げられる。内容は大体日本語の歌詞と同じだったけど、「森ノ(中) 歩き出した」ってところ、「deeper and deeper」って仰ってなかったか。わたしはこの歌詞、勝手に、森から抜けようと「歩き出した」んだと解釈してたんだけど、さらに深くへ行くのか。森についても「four leaves」と仰ってた覚えがあるので、やはし四ツ葉の森なのか。でも歌声が、最初は少しか細めで穏やかながら、最後に向かうにつれて力強くのびやかになっていっていたのが、森の中で目覚めてご自身の意志で歩き始めたような感じがして、とても素敵だった。
余談だけど大阪だったかで、高橋さんが眼鏡を忘れていらしたようでw、ジャケットに手を当てるんだけど、ない!という顔をしていて(あべどんさんは気づいてなさげだった)。眼鏡なしでもすらすらと朗読されていたのだけど、一連の動きがやっぱり映画の登場人物のようで素敵だった。ちなみに朗読もとてもお上手で、抑えめながら緩急のついた朗々としたお声が、繰り返すけど古き良きディズニー映画のナレーションみたいだった。マルチプレイヤーでいらっしゃる。
東京2日目1stで聴いた時、アウトロでスイマーみたいな箇所があって興奮した。どこがどうというのはさっぱり忘れてしまったので気のせいかもしれないんだけど(ポンコツ)、ちょっとぐっときた。


7.欲望
板さんを隅に立てかけ、再びグランドピアノ へ座るあべどんさん。奏でたのはあのイントロ。ソロの公演ではこれまでも演奏されてきたけれど、思わず息を飲んだ。なにせ、2番をあべどんさんご本人だけの歌声で聴くのは初めてだったから…
リングサイド(という名前がつく前から)の時みたいに、するりと自然にあべどんさんとは別の甘やかな声が歌い上げる2番もそりゃあたまりません。けど、ご本人の歌うそれも(や、これが本家本元なんだけど)、とても良かった。これまで音源では何度聴いたかわからない、あなたいが↑〜い↑〜の↑〜、と、風花雪月に入ってるバージョンの歌い方に、すごく胸が高鳴った。
リングサイドで歌われるそれはすごく甘やかで、乳白色の温泉に浸かってるようなw心地よくてあたたかい愛を感じるのだけど、あべどんさんの歌は静かで、それこそ真っ暗な夜の真ん中でふと目が覚めてしまった時のような小さな不安と孤独感だったり、愛するということの切なかったり心がひりつくような側面だったり、を思い起こさせる。ちょうど開いたカーテンの向こう、真っ暗な空とそこにぽつぽつと浮かぶ灯り。この曲はこんな風に、"夜"に包まれた中で歌われるのが一番映えるのかも、と今さらながら気がついた。
そして上手側の席、グランドピアノを挟んであべどんさんとちょうど反対側のあたりから観ていると、夜を映す大きな窓と、つやつやとした漆黒のピアノの蓋の内側に、猫背で弾き語るあべどんさんの姿が映っていて、ご本人を合わせたらそれこそ万華鏡のようだった。奏でられる音楽を含めて、今これが世界で一番うつくしい光景だ…と思いながら観ていた。
演奏の合間には、窓の外を眺めて「すごいね。(お客さんに)すごいねぇ」なんて素っぽく仰る姿がとてもかわいらしかったのに。なんというギャップ。


8.BackGRound
そのまま続けてピアノ弾き語り。この曲もまたすごかった。
「RED and GREEN〜」と冒頭からものすごい声量のハーモニー。あべどんさんと高橋さんの声、すごく合ってる。歌詞に合わせて照明が赤、緑、青に変わっていく様もとても綺麗だったのだけど、確かこの曲の最後あたりで、東京では光がはじけるようにぱあっと広がって客席まで照らした場面があって、あ、花火だ!と思った。東京2日目2ndの始めの方で「昨日追加公演で…今日が先に押さえてたんだよね。どうやらビルボードが空いてたんで、ぶっこまれた。だから(本番というか力の入れどころが?)"今日"でしょ。明日僕は葉山の花火大会に行くんで、声、枯れちゃってもいいっしょ」と仰っていたけど、確かその日も花火大会の1日目だったんだよね。観に行けなかった分、打ち上げてくれたのかなあ…とじんわり(偶然かもだけど)。
多分この曲だったと思うんだけど、大阪2ndで、その前の曲前に何かのアレンジを「ジャズっぽいね」という話をしていたからか、アウトロをジャジーなテイストで弾き始めるあべどんさん。に、素早く高橋さんも合わせてベースを弾く。ジャムってるって感じでかっこよかったなあ。


