つれづれのおと

ディアマイロックスター

「UC100W」を聴きました

今年はアルバムもう一枚作ります。あべどんさんからそんなお知らせを聞いたのが7月頭の武道館。
その詳細が発表された時、度肝を抜かれました。ZⅡみたいなミニアルバムなのかと思いきや、フルアルバムって!しかも曲はUC100Vから惜しくも漏れたもの、とかではなく、このアルバムのためにまた作って選考したもの。えええ…1年に2枚って99年のピロウズですか…。さわおさんは1人で曲を書いてるのでそれはそれでまたすごいことだと思うけど、この短期間でやりのけてしまうのはどちらにせよ凄い。
で、聴いてみたら、これがまたものすごい作品でした。いやついったの140字じゃおさまらない…いつもおさまりきってないけど…
 
ライブで聴く前に、とりあえず音源だけ聴いた感想を残しておきたい、いやかなり時間がなさ過ぎたんだけども走り書きでなんとかならんか、と書き残していた文章にさらにガンガンと肉をつけてみました。つけすぎという説もあるけどそこはまあ…。
なので、本当はツアー再開やインタビューの公開の後に書いたのだけど、それらをあんまり加味せずの感想。ちょっと分量が…偏りすぎた気がするけど…そこもご愛嬌ということで…。
 
 
1.M&W
「メダカの格好」を彷彿とさせるような、ブワブワした怪しげなシンセの音。そこに儚く響くあべどんさんの歌声がのって、心がざわざわとする。あべどんさんの創る新しい曲に触れるたび少なからずそんな感覚はおぼえるけれど、なんだかいつもと違う。ワクワクやドキドキに似たそれではなく、心の何かを毛羽立たせてくるような、そんなぞくりとする感覚。けれど、なぜか心が惹かれるというか、掴まれて聴いてしまう自分もいる。8分の6拍子で奏でられるシンセの音が、どこか聴き慣れたクラシック音楽に似た旋律を持っているからだろうか。ppで聴いたアヴェ・マリアみたいだなあと思ってしまった。素人だからわからないけど…
そんな相反するような、それでいて似通っているような感覚に揺蕩って聴いていると、突然歌とともにぱあっと曲の世界が開ける。そしてその先には、広大な海が広がっていた。
ぐうんぐうんと水面を撫でていく海風のようなベース、時々僅かに上がる飛沫に反射する陽の光のようにキラキラしゃらしゃらとした優しいシンバルの音。そして先程までのシンセの音を引き継いで、寄せては返す波が陽の光を受けてゆらゆらするように、行きつ戻りつするピアノのフレーズ。デジタルな音から壮大なバンドサウンドになるという構成はZEROを思い出すけれど、ZEROははじけてドライブするドラムが印象的なのに対して、こちらはあくまでもピアノの音が前面に押し出されているような気がする。規則的なようでいてどこか揺らいでいるようなリズムが、圧倒的に美しい、けれどどこか倒錯した雰囲気を感じさせて、やっぱりどこかざわざわする。色合いはとても綺麗で引き込まれるけれど、ほんのりと不穏な何かを感じさせる抽象画の前にいるような。足が底につかない沖まで泳ぎに出て、ふと見渡したら周りには海以外の何も見えなかった時のような。
のびやかではっきりとしたあべどんさんの歌声、それを取り巻くのは賛美歌のように荘厳なコーラス。聴いていてなぜだか唐突に涙が出てしまって、それと同時にさらになぜか、ああ、あのひとはいつか海になってしまうのだな、と思った。いつかブログで、溶けたいのよ、みたいなことを書いていらしたのを読んだからかもしれないけど。人間だけでなく生きとし生けるものはすべからくいつかは土に還るけれどそういうことではなくて、海そのもの、になってしまうというか。
最後にピアノとエレキギターの波が数秒間ゆらめいて、シンバルのしゃらりとした音で曲は消える。あんなにも広大だったのに、いかないでという言葉すら浮かべられないほどに、ふっとなくなってしまう。その後の数秒の沈黙の間、固まって動けなかった。ふわっと笑った顔が眩しくて目を伏せた一瞬、気配が感じられなくなって目をあげたら、そこには光を反射しながらゆらゆら揺れる水面しか残っていない。そんな場面が思い浮かんで、寂寥感なのか切なさなのか喪失感なのか、なんとも言えない胸を締め付けられるような感覚に苛まれる。なんという音楽を創ってしまったのだ、彼の方は。
ソロみたい、とも言われていたけれど、いやいやどうしてバンドの曲だ。いつになくやわらかなドラムが、そっとリズムに寄り添っているアコギが、壮大に弧を描くベースが、そして最後までピアノに寄り添うエレキギターが、少し離れたところからこの"問題児"を優しく見守っているような感じがして、余計に切なくなる。たとえばライブで彼の方が、たったひとり花道の端まで行って歌っている時のような。好きにやりなさい、とは思いつつ、見守ってもいるような。そして何か新しく面白いことをするのには、積極的に加担していくような。このアルバムは全体的に、それぞれに対してそれぞれがそんな姿勢でいるイメージだけど、バンドの、音楽の中でそれができるというのは、なんだかとてもすごいことのように思える。それぞれの懐の深さだったり、それぞれへのリスペクトだったりがないとなし得ないような気がする、そんなことは。凄い。大人って素敵。それを体現する素晴らしいオープニングだ。
ところでタイトルはどういう意味なのか。Music&Wave?Marine&Wind?Men&Women?それともただW(または、"波形")をひっくり返しただけなのかしら。謎は深まるけれど、きっと意味があるのだろうなあ。
 
