つれづれのおと

ディアマイロックスター

2020.2.11 京セラドーム大阪

行ってきました。今年2回目、人生2回目、の、京セラドーム大阪。

昨年末のナゴヤドーム公演もとてもよくて、ちゃんと感想書きたいなあと思ってたけどなんだか気が引けて、でも今回はちょっと残しておきたいなあ、と思ったので、書くことにしました。

正直、わたしは本当に彼らの歴史には疎くて、一応4年位前からファンではあるけど全然過去を追うこともできていなくて、そんな意味では毎回毎回初めてのツアーに臨むような気持ちでいるのだった。

そんな向き合い方で申し訳ないような気もするけれど、でも、他でもない自分から見た、というのは自分にしか見えないものだし、何といっても忘れっぽいんだから、書き残しておこうかなあ、と。

これも毎回毎回書いてるけど、レポではなく日記です。あと私見

ただし曲名とか演出とかには結構触れてると思うので、その辺、ご承知おきを(ただ記憶がだいぶ抜け落ちているのもあり、全ての曲には言及してないです)。

ただ一つだけ言えるのは、百聞は一見に如かず、ということ。これを読んで、もしくは読まなくても、少しでも興味があったら、4月の東京ドーム公演へぜひ足を運んでみてください(延期になってしまったのでまずは映像とか観てください)。本当にかっこいいから!

 

 

今回はありがたくも往復新幹線宿泊あり、な余裕のある遠征。なおかつ1月のQALで予習をしていたので、京セラドームが地下鉄の駅からすぐ、というのはわかっていた。

なので、カレー食べたりココア飲んだりまったりしたり、余裕をもって過ごせたのであった。ありがたい。

駅とドームに隣接したイオンの入り口にはQALの時と同じく大きな柱巻き(と、呼ぶのでいいんだろうか)が。

前回、それを撮影するお客さんたちを「はい正面はこっちですよーそこから撮っても端が切れますよー」と誘導してらっしゃるスタッフの方がいらした、と面白おかしく友達に話していたら今回もいらしたので笑った。まあ混雑するもんね

店内にも、メンバーを模したバルーンアート(えまさんにちゃんとおひげがあって感動)が飾ってあるお店や、これまで出てなかった写真(英二さんが用心棒のごとく和ちゃんの方に腰をかがめてるやつ)のポスターがあったり、やっぱりお祭り感あるなーと。ナゴヤドームに隣接したイオンも、ドームで講演するアーティストの曲流してるお店あったもね。

 

 

今回はさらにありがたくも、同行のお友達がSUPER指定席を当ててくれたのだった。

座席表見た時からもしや?と思ってたけど、いやもうアリーナクラス以上の会場でわたし比で一番いい座席さ!ありがとう!って感じでした。とにかく上手だったというあれです。

客入れでAnother One Bites The Dustが流れてきた時も一人めちゃくちゃテンション上がった。いや名古屋と同じだったんだけどさあ…2週間前に同じ場所で観たパフォーマンスがよみがえる。アダムちゃーん!!左右対称のオシロスコープみたいな映像もかっこよかったなあ。ギターの音と連動してるの。えまさんは結局観に行かれたのかしら。

 

 

で、確か開演の5分前、ステージにぞろぞろと白いセーラー服の吹奏楽団が登場。

おお!?と思ったところで爽やかに始まる「MY WAY」の演奏。そういえばパンチドランカーツアーの楽屋で和ちゃんが流してたような、とお友達。

途中に「JAM」のサビをはさむアレンジも流麗に演奏が終わると、今度は「見てないようで見てる」が!何でこの曲?と思ったけど、SJTDVDでも特別扱い(映像というかカット割りが凝ってた、よね?)されてたから何かあるのかしら。

甲子園の入場曲になったみたいだなあ!と思ってすぐに、いやこれで高校球児が入場するのもどうなん、と我に返る。

 

曲の終わりに下手からメンバーが登場。わー!えまさんぎらっぎら!遠くてよく見えないけど全身がぎらっぎら!そしてロングジャケット!

あと和ちゃん原色!!