そんなこんなで本編が終了。にこやかに颯爽と去って行かれるお2人。
ほどなくして、あべどんさんだけ再度登場。
上だけ白か黒のツアーT1枚に着替えてらして、カジュアルな装いでグランドピアノの前に座っている感じもまた素敵だった。
ちなみに名古屋だったかで、出入り口のすぐ横にPA席があったので、通りすがりにツッシーさんと肩を組んだりフェーダーを動かしたりなんかしてちょっかいをかけていたw


en.白い虹
始める前に毎回、少しお話ししてから「『白い虹』という曲を」と曲を始めていらした。ただ、東京2日目2ndでだけこぼされた、ひとこと。
「白い虹って、本当にあるんですよ。…知らないでしょ」
仲良しの友達に秘密を打ち明けるように、子どもに優しく話しかけるように、でもどこかひとりごちるように、こぼされた言葉。なぜか胸がつかまれて、え、あ、となってるうちに、演奏が始まる。
まばゆいほどの白い光に包まれて、それまでのどの曲より晴れやかでのびやかで力強い歌声と演奏を聴かせてくれるあべどんさん。大阪2ndでは立ってアウトロを奏でながら「52歳最初のライブでーす!!」と高らかにシャウト。名古屋1stでは(違う曲だったかもだけど)マイクをくぐって弾いたり、2ndでは最後の最後に足蹴ピアノしたようなw とにかく、この曲が最後だというのに、いや、だからなのか、どの公演でもそれまでのどの曲より演奏がヒートアップしていく様がスリリングかつ鮮やかで、"アーティスト"だなあ…!とワクワクした。

東京1日目2ndでは、最後にはけようとして「あっ!」みたいなアクションをとるあべどんさん。
「みんなの帰る音楽をかけなきゃね」
そして自らレコードを客入れの時と同じものに取り換えてくれる。もちろんわたし達より先にはけて行かれたけど、なんだかお見送りしていただいたようで、心があたたかくなった。


ライブの構成はこんな感じ。
この後はバースデーの催し含めて、ちょこちょこと印象に残った場面なんかを。

・東京2日目1stのスットコ
2曲め終わったあたりで、テーブルに置いてあった楽譜を引っかけてバサバサと落っことすあべどんさん。「ああー」「まあいいや」と平坦な声でひとりごち、拾ってまとめて後ろへ向けて差し出すもヨッシーさんに気づかれず、自分で後ろのカゴ?に入れてらした。
あと本編終わって退場するときに、ゴンッ!!と思いっきりスタンドマイクにおでこをぶつけてしまい、素っぽい声で「びっくりしたあ」と仰っていた。アンコールで出てきた時はわざとらしくタオル?ハンカチ?でおでこをおさえていたwフジフレパでこけた時と同じですね…w