 
2.チラーRhythm
ドラムの"タッ"という合図とともに突然始まるディスコサウンドと、のっけからジンギスカンを彷彿とさせるような力強いコーラス。前曲からのつなぎで、いやいや俺たちは俺たちとしてここにいるから!俺たちは良いから!!みたいなフォローをされているように感じて、勝手に笑みが浮かんでしまう。
自分ではほとんど触れたことのないジャンルの音楽で、実は最初ものすごく度肝を抜かれた。クオリティが高いことはわかるけどなんじゃこりゃ!?ジャンル何!?みたいな。後からヴィレッジ・ピープル(名前しか存じ上げなかったのである…)を教えていただいてすごい納得した。いやなぜ敢えて今これをやろうと思ったのかは全くわからないけども。「頼みたいぜ」もそうだけど、"俺たちの得意としていないもの"にあえて挑戦するパターン?でもこれ克服してどうするのかw
しかしリズムの鬼(とわたしは思っている)・民生さんの本領がここでもめちゃくちゃ発揮されていていて楽しい。触れたことのない音楽なのに、ビートのツボを的確に刺激してきて、自然と体がリズムに乗せられてしまうような"ドンツー"のリズム。パーカッション、ギター、シンセ、ベースが一体となって踊らせにくる感じ。
そして歌がまた良い。主旋律は"それっぽいけどオリジナリティがある歌い方"に定評のある(?)民生さん、寄り添いつつ「ロック!クロック!オクロック!」のような伸びのあるコーラスで華を添えるあべどんさん。左右から高&低音でさらに煽ってくるえびさんとテッシー、そして「チラチラァ〜〜〜」とインパクトのある合いの手を入れるかにさん。それぞれの歌の特性を活かしたら後は全員で合唱、みたいなとこがユニコーンぽいなあと思う。
歌詞の内容は、「私はオジさんになった」と「うなぎ4のやきとり1」を混ぜたみたいな感じでしょうか。最後の「面と向かって〜」あたりからは「恋のかけら」を彷彿とさせるような。別にチラチラじゃなくて堂々と向かい合ってもいいんじゃないのか。それはできないのか…w
 