衣装はまあ各所のレポート記事を見ていただきたいのだけど、今回もゴージャス、素敵、だけど暑そうと思ってしまうダメな(?)俺。今の先生やロジみたいなやつでも、わたしはいいと思ってるんだけどな。

 

スタンバイ完了のメンバー、初っ端から鳴り響くスネア。「Romantist Taste」だー!

アリーナから見てもたくさんのお客さんが腕を振り上げている景色は壮観。

曲が終わると思ったその瞬間、高らかにカットインしてくるギター。カッ、と左右から白いライトで照らされてストロークするえまさん。「楽園」!この切り替えがめちゃくちゃかっこよくて、ブワッと立った鳥肌がしばらく引かなかった。しびれた…!

 

セトリは総とっかえだなあと改めて。もちろん名古屋でやった曲も多かったけど、構成が違えば響き方も変わる。もちろんGSツアーで聴いたそれも。

最初のMCを挟んで始まった「Ballon Ballon」もかっこよかった。

つり下げられた大きなモニターは、エフェクト映像よりもメンバーだけを映し出している割合が去年より圧倒的に多いように感じる。それがまたいいのだ。

もちろんエフェクトをバックに演奏しているのもかっこよかったけど(そして今回はアリーナよりも広い会場だから、遠くのお客さんにも見えやすいように、というのもあるのかもだけど)、シンプルにその時の姿だけが映し出されているというのは、いい。とっても。バンドのそのものの姿と音楽だけでも十分に勝負できるというか、その実力と自信がある感じがして、とてもいい。なあ。と思った(と、私見に対してすぐ自信をなくしてしまうw)。

まあとにかく何が言いたかったかというと、この曲の1番はずっとモノクロでメンバーが映し出されていたのがとてもかっこよかったということだ。

特にその時に映ったえまさんの表情が、なんというかこれまでに見たことのない感じで、なんだか胸をつかまれてしまった。緊張もあるのかもだけどただ単に硬いわけでもなく、これまでならそういう時は雄々しいとか攻撃的とかだったりしたのだけど、そういうのでもなく表現が難しい。とにかくまとっている雰囲気が今まで見たことのない、大人のそれだった。

もちろん時々笑顔やらを見せていたけど基本的に最後までそうで、何だったのかいまだによくわからない。

けど、あのひとの中で何かまた一段、昇ったものがあったのだろうか。いやもちろん気のせいかもしれないけれど。

 

だっだっどん、なタム、でっでっでー、なベース、ぎょわっぎょわっぎょわ~(ひどい表現)なギターの「FINE FINE FINE」も嬉しかった!「パンチドランカー」もそうだけど、一人一人順番にスポットが当たって、そのまま4つのスポットに照らされながら演奏しているような(※概念でありそういう演出はなかったです)感じがたまらん。わたしが常々思っている、このバンドは四本柱だなあ、というイメージが体現されている感じ。

最初はビグズビーなしの黒いレスポール使ってたえまさん、このあたりからVさんを使っていたような。

 

と、次の瞬間わたしは叫び声をあげて号泣するのだった。

ずっと遠くではあるけれど自分の真正面、ちょうど福岡ドームで観たのと同じ画角で、えまさんがあのイントロのフレーズを弾き始めたのだ。

MOONLIGHT DRIVE」。2年ほど前に福岡で聴いた時はもう信じられなくてわけがわからなくて、米粒2つ分くらいの大きさにしか見えないえまさんが、黒いレスポールをかき鳴らした静止画と生でこの曲を聴いたという事実だけしか覚えてなかった。けど、そういえばあの時は「つーきがーのぼーればーおおかみにーなあってー はいっ!」と、合いの手のようにシンガロングをさせられたのだったw

今回はそれはなくって全編和ちゃんが歌う。それも相まって、やっぱりもうどうしようもなくこの曲が好きだなーと思った。

ついったでもつぶやいたけど、どこまでも明るいリズムと曲調なのに(ギターソロなんか本当に、カーブの多い山道をそれでもすべらかに走っていく車の軌跡のようだ、それだと運転はえまさんになりそうだけどw)、メロディと歌詞が切なくて胸がきゅっとする。