・大阪でのお誕生日お祝い
1stでは初っ端から高橋さんに、今日誕生日ですね!と言われて、困ったように笑ったままピアノとそのかたわらの大きな青い花束を見ていたあべどんさん。まあ「仙台と東京とやってきましたけど…やっぱ、今日のためでしょ」とも仰ってたけどw
確か1人演奏コーナーが終わったあたりで、後ろのモニターになんと氣志團ちゃんが勢揃い。「師匠!お誕生日おめでとうございます!」と挨拶し、ハッピーバースデーを歌う。名前のところは何と…と思ったら「ディアヨッチ〜♪」。途端にわたしの脳内に響く「いい名前もらったなあ…」というしみじみした某氏の声。
モニターに映される、黒地に白のABEDONロゴの上に、「Happy Birthday ABEDON 52」というカラフルでポップな文字。
フゥー!!と盛り上がる会場に、「やめろ!」と叫ぶあべどんさん。さらに盛り上がっている会場。「やめろ!!」。もっと盛り上がっている会場。業を煮やして叫ぶあべどんさん。
「やめろ!!俺は他人をはずかしめるのは好きだけど、自分がやられるのは嫌いなんだ!!」
ひとしきり盛り上がったあと、ピアノに座ってもどこか所在無げに右手で左腕をさすりまくるあべどんさん。いつもみんなを祝福してるひとなのだから、その分、いやそれ以上に祝福されないと、ね。
ちなみに「あっついな!」と、なぜかギターをかけたまま上着を脱ごうとして四苦八苦してたあべどんさん、なんと高橋さんに手伝ってもらう。そして一言「誕生日ってすごいねぇ」。うん、そうだね…
2ndでは氣志團ちゃんが「ディアヨッチ〜♪ とヨッシ〜♪」と歌う。え!?と思ったらあべどんさんが「彼は一回り下なんだけど、誕生日が一緒で。いないと音が出ないんでね」と説明。ケーキのろうそくもヨッシーさんが吹き消して、花束も渡されてたかな。とても嬉しそうで、こちらもぐっときた。いつも名サポートぷりを垣間見させていただいてるので、あべどんさんはもちろんだけど、ヨッシーさんもお祝いさせていただけて嬉しかった。モニターは「ABEDON 52」の下に「and YOSSY 38」が追加されてたw
その後、手渡された花束をピアノの上に置いてから弾こうとしたあべどんさん、「(調律)狂ってるな。強く叩いたからか。これ(花束)が置いてあるからじゃないよね?」などとものすごい真面目口調になる。サッと、渡されたばかりの花束を脇に避けるJメンさん。そのサポートぶりもすてき。

・徐々にかかってくるエンジン(何の?)
東京2日目2nd、最後の方で、名残を惜しむお客さんたちに「終電無くなっちゃうよぉ?」「いいのお?」などとニヤニヤするあべどんさん。「こんなこと言うともう呼ばれなくなっちゃう」と困り笑い。
大阪2ndでは「ビルボードは時間に厳しいんでね。終電無くなっちゃうよ?」と話すと客席から、大丈夫!の声が。「大丈夫って…変な男についてっちゃダメだよ?」途端におとうさんスイッチ入ってた。すてき。

・齢52にしての気づき(大阪2ndにて)
「ライブ中にもう一つ(それは後述)気づいたことがあって、俺こうやって(首を傾けてマイクに向かいながら)弾くんだよね。だからこう…(首が痛い)。こうやって弾くか(まっすぐ後ろに頭を引く)…やっぱこう(首を傾ける)だなw」
ちなみに1stでは演奏前に首を左右に伸ばしてらした。
あとどこかの公演で、水?スポドリ?を片手でがぶ飲みしながらもう片方の手で演奏してた時もあった。成立させてんのがすごい。喉渇いてたのかなあ。

・わいふぁい
東京かな?で、通りすがりにお客さんと優しくハイタッチしてたあべどんさん。ステージに上がると、通り道側でなかった我々に向かって「Wi-Fiでね」と右手の人差し指を立ててゆらゆら。よくわかんないけどかわいいので、応える意味で真似してみるわたくし。
後々調べたら、どうやら今時の若者は飲み会の乾杯時に、遠くてグラスが合わせられない人には「Wi-Fiで!」「Bluetoothで!」などど言うらしい。指を振る仕草はWi-Fiマーク…?なの?
大阪2ndでは、誕生日だから乾杯する?みたいな時に、グラスを片手に「Wi-Fiでね」「Bluetoothでね」とお客さんに向かって言い出すあべどんさん。に、「俺が教えたんだけどねw」と高橋さん。まさかのネタ元…!w

