つれづれのおと

ディアマイロックスター

「UC100V」を聴きました

聴きました。聴きましたとも!!

クリスマスの朝、枕元に見つけたプレゼントの箱を開ける時のような、胸が期待に膨らむ高揚感と、おそらく自分の好きなものではあるけどいったい何が出てくるんだろうというドキドキ感。

ユニコーンのニューアルバムを再生する瞬間は、いつもそんな気持ちに包まれます。

それを味わいたくて、ZERO以外は聴かないようにラジオで曲が流されてる部分を避けてました。頑張った。

そして、蓋を開けてみたら、今回もすばらしい!!

すばらしく予想外で、突飛で、けれどどこか懐かしくあたたかい、めちゃくちゃにカッコいいアルバムでした。

ただ、今回「も」という言い方はあんまりしたくないのです。言うまでもなく、彼らのアルバムは一枚一枚すごく個性的で、同じ言葉や感情が当てはまることはない、と思うから。

だけど、ひとつだけ、ことに再始動後においては、共通するテーマはある(と、勝手に思っている)。新たな一枚ではあるけれど、それを今回も踏襲というか内包している、そんなアルバムでした。

かっこいい。文句なくすてき。本来はその言葉でもう十分なのだろう、けど、とにかく一曲一曲がまたすてきで、感想を言いたい。けど、そっくりそのまま垂れ流したら大変なことになる、ので、こちらに書きました。

今回は特に、公式インタビューもあるから、どういういきさつで出来て…みたいなお話はあんまり拾わず、感想ばっかりです。

 

 

・パッケージ

曲じゃなくてそこからかよ!!とつっこまれそうですが。

や、ジャケットとか中身のデザインがまた、素敵なのですよ…。

わたしが買ったのは紙ジャケにスリーブケースがついている初回盤。ペラペラのじゃなくちゃんとハードカバーの本みたいに閉じられる紙ジャケ。

ディスクが入るポケットはぴったりした薄さなので、すとーんと落ちにくい仕様。不器用と不注意の権化のような人間にはありがたい。

ジャケットの表には「UC100V」のネオンサインと、形の異なる五つの電球。レトロかわゆい。

で、スリーブケースなのだけど、無地で黄色一色、かと思いきやうっすらとでこぼこしている。よく見ると表に、電球に「UC100V」と書いてあるロゴ、裏は曲のタイトルが大小さまざまかわいいフォントでコラージュのように並べられている。

で、それが、暗闇で光るのです!これがまた、すてきなのです…

発売前の発表では、光るスリーブケース!と言われても、あまりピンとこなかったんですが、暗いところで見ると、シンプルな線で象られた文字やロゴが際立って良いなあと。

で、あと、アルバム本体のジャケットと連動してるといいますか。本体ジャケは裏側が、メンバー5人?をモチーフにした電球(電気が消えてる)の上に、スリーブケースと同じように曲タイトルのロゴが描かれているのです。

つまり、ユニコーン5人が放つ光を吸い込んで、暗闇であってもこの曲達は光るんだよ…!!

なんだか胸熱なモチーフです。

あと、歌詞カードは歌詞カードで、それぞれの曲のページに、それぞれの曲に入っている数字が黄色で描かれてるのも良い。ツアーグッズのフラッグの柄みたい。文字を隠して意味を持たせたようなデザイン、謎解きみたいで好き。

あとパッケージとは違うけど、アルバムにダウンロードカードがついてるのもありがたかった。パソコン起動してCDをインポートする手間も惜しむのかよ…と言われそうですが、そういう気力すらない時だってあるんだよ…。アナログ盤に合わせた収録時間だったりするのに、現物と一緒にデータも手に入る、という、新しいと昔ながらの共存が、なんだか彼らっぽい。

 

さて、これより一曲一曲について。

 

 

 

・10nuts

再生ボタンを押すと、次第に大きく迫ってくるブワ~~~っとした音。飛行機が頭のすぐ上を通っていくような、重厚で機械的なそれの上にのる、ジャングルの奥地で奏でられているようなパーカッション。そこに低くも高らかに名乗りをあげるように加わるギター、ベース、ドラム!

何これ!いきなりカオス!そしてめちゃくちゃにかっこいい!!