 
3.That's Life
ハードめなギターの音のロックンロール。こういう"のっしり"した音はテッシーならではだなあと思う。一度だけ握手していただいたことがあるのだけど、その感触が音のイメージと一緒で、おお、と思ったりした(どんなだ)。ソロ回しも個性が出ててカッコいい!ライブでまた変わるのだろうなあ、楽しみだなあ。
これはもちろん(?)作曲者のテッシーが歌うのだけど、冒頭の合いの手までテッシーの声だったのでちょっと笑ってしまった。ライブどうするのかしら。あべえびがそれぞれ左右から入れる掛け声がなんかかわいい。そしてサビはテッシーとあべどんさんで2人で歌ってる?よね?なんか珍しい気がしたのでした。こういう曲を歌う時のあべどんさんの声、歌詞の「〜ぜ」という口調も相まって、ちょっとスカしてる感があって好き。
そしてなぜかだんだんだんだんテンポが速くなっていくという謎の構成w イントロの最初のドラムがなんか、んん?なかなか曲に入らないな??と思ったのだけど、もしかしてこの布石だったのかしら…最初はこのくらいのテンポですよ〜と示してくれてる的な…個人的には、ギターソロ回しあたりのテンポがちょうど好みです。何の話。
最後はもう本当に速くなっちゃって…wと思ってたら突然の(∂∀∂)。もう文字で表すなら本当に(∂∀∂)。「うるう年かーい!」より、普通に会話の中でツッコんでる風なのにまた笑いを誘われるのでありました。元はそんな曲じゃないだろうに…wいじくり回すのがまた"らしい"なあと。
 
 
4.TYT
レトロと言うにはちょっと早い、けれどセピア色がかったようなギターの音。そこにのるお馴染みのハイトーンボイス、けれどこれはメランコリックな方(←違う方もあるらしい)だ…と思ったら当たりだった。えびさんのシリアス曲。
実はこれはうっかり曲を聴く前に歌詞カードを見てしまい、えええええ、と思ったのでした。日記や手紙でもなかなか並ばないようなストレートな言葉の数々。これを歌詞として綴れる凄さよ…そこまで言えるくらいの存在があったというのは幸せなことだなあ、と勝手ながら思ってしまった。それでも、ただただ沈むような曲にはならず、どこか物語を読んでいるような"傍観"している感じが醸し出されるのがえびさん詞の"妙"さだなあと。「8月の」とか「水の戯れ〜」のような。
間奏のシンセの音が「家」みたいで、けれどベースもドラムもギターも、あそこまで壮大になりすぎないのがまた絶妙(あっでも『家』のそれはあれで正解だと思うのです、敢えてああしてるのだろうし)。あまりに作り手が感情を盛り上げようとしすぎると、逆に受け取る側の感情が引っ込んでしまう時ってあるじゃないですか…それを淡々と、けれどドライになりすぎないような音に仕上げられてるのがさすがだなあと思う。
 