「何が悲しくて何が嬉しいことなんだろう」とか「いろんな景色が流れてなぜだかわからず涙目」とか、曲の主人公のそれと同じとは限らないけれど、その感覚は、身に覚えがある。自分でもなんだかわからないけれど(深く突き詰めればわかるのかもだけど、何かをトリガーに突然ブワッてきた瞬間の)胸がきゅうっとする感覚。それが見事に表現されていて、ああすごいなあ、と思う。

キーボードの音もたくさんなのがまた素敵なのだった。

とにかくまあ、泣いたという覚えしかないです演ってくれてありがとう、ファンからの人気が高いって知っていてくれてもいるんだもんね。

 

曲が終わったと思ったらまたしても、今度は上からのスポットを一人当てられるえまさん。ギターの音に反応して、真っ白なバックに赤い筋が帯になって舞う。

名古屋で観た瞬間に「これppであべどんさんが使ってるのと同じシステムでは!」と大興奮だったのだけど、引き続き観聴きできるのがとても嬉しかった。

名古屋のそれは静かながら激しくて、それこそ鮮やかに赤い血潮が動脈のハイウェイを駆け抜けていくような生々しさがあった。

ああこのひとはギターを弾くことが命を燃やして生きるということなんだな、と改めて思ったのだけど、今回はまたガラッと変わった印象だった。

何というか、静かなのだ。

静かで、けれどどこか穏やかではなく、ドーム中に響く音。それが映像としてどんな軌跡を描いているのか、ご本人がわかっているのかいないのかはわからないけれど、名古屋のぐわっと盛り上がって波打つそれというよりは、中心でぐるりと渦巻いて立ち昇っていく、その印象が強かった。

不謹慎かもしれないけど、ニュース映像で見たあの豪火を思い出した。ごうっと巻き上がる炎と、その勢いでひゅうひゅうと巻き起こる気流。瞬く間に広がって、傷ついた動物たちと、なすすべのない人間たち。

すると突然ガンッ!と音色が変わって、怒涛のようなピッキングによる重たく歪んだ(というのだろうか)音が迫ってくる。弾く姿勢は直立不動のまま、けれどドームいっぱいに重厚な響きを満たす。安易なたとえかもしれないけど、本当に何かの神様のようで背筋がぞっとした。

太刀打ちができない、そう感じさせるほどのオーラと音が、全てを包み込むように迫ってくる。息をつめ、手を強く握り合わせながら聴いていると、ふっと音色が元の静かなものに変わる。奏でられるフレーズもどこか穏やかになり、映し出される赤い帯もゆるやかに弧を描く。

もしかしてさっきのは激しい雨?だとしたら、ああ、鎮まったんだそう思って少しゆるめた手は汗をかいていた。

本当に勝手に受け取ったイメージだけど、今回もを体現していたのだなあ、とぼんやりと思う。または、それこそppと重なるのだけれど自然に近いもの、というか。そのまま「球根」へつながるからかもしれないけれど。

しかし、数万人が集まっているこれだけ大きな会場をギター1本で沈黙させられる、やはりあのひとは凄いギタリストだ。

 

演奏が終わるとメンバーは早くも楽器を置いて花道を歩き、センターステージへ。

うおお、ち、近い!どれくらい近かったかというとギターのピックアップの金属の質感がわかるくらい。あと眉毛の可動域がはっきりわかるくらい。でも8Kよりは遠いかな。どんなだ

 

2000年ごろに作った曲を」と久々に聴いた「カナリヤ」はもちろん、「Four Seasons」のイントロが始まった時には震えた。この公演の前に、好きなアルバムは?と聞かれて、やっぱりFOUR SEASONSかな~と答えたりしたもので、まさかやってくれるとは。バックにチューリップとカトレア?あやめ?と、あと2つ、花が開いていくような(確かモノクロの)映像が映し出されていたのが印象的だった。

「昔はブギーをよくやっていてブギーってなんだって話なんだけど」と、「Foxy Blue Love」からの「SLEEPESS IMAGINATION」。下手スタッフさんからのタンバリン投げ和ちゃんキャッチ、さらに和ちゃんから投げ返し!の技が近くで見られたのも嬉しかった。