氣志團万博山下達郎さんのステージで号泣するほど(by お弟子さん)感動し、そこで御大自らが作った曲で登場しているのにヒントを得たというあべどんさん。一人一人がリングに上がるように登場してグルーヴを作り上げたところで全員のボーカルが入るところが、まさに!という感じ。へーーーいなーーーっつ!すたーーーんだーーーっぷ!ぱんちぱーんち!どらんかー!と歌いたくなっ…ごめんなさい。

そう、このギターリフとツインギターになるとこでもう、モンキーのあの曲ぽい…と思ってしまいまして。もしやと思ってちょこっと調べたら、モンキーの方がおそらくオマージュしてるであろうDeep Purpleの曲に行きついた。これも意識してるのかなあ…リフはそんなに「ぽく」はないのだけど。

なんにせよ、わたしの好きなミュージシャン同士のルーツがかぶっているの、同世代だから当たり前かもだけど、なんだかとっても嬉しいです。一度2人で弾いてくれないかなあ…なんてw言うだけならタダだし!

話題がそれましたが、とにかくカッコいいオープニングで、これだけでノックアウトされました。ライブでも演奏してほしいなあ…メンバーが一人一人現れて演奏に加わって、最後は全員前を向いて歌うの。そんなイメージ。

 

 

・ZERO

初めて聴いたのはラジオでこの曲が解禁された時。

もう、イントロのシンセの音からやられました。バンドの曲なのに、めちゃくちゃに機械的な音、リズム。これはまた新たな場所に歩みを進めている…!と胸が高鳴った瞬間、それを引き裂いて轟くドラム。そこから一気にバンドサウンドが雪崩れ込んできて、鳥肌が立ちました。

疾走していく(けど、決して他の音を置いてけぼりにはしない)ドラムに追随する…というか、V字を作って海面すれすれを飛んでいくような、ベース(ソロの部分がとっても良い、すべらかで爽やかで良い)、ギター(サビのロングランライトハンドが相変わらずすごい)、そして力強くも伸びやかなツインボーカル(『翼はバトンになる』のあべボーカルえびコーラスも好き)。

シンセの音もいつの間にかその連隊に加わっていて、ミスマッチを起こしてガチャガチャするのではなく、どれもが調和して美しい軌道を描いていく。「速い曲があるといい」というような目的で、収録候補曲が大体出揃ったところで書かれたと聞きましたが、勢いや速さだけを重視するのではなく、速くて美しいこと、も追求されているような気がして、心が震えました。滑らかでつややかな流線型にデザインされた新幹線や車が、目にもとまらぬ速さで走っていくのを見ているような感覚。

「二つの光が一つに」というのは、たとえばこの曲ならシンセの音とバンドサウンド、とも言えるのでしょうか。新しいものと昔からあるもの。もちろん、力のあるバンドだから、昔から培ってきたものだけでも音を奏でることはできると思います。が、100周年を迎えてもなお(ツッコミは受け付けません)、新しい世界に、七つの海に、飛び出そうとしている。そういった姿勢は前から見受けられるものの、命をかけるくらいの勢いでタイムマシンを動かすような切実さではなく、並走する海鳥にウインクするちょっとした余裕が感じられる。それがなんだか、再び動き出して10年たった今のバンドの状態をあらわしているようで、ぐっとくるのでした。

MVもめちゃくちゃに好きです。最新技術とレトロチックな空間との融合。これも二つを一つに、と言えるのかなあ。別の何かを掛け合わせた時に生じる雑味が(もちろんいい意味で)ないのがすごいなあ、と思います。

 

 

3.大航海2020

ぱかーんと開けたようなイントロのギターに、お!?と思ったところでぽーんと乗ってくるえびさんの声。これえびさんの曲か!!とびっくりしました。意外。もちろんいい意味で。

リズムはヒネたところもあるけど、どこまでもストレートに爽やかでポップ。最後のシャウトも高らか。真夏の太陽を思わせるような、キラキラ感がすてき。

と、思ってたら、意外に歌詞が泥臭いことに気づいてちょっとびっくり。でも、「VERTIGO」とか「道」とかよりは、それでも進んでいくぜ!感があって、なんか良い。爽やか。

そして、なんと、この曲を若い女の子がカバーしたそうな!広島ローカルドラマで流れる曲になったそうな!えびさんの曲をフィーチャーしてくれたのが、なんだか嬉しかったです。そしてそのカバー版も良かった…!