 
5.4EAE
ラジオで初解禁された時にうっかり聴いて再起不能になってしまい、アルバムまで封印していた曲。イントロの一番最初、星屑がキラキラと落ちてくるようなモジュラーシンセの音から予感はしていたけれど、ABEDON曲+川西詞で、こんなにどストレートに作ってくるとは。そんなのダメに決まってるじゃん…ロマンチックとセンチメンタルの化学反応でエモーショナルが爆発しちゃうじゃん…。
歌詞がとにかく、胸がぐーっと苦しくなって息ができなくなるくらい切なかった。もしかして、「おかしな2人」の男の人から見たお話?と思ったけど、男女だけとも限らないような。あべどんさんの曲だからかどうしても「HELLO」を想起してしまうのだけど、自分の身を削ってでも、なんとしてもタイムマシンに乗り込んで君に会いに行く、という激情にも似たそれとはちょっと違う。だってこのひとは、「叶うなら」と、もう既に今の自分にはどうしようもないことを知っている。「時計の針巻き戻して」なんて非現実的なことだとわかっている。けれどそれでも、そう語りかけずにはいられないのだ。「目を閉じて おやすみ」なんて語りかけて触れられるほど(そんな描写はないけど、そう聴こえてしまう)近くにいるのに、遠いあの世界にいってしまったひとに向けて。歌声の甘さも相まってことばはどこまでもまろく優しい、けれどその奥に深い深い悲しみがたたえられている感触が確かにあって、胸がつまる。
別のバンドの曲を持ち出すのもどうかと思うけど、時計の針、というワードに、モンキー の「Horizon」も思い出してしまった。あの曲も「ベゼルの中の鼓動は戻せやしない」とわかってる、でも「けれど」という言葉が続いて、なんというかこう、癒えていない傷を隠し持っているのが見えているような生々しさがある。けれどこの曲はそれとも違っていて、例えばあたたかな海でも陽の光が届かないほど深いところの水はひやりと冷たいような、目には見えないけれど強い感情が根底にあることが、行間から立ち昇ってくるような感触があるのだ。
その差異が書いたひとのキャラクターによるものか、それとも40代の始めや50代の半ばと、もうすぐ60に差し掛かるひとの違いなのかはよくわからない。けれどとにかく、"遠い世界にいってしまった"、愛おしい(とか、相手に対する感情がはっきり書かれていないのも絶妙だ、これだけ深い愛を感じるというのに)相手とその事実に対する向き合い方が、大人というか悟りの境地に近くてびっくりした。しかも男性で…というのはわたしの固定観念かもしれないけど、なんかこう、特にこういうひとがこうなった時って、男の人の方が整理がつけにくい、印象がある。まだ経験していなくて想像で書いているのかもだけど、過去にこういうことがあったのならば、こう思えるまでにどれだけの…と…。まあそれは詮索するようなことではないけれど。
ちょこちょこと言及もしたけれど、かにさんの歌詞は本を読むひとの言葉だなあと思う。いやみんな少なからず読んでるかもだけど…「Oh,what a beautiful morning」みたいに(語りすぎると止まらなくなるので割愛)、くどくどと説明せず、行間から色々なものを滲ませて受け取り手の想像を膨らませるのが本当に上手い。それが、よくできた小説のようだなあと思うのだ。
そしてそれをとうとうと朗読するかのようなあべどんさんの歌声。目を閉じておやすみ、そんなひとことをこんなにさらりと甘く優しく歌えるひとが他に居ようか。いやいるかもしれないけど、わたしにとってはこのひとただ1人だなあ、などと、それこそ目を閉じて寝る前に聴いていると思ってしまう。枕元で歌われているかのような優しい声、そこにどこかスペイシーなかにさんの「4 E A E」の声がのるのがまた、どこかファンタジックさがあってニクい。
歌詞と歌だけで語りすぎだけど、そのインスピレーションを生んだ曲ももちろん素晴らしい。夜空を周回する星の軌道のようにゆっくりとしたリズム、あたたかで確かな美しさのあるピアノの音。そしてあべどんさんのこういう曲では珍しく?ギターがソロを奏でるのがまたなんとも言えないあたたかさで(気のせいかもだけどピアノで弾いたフレーズみたいなのにね、これは本当に気のせいだと思うけど)、余計に切なさを煽られる。これはわたしの耳が悪かったらごめんなさい案件なんだけど、イヤホンやヘッドホンで聴いて一番度肝を抜かれたのがアウトロだ。左側からアルペジオを奏でるピアノに、数小節遅れてぴったり同じ旋律を奏でるギターが右側から聴こえてくる。これさ、呼応してるよね?音速とはいえど音(もしくは、声…)は光よりも伝わるまでに時間がかかる、けれどちゃんと伝わってる、だから応えてる。遠くにいるけど共に歩いてるんだよね?そう思った瞬間に入ってくるリズムギターと、穏やかなドラムとベースによって、ゆっくりと世界が回りだす。シャッターをゆっくり切って撮影した星の軌道が夜空に描かれていくようなイメージで。言葉はないけれど、ずっと左右で、音色も楽器も違うけれど同じ音が鳴っている、それがどうしようもなく切ない。けれどそんな相手と巡りあえたことは何にも替えがたい幸せだな、と、何回聴いても考えてしまうのだった。
余談だけど、最初に聴いた時に、ちょっとだけ映画「銀河鉄道の夜」のサントラ、特にメイン・タイトルを思い出した。晴臣さんの作ったやつ。圧倒的に美しいものはいつもほんのりとした畏怖をも感じさせる、気がする。
 