確かSLEEPLESSで、お兄様が弟さんの背後に回り、背筋を上から下へつーっとなぞる。あはは!という感じに笑ってのけぞってお兄様と目を合わせる弟さん。もう一度同じことを繰り返すと、のけぞった弟さんの後頭部を優しく手で押して戻るように促すお兄様。えぇあまりの尊さにただただ声を上げるしかないわたくしたち。

この曲じゃなかったかもしれないけど、こちらに来てくださったヒーセさんが右手全体で「ぶちゅっ!」って感じの投げキッスもくれたので盛大に色めき立ちました。

いやしかしすごい。何がすごいってあの状況であんなお遊びできるのがすごい。間近(自分比)で観ていると、アニーさんは年長組よりもわずかに先のフレーズを演奏しているのですよ。そもそも年長組のアンプもメインステージにしかないし(確か)、スピーカーを通して出る音はもちろんばっちり合っているので、互いに、伝わるときの時差を考慮しているというか。

もちろんイヤモニもしてるからできるんだろうけど、向かい合ったりしてるわけじゃないですか。さらに「鶴ちゃんは30周年だからそっち!30年たったら来ていいよw」とロビン氏がうそぶいたようにw鶴ちゃんはメインステージで演奏しているという、この、状況もう単純に、すごいな、と思った。

プロだから当たり前とか、そういうことを言うのは簡単かもしんないし、ド素人の意見だからツッコミ所満載だと思うけど、それでもすごいと思うの。それを難なくこなしているように見せながら、お客さんへのアピールもしながら、だもの。音を生み出す、それで聴衆を巻き込む、ということには、こういう技術力も必要なんだよなあと改めて思った。

それに、気のせいかもしれないけれど前よりもたくさんの曲をセンターステージで披露してくれていた気がして、それはつまりこのステージを単なるサービスではなくちゃんと曲を演奏するフィールドとしてとらえているようにも感じて、それができる自信というか、力がついたという自負というか(もしかしたらそういう負荷をかけたのかもだけど)、そういうものを持てるようになったのかなあ、なんて思った。めちゃくちゃ上からですけども

 

MCは全然覚えられない相変わらずのポンコツなのだけど、「砂の塔」の前に言っていた「(これまで作った曲は)親子とかそういうテーマが共通している」みたいな話が、さらっと言っていたことだけれど何となく印象に残っている。

いや、はっきりタイトルになってるものも多い、けど、たくさんあるかと言われたらそこまででもない気がしていて。でもきっと裏の、そして永遠のテーマなのかもなあ、このひとにとっては、と勝手に思ったり。家族ではなく親子、かあ、とかも。

あ、この辺から理想の女ちゃんを使ってらしたような。

 

「嘆くなり我が夜のFantasy」は、GSツアーよりめちゃくちゃな自由度は減ってたけどw間近であのギタープレイを見られて嬉しかったなあ。

 

そして「LOVE LOVE SHOW」。

2番が始まるところでなーんかえまさんが和ちゃんの顔をうかがってるな?と思ったら、3人してドラムセットの周りを時計回りにぐるぐる回りだし、「ねえ乗りなよ~」から反対周りにもぐるぐる。

それを左右交互にニコニコ顔を向けて「なに?なに??」といったように見る末っ子。かわいい。ルールを知らされないままえんえんとドベをやらされるけど本人はわからないなりに楽しんでる末弟っぽくてかわいい(ひどい言いよう)。

 

で、「JAM」。これがまたすごかった。

名古屋と同じく、例えばプラネタリウムみたいにドーム状の屋根が赤いライトに彩られて、光が集まって一番色濃い赤になった全天の中心、その真下にセンターステージがあるように見える。

曲が世界の中心から、周囲を取り囲む数万人に響く様は、本当に、凄いとしか言いようがなかった。

演奏も渾身という感じで、身をかがめて黒白のVをかき鳴らしている姿が印象的だった。

 

ステージから降りて移動するときは私たちと反対側を通って行ったけど、あの演奏の後だと近くに来られたらどうしていいかわからんかったからそれはそれでよかったと思う。まあいつもそうだけども。