誤解を恐れずに言えば、某兼業農家アイドルバンドのアルバムに入ってそう。たいちさんが歌ってそう。そう思ってたので、なんだか納得。アイドルと相性の良い爽快感なのだなあ。

あと、作曲者直々のオファーで、あべどんさんがベースを弾いているというのも!ド素人のわたしにはどういうところが違うのかはっきりとはわからないのだけど、前からえびさんが「阿部が弾いてるようなフレーズが弾ければ…」みたいなことを仰っていたので、本業でないひとだからこそ出る独特な何かがあるのでしょうか。そうは言ってもそんなことを言えちゃうえびさんはすごい、大人だ。

そしてそれによって、ライブではまんをじしてえびさんがセンターで歌ってくれそうな予感。とても楽しみです。

 

 

4.1172

ぷかぷかと波間に浮いているような、南国の浮遊感満載のサウンドウクレレのような音を奏でるギターが心地よい。デッドめ(と言うのだろうか)な音のオルガンは、音の出し方が普通とちょっと違うのだそうな。詳しくはキーマガをご参照ください。「うみのみなみの」とか「こじまでこじんまりと」とか「よるはやみのみの(最初『闇の蓑』だと思ってた…)」とか、お家芸(?)な韻の踏み方も、ほわほわした感じを演出しているような。

南国と民生さんといえば、わたしはどうしても「休日」を思い出してしまうのです。だけどこれを聴いて、ああ、なんだか、よかったあ…!と思いまして。

「誰も知らないこの国でひとりで生きられる」という詞で締めくくられる「休日」。最初に聴いた時はそれはそれは衝撃でした。多分それは、わたしが再始動後からのファンで、"うちのボーカル"であるところの民生さんは、いつもメンバーやスタッフとげらげら笑いながら音を楽しんでいる印象があったから。歌詞のすべてがそのひとを表しているとは思いませんが、それでもフェスのサインに(ふざけて、だとしても)"ひとりはさみしい"とか書いちゃう方からそんなフレーズが出てきて、なおかつそれがひたすら呑気に響く南国っぽいサウンドに乗せられているのが、余計に切なかった。

対してこの曲は、なんだかこう、たぷたぷの何かに浸って浮かんでいるような感じがしていて。「探してたものが目の前にある(けど、手は届いてないんだなあ…なんて)」「何かがひとつだけ足りない」と切なさは残しつつ、軽快に奏でるギロにのせて歌う感じ。足りない何かをぼんやりとでも求めつつ生きている感じは、ひとりで、と歌うより健康的であるような気がして、ほっとするのでした。何かを求めるには、それ相応の余裕が必要な気がするので…

さて、その足りないものとはなんなのか。仮タイトルは「1173−1」だったそうですが。1173といえばもう「WAO!」の「愛のキーワード」しか浮かばないのだけど、じゃあもしかしてその足りない「1」って「I(アイ)」だったりする?確かにいとこも妹も「I」始まりだな?…と、ここまでで思考が行き詰まりました。明らかに考えすぎ。

まあ、物事って、こうして少しだけわからない部分や足りないものがあるような、完璧に手が届きそうで届かないくらいの時が、一番楽しいものなのかもしれません。

 

 

5.365歩のマッチョ

ぎゅいいいいん!というハウリングするギターでもう、あっテッシーだ!と思ったらビンゴだった。今回も炸裂している!!しかもこの曲はトリプルギターなようで、こりゃあまたライブが楽しみ。誰がどのフレーズを弾くのかしら。

「じゅうにかーい!」「ごじゅうにかーい!」「さんびゃくろくじゅうごっかーい!」のコーラスがとても良いwこれぞユニコーン的な。前にSMAのイベントで演った「SMA」の「ごかーい!ろっかーい!」を思い出す。めちゃくちゃに日本語なのに、絶妙なリズム感とノリの良さで、ハードロックのコーラス(または合いの手)として成立させちゃうあたりはさすがだなあと。「うるう年かァい!!」ってえびさんのシャウトも良い。いい意味で、こういうズバッとしたツッコミをなさるよね、最近w

歌詞はたぶんスポーツジムに行くお話なのだけど、嘘だと言わずw行ってほしい。切実に。毎日でなくてもいい、でもみんなで行ってほしい。ハードなトレーニングとかしなくていいから、栄養士さんとかのアドバイスだけでも受けて…!!と、某体を鍛える系の雑誌のインタビューを読んで大変心配になってしまったわたくしなのでありました。