・若いピアノの話
名古屋ブルーノートの、ファツィオリというイタリアのメーカーのピアノ。新しめのものなのか、しきりにその子を「若い」と表現するあべどんさん。名古屋2ndでは「まだこれも新しいピアノなんで、若いんでね。悪いことを教えてやらないと」とニヤリ。伊達男なセリフに沸くお客さんを「フゥ〜w」とさらに煽るw
「有太くんに10日days(本当に『とおかでいず』と仰った…)やってもらって、その後に俺がやるw」みたいなことも仰っていた。ピアノもやっぱり新しいと手触りとかが違うんだなあ、革製品みたいに使い込むと味が出るのかなあ、と思ったり。「あと100年くらいしたらいい音が出ると思うんで、その時また来たいなと」とも。じゃあお互い長生きしないとですね!
ピアノをいきもののように扱う(あるいは、本当にそう思っていらっしゃる)ところが素敵だった。東京1日目の2ndでは、顔を拭いたタオルでスタインウェイの鍵盤を何度も何度も拭いたりしていたけど、ちょっとそういう相棒みたいな思いが芽生えてたのかなあ、なんて。ギタリストにおけるギターのようで、でも片手で簡単に持てるような楽器じゃないから、大きな大きな体と対峙して全身をいっぱい使って手なずける…というか仲良くなっていく、そんなイメージが浮かぶのだった。



さて、最後に。
東京2日目の1st、確か1曲めが終わったあたり。
高橋さんから、ほら、お客さんみんな見てるよ!みたいなジェスチャーされた時に、あべどんさんは困ったように苦笑してうつむき、ぼそりとオフマイクでこぼされたのです。「今だけだよ」。
その言葉と場面がなんだか、どうにも心に残ったのでした。
同じ公演では、1人のコーナーをサクサク進めよう、みたいな話で「面白くない人もいるからね」とも仰っていて。なんともいじらしい、などという失礼極まりない気持ちで胸がいっぱいになったのです、ですが。
大阪2nd、確か白い虹の前あたりで、以下のようなことを仰っていたのです。

鍵盤が嫌いだったけど、今日ライブやっててやっぱ鍵盤だなと。今日、思いました(今日?と客席からびっくりした声があがり、『うん、今日』とさらりとお返事されていたような)。母親にやらされて嫌だったし、椅子がないと弾けないし、ソファーじゃ弾けないし、バンドだと音が大きくて聴こえないし。でも50代になってやっぱピアノだなと。ピアノが似合うのは小さい子と50代だね。

そして、

このへんてこりん(へんちくりん?)なやつ(=板さん)と、ピアノがあれば、何処へでもいけるんじゃないかと。

と。
さらに名古屋2nd、つまり最終公演では、

昨日ライブ中に思ったんですけど。鍵盤があんまり好きじゃなかったんです、前に出ていけないし、(楽器の上から)首しか出ないし。だけど50を過ぎた男はピアノだろうと。いいピアノがあるとこには行きますよ、いや本当に。お金持ちの家とかね。んなわけないだろw
今日これ(若いピアノ)も持って帰るんで…んなわけないだろw
夏はゴルフができないんで、冬も寒いんで…こういうことをやろうかと。12月とか…まあ、あんまり言っちゃうとね。

と、いうようなことを仰っていて、
単純にびっくりした。
このひとはこの自信を…ソロで、そして鍵盤で、やっていけるという確信を、この短期間で、自らの手でぐっとつかんで、揺るぎないものにしたのか、と。
不言実行の方だから(と、わたしは思っている)、多分まだ何も決まってはいないだろうけど、こんなに具体的なことを口にされるだけの、何かしらの確証を得たのだろう、と。