メンバーがいない間に流れるムービーは名古屋とちょっと違っていて、魑魅魍魎が減って(多分)代わりに吹奏楽器を持った男性が増えていたような。

大阪の名物の前を通ってドームへ向かうというのは変わらなかったので、東京ではぜひ高尾のお山と天狗を出してほしい。ドームから遠いけど。あと上野かな。飛鳥山でもいいけどわかるかしらw

 

DANDAN」では名古屋のチンドン屋さんが再登場!吹奏楽団も登場しなんだか華やかムード。「廣瀬で遊んだつもりが~♪」「タスケテー!」のやり取りも定番化?しているw

からの「ロザーナ」!こーれは実はとっても嬉しかった再集結後の曲の中でも多分一番繰り返して聴いた曲。

軽やかにステップを踏んで駆け抜けるような疾走感があるのに、ベースの音ががっしりしていて浮足立ってない感じがして、歌詞もどこか切なくて。っていうギャップのある感じの曲が好きなんかな、わたしは…w

あと、なぜかこの曲こそドームで聴きたい、と思わせる何かがあるのだよなあ。

アウトロの、古い西洋の映画みたいなセピア色っぽい情熱が感じられるギターのフレーズも好き。

 

「SPARK」。和ちゃんがメインステージの端から端まで全力疾走してたのはここだったか

えまさんが花道まで出てきてソロを弾いていたのだけど、もうそろそろ曲も終わるっていうところでもまだ粘って、花道の根元近くのところで正面向いて大股開いて弾いていた姿が印象に残ってる。弾き終わったら曲が終わるまでに小走りで立ち位置に戻っていたのも。予定外だったのか、どうなのかなあ。

 

「バラ色の日々」のシンガロングはやっぱりイヤモニをはずして聴いていらしたような。

そして「SUCK OF LIFE」で再び花道に出て、確かセンターステージまで出てきてくれる年長組。お二人が肩を寄せ合ってた場面が何度かあって悲鳴を上げてしまったんだけど、確かメインステージ?でそれをやってニコニコして、離れる一瞬にわずかにバランス崩しそうになったのか「あっ!?w」みたいにちょっと目を見開いてヒーセさんを振り返ったえまさんのお顔が、菊地英昭って感じがして、うふふとなってしまった。うふふ。

そして今回は間奏に入る前からメインステージ寄りのところまで歩いてきていたえまさん、名古屋と同じくテグスを手繰り寄せて一本釣りしようとする漁師和ちゃん。

しかし衝撃の事実というかなんというか、モニターに映し出されたのは若干悔しげな顔を作って、それが引っ張られているかのようにギターを差し出しているえまさん。

いや、あのですね、確かにインタビューでも「もっとギター弾きたいの?」とか聞いてあげてたとは思うんですけれども、いま和ちゃんが釣ろうとしてたのはそっちじゃないと思う…wwwライブ中で一番面白かった。そういうとこはかみ合わないのが興味深いというのも含めてw

で、伝統芸終わりがまたかっこよかったのだ。モニターいっぱいに映ったえまさんが、「Want to live!」と口ずさんでギャーン!とかき鳴らしたあの瞬間。

あの一瞬に心が撃ち抜かれた。抜いてくれた方本当にありがとう。感謝しきれない。

 

2000年に作った曲なんだけど」と同じような前置きをしてから演奏された「BRILLIANT WORLD」。やっぱりあの辺の曲には色々と思うところがあるのだろうかまあそれはそうだろうけど。

SJTでも聴いたけれど、その時よりも何というかからしさが加わっていたような、そんな演奏だった。「何十年~」のところ、アニーさんが大きく口を開けて歌いながら叩いていたのが印象的だった。

そしてこの曲中、モニターに映し出されるのはモノクロのメンバーの映像、ただし和ちゃんの青紫のシャツだけはそのままの色だ。それが曲の最後の最後、多分「BRILLIANT WORLD」と歌い上げたあたりで、ふわあっと全てがカラーになる。よくある演出なのかもだけど、「I don't know」と「ロザーナ」のMVを混ぜたようなそれが、今の演奏の雰囲気と相まって、すごくイメージに合ってるなあ…!とドキドキした。