 

 

6.青十紅

あおとあか、と読むそうで。青・赤を内包しているものといえば、空?と思っていたら、当たっていたので嬉しかった(それだけではないかもだけど)。

80~90年代の洋楽のような、レトロというには早すぎる、けどどこか懐かしさのある曲。あべどんさんソロっぽいようで、けれどやっぱり広がりのあるサウンドで、バンドの曲だなあ、と思う。サビでさりげなくボーカルに寄り添ってくるコーラスは、さすが、あべどんさんの"こういう"曲調をわかってる、といった感じ。最後のサビ前のハーモニーも美しい。

わたしはあべどんさんの紡ぐ言葉が大好きなのですが、この曲の「鉄のような言葉」という響きがなんとも、らしくていらっしゃって、きゅんときました。鉄は硬い、重い、錆び付くとザラザラする。鉄人とか鉄のハートとか鉄壁の守りとか、いい意味で使われがちだけど、なるほど、逆にして見ればそうだよね、と。あと、「悲しい言葉は鼓膜を悲しい感じに震わせてしまう」というのも、耳をよく使う作業を生業としてらっしゃる方だからこその表現だなあ。

 

 

7.気まぐれトラスティーNo.1

ぎゅうううううってギターに、お、テッシーの曲かな?と思った瞬間それをどかーんとぶち壊してくるボーカル。みなのもの!かにさんだ!かにさんのお通りだー!!

いやこれがやばい。今年還暦のひとの歌か。めちゃくちゃパンク。血管切れんじゃないかってくらいパンク。そしてかっこいい。

ラップの時も思ったけど、まあわたしは基礎的な音楽的教養もないのでこんなこと言うのもなんなんですが、この"川西音階"を生かす手がパンクにあったとは。「脳みそがはぃやぁくっちぃ」とかもう絶妙すぎて…。

これでもかと入れられるスクラッチ、ぶんぶんしたベース、絶妙なタイム感で入れられるコーラスと手拍子。お客さんにやってもらう?なんてラジオで言ってたけど(多分ジョーク)、とんでもない、こりゃ相当な技術が必要なやつですよ…。

後半からグイグイ差し込まれてくる「No.1」という掛け声は、クレジット通りあの方の声をサンプリング?したものなのか。入れ込んでくるタイミングが絶妙。ただし明らかに後半楽しくなっちゃって入れまくってますよね?もっと入れまくってスタジオでゲラゲラ笑ってたりしましたよね?かにさん曲はいつもメンバーの格好のおもちゃになっていて(もちろんいい意味で)、こねくり回されて遊び倒された挙句かっこいいものができちゃってたりするから奥深いよなあと思います。

そして歌詞は歌詞でパンク。今年還暦のひとの歌か(2回目)。でも逆にこのストレートな言葉を説得力を持って歌えるのは歳を重ねたからこそだよなあ、なんて。

ちなみに大航海~と同じく、作曲者から依頼を受けてドラムはあべどんさん。もしライブでやるとしたら阿部の体調が良い時だけ!wとかラジオで言われてた。でもドラム叩きながらコーラスするの観てみたい…やっぱジムに…!

 

 

8.55

もう、前情報なしでも、イントロから泣いてしまう曲でした。

民生さんのソロっぽい、けど、淡々とコードを奏でるギターの後ろで鳴っている、ROLIこと板さんが出す不思議な倍音が、やっぱりソロとは違う、異国情緒なのかスペイシーというものか、不思議な感覚を刺激する。ゆっくり、静かに、何かが近づいてくる感覚。

「つええ」と胸の内でつぶやいた瞬間、その高鳴りと同期するように入ってくるバンドの音。

どんどん、どんどん、たとえばドームの屋根がぱかーんと開いた時のような開放感と、上昇していく感じが、曲が進むごとに加速していく。これぞ、と言うべきギターソロも(始まりが、カキーン!という音のようだ)、高らかに叫び上げるサビも全てが力強いし、それをバックアップするというよりは寄り添って、けれど"立てて"いるバンドサウンドがすばらしくて、泣けてしまう。