もちろん、そのための下地は、それこそピアノを始めた4歳の頃からの積み重ねなのかもしれない。けど、これでやっていける、という確信めいたものを掴めるかどうかは、それにプラスして、センスやそのタイミングを見極める繊細な感覚も必要なんじゃないかなあ、とも、なんとなく思うのだった。
研究室のようなスタジオの中をぐるぐる歩き回って、溢れ出てくる発想をできる限り忠実に再現できるように試行錯誤して、結果、新たな道を進む自信を持つまでに至る。
偉そうに、という感じだけど、この方のセンスが、そしてアーティストとしての新しい意欲が、蕾から花開き始めるまでの過程を垣間見せていただいたような気がした。ここまで自己開示できるってすごいなあ、勇気があるなあ、と勝手に思う。そして、繊細と呼ばれる方だけど、こうと決めたら、の大胆さとアグレッシブさもそういえばすばらしいものがあったのだ。わたしの中でぼんやりと結んでいたあべどんさんの像が、少しだけくっきり見えた気がした。
(そしてわずか1ヶ月後のUCFCツアーで、またもやこの方の大胆さ、経験とそれを活かす才能、スピード感、センス、そして勤勉さに驚かされ、感動させられるのだけど、それはまた別のお話)


長々と書いてきてしまいましたが(…いや、本当にここまで読破できた方はいるのだろうかw)、とにもかくにも、とてもすばらしい公演でした。
先にも書きましたが、もちろん人前で観せられるレベルには引き上げているけれど、たった2人で表現する世界観とか、まだパフォーマンスになる前の思いつき・アイデアとか、音楽との付き合い方とか。スタジオ、つまり音楽活動の核となる部分におじゃまして、あべどんさんのよりパーソナルな部分に触れさせていただいたようで、すごくドキドキしました。
そこには全身全霊をかけて試行錯誤しながらも、だんだんと"これでいいかも"を積み重ねて波に乗ってきて、最後の方は(や、東京からその片鱗は見えていたけれど)なんだか知らない、悪いことも知ってそうなw伊達なオトナがいて。けれど、だからこそ改めて、いやもしかしたら新たに、強く心を惹かれてしまったのでした。
幸い複数の公演に行かせていただけて、けれどそれぞれどの公演も、ABEDONというアーティストの道のりの一部であり、歴史の一ページなのだ、と思いました。そしてものすごく勝手ながら、そこに立ち会わせてもらえたことが、ものすごく嬉しかった。

あべどんさんにしては息つく暇もなくバンドの活動が始まったり、マスタリングのお仕事もあったりと、色々と忙しい日々のようで、少しだけ、お疲れじゃないかな、などと心配にもなるけれど。
でも、またあの晴れやかな大人の顔で、楽器に向かってほしい。頭からつま先まであふれている小さな思いつきのかけらから、それを吟味して構築して磨き上げた音楽まで、表現したいように存分に表現してほしい。そして欲を言うなら、願わくば、その一部をまた、密やかに共有させてもらいたい。
そう願わずにはおれない…いや、きっとそれはまた実現する。
もちろん、プレッシャーをかけるつもりはさらさらないけど、そんな確からしい気持ちを持つに至ったのも、晴れやかなあのお顔と言葉を信ずるに値すると思えるだけの、素晴らしく素敵な公演だったからこそ、だと思うのです。


おまけ。
なんの説明もなく、毎回、ステージの手前に置かれていた、開けっ放しのギターケース。開いた蓋の内側に、「YOSHIHARU ABE」の文字と昔のユニコーンの似顔絵?の、象になった阿部さんが端っこに印刷されている五線譜。そこに、3人のお地蔵さんと「ご利益ありがとう♡」の文字。
これは一体…?おひねり箱か?と思いつつ、毎回の公演のあまりの素晴らしさに、毎回お金を入れてしまっていたのですが。
UCFC仙台公演の開演直前、どんすたぐらむで、それが全額樽募金に投じられたことがアナウンスされた。雷に打たれたような衝撃が走りました。
このひとは、どこまで。不言実行で、他人のことを考えて…いや、そういう方なのだ。
ご出身である東北で投じたというのも、偶然かもしれないけれどなんだかすごくぐっときた。
これからも影ながら応援させていただきたい。樽の横に並ぶ、お地蔵さんとそっくりな笑顔に、その思いをより強くしたのでした。