 
6.BLUES
眼前がきらめく夜空から急にモノクロのスクリーンに変わる。イントロからそんなイメージだったけれど、歌が入ったら余計に時代劇だった。タイトルが絶対画面いっぱいに広がる勢いのある筆文字。いやわからんけど。
音がとにかくヘヴィでかっこいい!えびさんのベースの音がこんな感じなのもなかなか聴かないような。時々吹いては木の葉を巻き上げるからっ風のようなギターもかっちょいい。とにかく音を重ねるのではなく、抜いたカッコよさで作るのってユニコーンでは珍しいような。ギターやドラムの雰囲気からしてちょっと「Come together」ぽい…?けどこの新しい感じはなんなんだ!?と思ってたら、オーケンさんや向井さんぽいと他の方に言われており、聴いて納得。いやそれモチーフかわからんけど…と思ってたところにかにさんご本人からイメージのご教示が。めちゃくちゃ納得した。「悪童」のあの方(違います)、こんな曲歌ってらしたのだなあ。オーケンさんもカバーなさってたのね。てかブルースって本来こういう感じなのかしら。
歌詞がまたね!!四字熟語、語尾が「候」、そして二番の"引用"には度肝を抜かれた。願わくば〜しか知らなかったよ、その人の歌は…(不勉強)。そしてシメの言葉がなんとローリングストーンズ…もう、参りました。この、半分語りのようなリズムに合わせるのってかなり難しいと思うのだけど、100Vのパンク歌唱に続いて、かにさんの歌声、そして"一見シレッと、飄々とした感じ"をこう活かす道があったとは…。当て書きした(?)作曲者のプロデュース能力、さすがです。「潮目↑を見ながら」がめっちゃ広島弁ぽくて毎回笑ってしまいます(笑うんかい)。
 
 
7.GoodTimeバレンタイン
そしてモノクロの画面の真ん中でどっかりとあぐらをかいていた武士が、突如極彩色のセットと髪と衣装でドラムを叩きながらヘッドセットで歌い出すのであった。何そのカオス。インド映画でも見ないぞ。
サウンドがとにかく、80〜90年代!!って感じで、ああこのひとたちの昔とった杵柄なのだな!!というはまりっぷりにニヤニヤしてしまう。ダサくないのだ、一周回って。多分リズムとグルーヴがしっかりしてるからだろうなあ…こういう曲って上手いことやるの実は難しいんではないかと思う。とにかく「BOOM」の曲が思い浮かんで、ひすてりー!のーのーのーみすてりー!じゃん!という気持ちに。またこのシンセの音でライブで聴きたい!!(そこなのか) あと個人的なイメージとしてロマンティックが止まらない感じなので、ヘッドセットで歌うかにさんの横をあべどんさん(ショルキー)とえびさんが向かい合って歌える形に配置してくれ。たのむ。絶対にかわいいから。
歌詞は絶対こう、「ちら」みたいに、リズムに合わせて口を動かしてたらできたんだろうな〜みたいなリズム重視の言葉が並ぶ。あべどんさんて言葉を音というか語感でとらえるよね、あらいぐまタスカルとかマジすかポリスとか。だからダジャレがすぐ浮かぶ(というか、結果としてダジャレになっちゃう)のかなあと思うw
内容的にはこの年代を思い出すようなお気楽?ラブソング。わたしはちょっとらぶらぶしょうを思い出してしまった(何故ちゃんと表記しない…)。でもなんかこう、らぶしょは一貫して"私"が「愛とはあなたのため」なんて言いつつ結局カラダだけじゃん?みたいにドライというか斜に構えてるイメージなのだけど、この曲の"俺"は、「俺に乗ったら」!と威勢の良さを見せるも結局「君に乗ったら」と"君"にメロメロになってるのが見えて…なんかこう…恋愛感?の違いが出るよなあと…wふふふ。
どうでもいいけどこれ「他乗れないぜ」でスティックで客席指差し待ったなしですよね?また老若男女問わず川西の女が増えてしまう…。レキカンのひとこわい。
 