タイトル、ロゴのフォント、シャツのサイズと髪型、どこから来たのか、自転車、といったキーワードで、まあもう明言してるも同然だけど、はっきりとは言わないのが、らしい。けど、なんというか…カンタンヒキガタビレの広島公演で、「風は西から」のイントロを奏でながらボソッとこぼした「今年も強いですねっ」の一言に会場中がわあっと湧いた時のような、"わかってるやつにわかってもらえばいい"感、そしてそれを理解して受け止めてくれる人達がいるということ、それにもなんだか泣けてしまう。広島の人、あなたのこと、覚えてるよ。

あと、それ以外も、歌詞がとてもイノセントで良い。野球ってもちろんスポーツだけど、観てる方としたら"楽しませてもらうもの"でもあって。だから、名前がアナウンスされて、ネクストバッターズサークルからゆっくり歩いてきて、そんな姿だけでもわくわくするような存在は、それだけでヒーローである気もする。

そして、50を過ぎたひとでも、素で(うっかり方言が出るくらい)「かっこええ…」と心の中でつぶやいてしまうような、次の瞬間にはもう「かっこえー!!」と叫んでしまうような、そんなプレーを観せてくれるなんて。応援団の合図に合わせて「持ってこーい!!」のコールをかけたくなる選手なんて。そうそういない。シンプルだけど、そんな言葉に込められた思いの深さたるや。すばらしい賛歌だな、と思いました。

余談だけれど、わたしにとってのユニコーンも、そんな存在です。つええ。かっこええ。かっこええ!もう何回も音源も聴いたしライブも観てるのに、毎度毎度、そう思わせてくれる存在です。

 

 

9.GET WIND 360°

ゆっくりと時を刻むようなピアノとドラム、スライドギター。「50/50」のようなこの雰囲気はあべどんさんの曲?と思ったらえびさんの歌声がして、またびっくり。

終始やわらかく淡々と歌い上げるえびさんを、メンバーが楽器で、そしてサビからはコーラスで周りを囲んでいるような雰囲気がすてき。もう、このコーラスが白眉なのですよ!!それこそ少し古い洋楽のような(完全にイメージで書いています)、レトロなあたたかさとうっすらとした爽快感があるというか。

ベースソロ(だよね?)のあたりのリズムも、ともすれば止まってしまいそうなゆっくりさが絶妙に心地よい。「道」と同じく歩いてはいるし、おそらく「選手交代」の時も感じてはいるけれど、どこか悟ったように淡々と、風に吹かれつつ進んでいるようなイメージが浮かぶ。

「ベリーダンサー」「シャドーボクサー」「レーシングドライバー」とか、このゆっくりであたたかな曲調にはあまり似つかわしくないような、激しい動きをする人たちをあらわす単語が使われてるのも、なんだか印象的。なんか悟ったのかしら、えびさん…。でもなんかこの、時々びっくりするほど高い客観性を発揮されるところ、とても好きです。

 

 

10.うなぎ4のやきとり1

たぷたぷのしあわせのうた。と思ってしまった。

ビートルズとかにありそうな(※イメージです)、がっつりバンドサウンドでなく、パーカッションとかアコーディオンみたいな鍵盤とか(メロトロン、よね)、シタールとかが混ざりあった、まさに混沌、という言葉がきっとぴったりな音。だけど、このひとたちの形成するカオスはいつだって心地いい。それが、今回はなぜかあったかさが増し増しになっているように聴こえるのでした。

歌詞はもうシンプル、だけどまたこれがわかる人にしか…UCFCで動画を見た人にしかわからないようなシチュエーション。ファンクラブのテーマ「In the lobby」のMVにも映っていた、でかい窓の部屋で自由にやっているオサーンたちを想起させます。

さ、ん、びょ、う、し、の、きょ、く、だ、か、ら、ス、リー、だ、って、いまだかつてそんな、まんまやん!しかもダジャレ!な歌詞があったろうか。あったかもしれない…けど、口をついて出てきた言葉をそのまま当てはめる自由さを謳歌しているような(おそらく、表向きはそういう風に聞こえるだけで、ちゃんと考えて選ばれた言葉なのだろうけど)、当たり前じゃんうはははって笑いあっているような、そんな情景。映像がなくてもそれを容易に想像できるのが、これまでの10年で「楽しくレコーディング=仕事をする大人たち」像が自分の中に(もちろんいい意味で)刷り込まれているのだなあ、という気がして、それもぐっとくるのでした。