 

アンコールの始まりはまさかの「SweetSweet」!いやこれも嬉しかった

大小さまざまなモニターに一つずつ、メンバーの上半身だけでなく、手元や足元なんかが映っている。この演出、本当に天才。

赤いギラギラの靴を履いたえまさんの足元が、トントンと細かくリズムを刻んでいるのがとても素敵すぎて、そこばかり見てしまった。あの方も立ち位置を離れるから、その間はエサがなくなった自動給餌器に設置されたカメラの映像みたいになるんだけど(言い方)、あの青のエフェクターボードとか、メンバーの立ち位置だけは黄色でバミられている床とか、なぜだか見入ってしまった。

あと鶴ちゃんの手元ね!弾いてるというよりキーボードの左端に置いている左手がメインだったけども…w

 

「きちんとメンバー紹介を」ということで、一人ずつ。

アニーさんには「繊細な(もう一言加えてたんだけど忘れてしまった)グルーヴを支えてくれてます」と。いつものごとく、格闘ゲームのプレイヤー選択画面のようなポーズを決めるアニーさん。関係ないけど叩いている姿を見てると前腕の皮膚?がちょっとふるふるしていたので、やっぱり筋肉落としたのかなあ。

そういえば振り上げた時にスティックが地面と平行になるような感じにしてたりしたのが印象的だった。あとメインステージのドラムの音がいつもより硬めでストレートに届いてくる印象。かっこよくて好きだったなあ。

えまさんはまた律義に(?)右の首筋にタトゥーシールを貼っていた。よっ!宣伝部長!販促しててえらい!!(贔屓に甘い)

「みんなの恋人。人間的にも最高です」と言われ、左手を自身の胸に当てるえまさん。いつも思うけどこのしぐさが韓流スターみたいで良い。

そしてセンターステージでは「今日の衣装トラみたいだね、球場が違う」といじられ「ツノが足りなかった…w(※京セラはバファローズの本拠地)」と反省(?)していた、ヒーセさんも紹介。ちなみにジャケット脱いだ時は「あれ脱いじゃうの!?脱いでもトラだね、しまじろうみたい」と言われていたw

で、ヒーセさんが「イエローモンキーの火付け役(?)」とwくすくす笑いが起きる会場に「あれなんて言うの?wあ、発起人!(?)」とロビンさんを紹介。

 

最後の最後はまさかの「未来はみないで」。

名古屋ではムービーだけだったので、新幹線に間に合わせるべく聴かずにドームを出たんだけども、「良くも悪くも初披露」を、今回はじっくり聴けて良かった。

実はまだCDでもちゃんと聴けてなかったのでしっかり聴いたのは初めて、だったのだけど、うおお、そうか、これ再集結のあたりに作ってたのかと色々衝撃が。

まあでも歌詞について「手紙を書くような気持ちで書いた」とか「歌詞を書いた時期は今は秘密」ともおっしゃってたので、いつの時点に綴られたものなのかはわからないけれど。でもなあ、手紙を書くような、って、どっかで聞いたようなあれだなあ…wいや、その前からそうして書いてた歌詞もあったのかもだけど。

最後の方で優しくあたたかいスライドギターの音が聴こえて、それもまたおおうとなった。いいよね、えまさんのスライドギター。よりダイレクトにあたたかみが感じられる気がするよね。って、誰に言っているのか…w

ドラムはなんだかこの日聴いた中で一番歌っているようで、ベースは控えめながらしっかりと曲を支えている感じがして、いい曲だなあ、今の4人で聴けてよかったなあ、と思った。3月っぽい。ようやくあったかくなってきて、花が咲き始めて、近しい人とは今までで一番仲が良くて、それでもさよならをしなくちゃいけない時期。

明日も会えるか僕にはわからない、と、また会えるって約束して、との間に、流れた年月や、通り過ぎていった人たち(って、どこで言ってたんだっけw)がたくさんいるのだなあ、とぼんやり考えたりした。

 