 
8.7th Ave.
タイトルの字面だけで、7あべ…?と思ってしまった阿部脳(?)は置いておいて。
なんかもうイントロから"らしい"って感じがして、ふふふ、となりました。何らしいかってのはその、対外的なイメージ"らしい"なあ、という。風まかせ、と歌っているけれど、本当に風まかせなひとたちではないと思うもなあ。でもゆるめの?バラエティ番組のテーマ曲になるようなので、これでいいんだろうなあ、とも。旅猿みたいな、さりげなくも存在感のある使われ方だったら嬉しいなあ。
ハープとギターで始まるイントロが、そしてユニゾンやらコーラスが「Please please me」とか「Love me do」とかみたいで、わたしにもわかりやすく、おお!となる。でも途中で突然我が家に花の香りを添え出したので噴いた。いいんかw
なんか、聴いてて唐突に、テッシー楽しそうだなあなどと思ってしまいました。"なりたいボーイ"だ、みたいな話をたまに冗談めかしてなさってるので、そうなのかな〜と思っていたのですが、なりたいというより"となりにいたい"ボーイかなあ、なんて。一応正式パート(とは、ってなりがちだけど、ユニコーンにおいては)だと、ボーカリストとギタリストなわけじゃないですか。その2人が並んで演るのが、なぜかこのバンドでは珍しいのですがw新鮮で面白かったのかなあと。共作だしね。そして7はやっぱりキャップのアレのことなのでしょうかw
ちなみにインタビューによると、ハープは唇から血を流しながら頑張った?とのこと。SONGSのイッセイタカハシ氏みたいなこと仰るなあとこれまた噴きました。あのお二人はわたしの中でどこかかぶるので、ちょっと嬉しくもあったり。
 
 
9.Lake Placid Blue
ビビビビーって感じのオルガンに足踏みするようなリズム。これは!と思ったら魅惑のハイトーンボイス。えびさん曲だ!元気な方の!!(?)
えびさんはよくライブで足踏みしながら弾いてて、それってなかなか難しいんじゃないかなあと思うのだけど(素人考えです)、そうしてると本当に足踏みしてるような、歩幅の揃ったベースの音。さいこ↑ぉう!ぜんか↑ぁい!っていう、よく聴く歌い方が満載で、ライブで演ることをイメージして作ったのかなあと。ベースソロも、こんなに明るい曲なのにぶりんぶりんしたワイルドな音がしてて面白い。そしてそれに追従するように軽快に響くオルガンがまたすてき。最後まで連呼されるこの曲の主役「プレベ」、つまりえびさんの愛器であるところの青い子は、実はあべどんさんと一緒に買いに行ったものだそうな。それを知ってから、どうしてもこのオルガンとベースの音が、行くよ!行こう!って連れ立って楽器の街へ繰り出す様子に聴こえて仕方ないのだったw想像するだにかわいい。
しかし50代で「イケイケ GO!GO!GO!」なんて歌えるのはえびさんくらいのもんじゃないだろうか。いやあの、違う曲調なら歌ってる50代知ってるけどw、なんかこのストレートなワクワク感というか少年性というか、それを出せるってすごい。TYTがあんな曲調だからバランスをとったのかしら。
 