「老いて」という言葉を、これほどまでにありのまま使うというところにも、泣けてしまう。若造が何を、と言われてしまうかもだけど、老いる、歳を重ねるということは"経年変化"であって、劣化だけを意味しないんじゃないかなあ、と最近とみに思うのです。多分それは、まあ他にも色々あるんですが、このひとたちがわたしたちに見せてくれ続けている"楽しんでいる大人の背中"によるところも、やっぱり大きい。

支え合うということ。支えてほしいと表出すること、支えるべき場面に気づくこと、経験をもとに行動して支えてやること。

満面の笑みを見せるということ。自分の気持ちを素直にさらけ出すということ。そうしてもいい、と思える仲間がいるということ。

みんなで出前をとることになって、それが誰かの嫌いなもののお店であっても、角を立てずに別のものを頼みゃあいい。

それはきっと、泣いて笑って、生きて、歳を重ねてきたからこそできるようになることなんじゃないかなあ、と思うわけです。

 

 

11.OH!MY RADIO

この曲については別の時にさんざん頭をこねくり回して書いたので(ただし今読み返すのは、、、アクセスするのすら相当な勇気がいる)、とは思いますが。

アルバムの中で唯一、別の時に録られたこの曲がどんな立ち位置になるのか、「裸の太陽」みたいな感じになるのか?と思っていたんですが、びっくりするほど馴染んでいたので驚きました。

「眠たくないや、ダマされていたいや」と言いつつ、魔法=音楽、と共に更けていく夜。前の曲で「老いて」と歌っていたものの、今夜もまだ、ダマされている。その感覚がこんな素敵なアルバムを生む一端でもあるのかなあ、なんて思わせるような、すばらしいエンディングです。

 

 

1枚を通して聴いて思ったのは、ものすごく"まとまりがある"ということ。音楽性も嗜好も割とバラバラ、五者五様な印象のユニコーンだけど、そしてこのアルバムの曲たちもそれぞれ個性的ではあるのだけど、なんだかいい意味で似た雰囲気を持っているーーこれは本当に個人の印象なのだけど、あったかさ、どこか満たされている感じ、が伝わってきて、すごくほっこりしました。やばい。大人ってそういう感覚にたどり着けたりするんだ。

例えばとにかく突き進む!とか、走り出した船を軌道にのせる!とか、なんかそんな、前のめりな感じももちろんかっこいいけど、この雰囲気はこの雰囲気で素敵、というかこのひとたちにしか出せない、のではないかなあ、と思います。

もちろん、共通したテーマというか姿勢というか…冒頭で大それた書き方をしましたが、新しいものに踏み込んでいく、それをこれまでの蓄積と融合させてみる、そういうとこはこれまでのアルバムと同じだと思う。でも、やっぱり、新しいものに手を出すにはそれなりの勇気と体力と好奇心がいる。ことに、人生経験を積んできてしまうと、なおさら。けれどそこを、退屈しないように(この表現は映画ボラプでも何回か出てきたけど、芸術家にとって『退屈する』『飽きる』ということは致命的にもなりうるのだなあ、と思った)、自分たちをも"ダマす"魔法を生み出すために、このオサーン達は選択するのだなあ。すごいなあ、と、見せてくれる背中の大きさに頭を垂れるばかりです。

 

バンドの100周年に対してのコメントの中で、健くんが寄せていた「全ての人にとって~」という言葉。常々、勝手に、なので密かにわたしも、音楽に関しては素人な一介のファンながら、ユニコーンのことは父親のように思っていました。

ステレオタイプ過ぎるかもだけど、背中を見せてくれて、さりげなく方向を示してくれて、たまに、恐ろしく愛情深いあたたかな言葉をくれるような。

だから、お父さんたちがあったかい場所にいて、楽しそうでいてくれると、わたしも嬉しい。とっても嬉しい。

ツアーは長丁場になりそうですが、どうか体に気をつけて、ゲラゲラ笑いながら完走してもらいたいです。

 

 

どうでもいいですが、一聴して、上に書いた「あったかい」雰囲気を感じまして。

このアルバムのイメージとして、今にも雪が降りそうな、雲が重く立ち込める寒い日に、あったかくした部屋でブランケットにくるまって、濃いめに淹れたミルクティーを飲みながら聴きたい。などと思っていたのですが。

それってもしかして、、、UCFC特命モデル大臣(正式名称を忘れました)のお姿では、、、

 

やはり"持っている"お方…さすがですね(※個人のイメージです)。マグ買います。