 
10.D-D-D-,Z-Z-Z-
パチパチと何かがショートするようなモジュラーシンセの音。そこにのってくる、エンジンをドライブさせてからぐうんぐうんと周回しだすベース、そして、どっどどたっどどったっどたっ、とこれまたループするようなドラム。この感じはどこかで、そうだ「デジタルスープ」みたいだ、そう思ったところで響く伸びの良い歌声。それに誘われるようにギターが入ってきて、さらに音の混沌の中に引き込まれる。曲中でずっと鳴っている、不協和音のようでいてそうじゃない不思議な音、両側から立ち上るように途切れ途切れに入ってきたり、右から左に通り抜けていくようなギター(民生さんお得意のあのぎゅいぎゅいさせるツマミを使ってるのかしら)(余談だけど楽器編成を見たら、民生さんがジミー・ペイジのアレをやってらっしゃるようで、わー!となった。ミスタッチもコピーできるくらいお好きなんだもんね)。混ざり合わないはずのそれらがマーブル模様のまま一体となって、全身をぞくぞくとさせる。「デジタルスープ」はキラキラと暖かい銀河の中にいるようだけれど、これは違う。もっと重厚でカオスで、言うなれば違う星のジャングルに落っこちてしまったかのような。電気を使う機械で出された音なのに、まだ進化していない太古の生物のうごめきや咆哮や、生命の躍動の真っ只中に取り込まれてしまったような感じがして、心地よさの中にゾワゾワした感触がある。けれど全く嫌な感じはしなくて、もっとどんどん深く深くに飲み込まれていきたい気持ちになるのだ。
次の音に少しずつ食い込んでいくような変拍子と、それに合わせて少しずつ上下するサビの音程がドキドキを加速させる。あべどんさんの声と、「D-D-D-〜」からそれを微かに援護するようなギターの音が混ざり合う。2番目のサビでコーラスの声も重なると、ひとりでいくつもの声を同時に出せる生き物のそれみたいにもなる。ヘッドホンで聴くと没入感が半端なくて、体がまるごと取り込まれてしまったような感覚に陥るのがものすごく心地いい。あべどんさんのソロっぽいと言われそうだけど、いやいやどうしてバンドの音だ。楽器とコーラスと、いろいろな雑味(もちろんいい意味で)がぐちゃぐちゃにかき混ぜられてひとかたまりになって迫ってくる、ユニコーンのライブに行くといつもそんな感覚をおぼえるのだけど、今回のこれは特にすごい。このひとたちはまた、何かを超越した進化をしている。100周年なんて冗談めかして銘打つようなベテランになっても、なお。
サビの"でぃーでぃーでぃでぃー"とかは、GoodTime〜みたいに音に引っ張られて出てきたのかなあと思うけど、その前の歌詞はどこか、バンドで音を出した時の感覚を綴っているみたいだ。グルーヴがガッチリ合った時は何にも替えがたい快感がある、みたいなことを10年前のインタビューであべどんさんは仰っていた。自分にない発想が出てきて面白いというのももちろんそうだろうけど、融通無碍な個性が重なって、個人では出せない莫大なパワーを生む、それもあるからこそバンドで音楽をやる面白さがあるのだろうなあ。
演奏はめちゃくちゃに難しそうだけど、これはぜひライブで聴きたい。ZEROがそうだったみたいに、グルーヴを会場いっぱい、いやはちきれんばかりに響かせてほしい。あ、でも、ZEROも引き続き聴きたいんだよね…(贅沢)。
 
 
11.DENDEN
R&R IS NO DEADみたいなフェードアウトかと思いきやキュウッと音が消えて、一瞬の間。そして聴こえてくる、福音のようなたっぷりしたバンドサウンドとコーラス。わあ!ユニコーンだあ!と、どこか"帰ってきた"、ホッとする感じ。
先行シングル曲だというのもあってか「裸の太陽」みたいな入り方をしているけれど、これがどうして、エンドロールみたいでとても良い。映画に使われたというイメージもあるかもだけど、奥田曲+川西詞、んで全員で一斉に演奏とコーラスという布陣に、ある意味ユニコーンの"王道"みたいな確かさがあって、エンディングにふさわしいなあと。
「サラウンド」みたいなあったかいギターの音、軽やかに響く板さんの音、堅実ながらどこか前向きに歩みを進めるようなドラムとベース。そこで民生さんをメインに全員で歌われる言葉に、実は最初とても泣いてしまったのだった。一歩ずつ、一歩ずつ、四季の移り変わりを感じながら足を進める。比喩ではなく現実にもそうすることができることの、なんと尊いことか。勝手なこじつけだけど、今はライブの前にも溌剌とランニングをしているかにさんの、それができなかったであろう時期にも思いを馳せてしまって、なおかつわたし自身のそんな時期も思い出してしまって、ぎゅっとしたのだった。左の足出して右足出して、ができるって、本当にすごいことなのだ。
映画の関係者の方からもらったのは確か、若い人たちへのエールを、というリクエストだったと記憶している。けれど、この曲には、誰かへ向けたような直接的な言葉は一切ない。ただただ、何もない新天地を目指して歩を進める描写があるだけだ。なのにこんなに背中を押される気持ちになるのは、結成して30年あまり、今のメンバーになって30年、再始動して10年のユニコーンというバンドが、"音楽を、バンドを楽しむ"というテーマのもと活動を続けてきたからだろう。偉そうなメッセージなんて発しない、けれど貪欲に、真剣に、飄々と易々と(見えるように)、全員で音楽と向き合い娯楽となりえるものを生み出している彼らの背中を見せてもらうことだけで、この10年、わたしがどれだけ励まされてきたか。それを改めて思い知らされて、泣けてしまったのだった。願わくば、この福音がどうかこれからも、わたしやわたしたちの人生を太陽のように照らしてくれますように。
 
 
 
 
短期間で作ったから欲が出てない、そこがよかった。渋谷のppで、優しい先生のような口調であべどんさんはそう仰った。頭で考えすぎてない、作り込み過ぎてない、ということなのかな?ととらえたのだけど、そうしたらまあ、見事にそれぞれの個性が大爆発したアルバムになっていました。たとえば「M&W」はメンバーからも「問題児」と言われてたけど(だから一曲目にするっていうのもまた凄い、いやこの位置しかないと思うけど)、いやいやなかなかどうして、アルバム自体が問題作じゃないか。もちろんいい意味で。
一つ一つの曲が混沌とした世界を持っていて、全然違う輝きを放っている。けれどUC100Vと比べて圧倒的に共作が多いというのがまた面白い。メンバーそれぞれの独立した個性というよりは、それらが混ざり合って化学反応を起こした結果がこう、なのかしら。だからそれぞれキャラが立っていても、アルバム全体としてはまとまりがないわけではないというか。むしろ混沌の全てを内包して、一つの"ユニコーン"という個性になっている、そんな感じがしました。しかもそれも、惰性によるものでなく、新たな楽器や手法をも取り入れてまた違った反応…というか、もはやそれを通り越して超新星爆発のような猛烈なパワーを放っている。それがすごい。ガラパゴス的に進化していく面白さときらめきを感じられて、本当にしびれました。いやはや、どこまでカッコいい大人なんだ、このひとたちは。
ライブもまた後半戦がスタートするということで、このカオスな問題児(たち)がどこまで食い込んでくるのか、そしてまたこれまでの子(曲)たちとどんな化学反応を見せるのか、そしてどんな風に進化していくのか。今からそれがとっても楽しみです。