演奏が終わって、この時だったかえまさんがヴィンテージっぽいゴールドのレスポール(この子は比較的いろいろな曲で使っていたので、ああまた出会っちゃったのかなあと思った)を右手で縦に掲げていたのが印象的だった。やり切った感があったのかなあ。

そんなお兄様に背中を小突かれ、花道を走り出すアニーさん。なぜか後ろでぼそぼそと「(紙吹雪が落ちてて)滑るよ、滑るから危ないよ」などとツッコミを入れる和ちゃん。センターステージでいつものごとく万歳を2回、やったところで「それで終わりかいw」などとツッコミを受けるw聞こえてたのかなんだか、確かもう2回くらい万歳して、また小走りで戻るアニーさん。その走った後にふわっと紙吹雪が舞って、雪原を軽やかに走るハスキーみたいだった。

ちなみに弟さんが振り返るまではドラムセットに腰かけていたお兄様、立ち上がって迎えた弟さんに、兄貴も行けば?みたいに小突かれるも、やんわりと拒否w

アニーさん以外の3人は腰かけちゃってたけど、最後はみんなで立ち上がり、メロディ隊とリズム隊がそれぞれ肩を組んで、それから4人で肩を組んで、横並びになって、手を振って退場。前と同じく、下手のスタッフさんたちとハイタッチしながらはけてってた。

何の曲か忘れたけど途中で開いて振ってた金色の扇子(ちょっとだけ、キラークイーンを歌うアダムちゃんを思い出したw)を、最後に残って手に取って、ひらひらさせてはけていく和ちゃんなのだった。

 

場内は一瞬暗くなったけど、特に何かがそこで流れることなく明かりがついた。FM802DJさんのMCによる規制退場。

最後の方まで出られなくて、ぼんやりと撤収作業を見ていたのだけど、QALみたいにトランポが早々に入ってくることはなかったw

 

道も電車もぎゅうぎゅうの中、今日初めてイエモンを観たという、多分同世代くらいの方と話しながら帰った。曲も全部は知らなかったけど、かっこよかった!かわいかった!と言ってもらえて、なんだか嬉しかったのだった。

そしてホテルへ戻る道すがら、3月に配信が決まったという「未来はみないで」が早くもラジオから流れているのを不思議な気持ちで聴いていた。

 

確かな言葉を忘れてしまったのでニュアンスだけど、MCでロビンさんが、このバンドは今や希少となってしまった、607080年代のロックを継承するバンド、みたいなことを言っていた。

ロックンロールの夢と希望、という言葉も何度か口にしていた(それをどうする/したのか、というところは忘れてしまったのでこの単語だけ)。

ロックはやっぱりクラシックになりつつあって、そういうバンドも今や本当に少なくなっている、それを一番体感しているのは渦中にいるあのひとたちなのだろうなあ。わたしも実際、ロックを好きになったころ、周りにはほとんど、同じような音楽を好む人間はいなかった(わたしの交友関係が狭いのもあるけど)し、今だって、メンバーが50代のバンドの音楽を好んで聴いている人は周りにはほぼいない。

多分元々ロックってはみ出し者のための音楽なのだろうからそれもひとつの姿で、そういうところが自分にフィットしたというのもあるけど、でも聴く人が少なくなってしまったら淘汰されてしまう。

だけど、と思った。今まで出会ってはいなかったけれど、実際に聴いたらかっこよかった、と受け取ってくれる人はいる。

あの日ドームに集まっていた数万人の中にも、昔からのファンだけじゃない人もきっとたくさんいる。そんな人にも伝わるかっこよさ、は、きっと普遍的なもので、どんな時代であっても、出会えさえすれば受け取れるし心も震わされるものなのだろうなあと思った。

それこそこの2週間前に、わたしが同じ場所で聴いた音楽のように。

でも、受け継がれるカッコ良さだけではなくて、それを咀嚼して飲み込んで血の中に流した、自分たち自身の手で創った音楽だから、彼ら自身のために数万人が集まるのだろうな、とも。

 

「(イエローモンキーは)最後の一人が残るまでやりたい、あ、まだこの4人でも続けたいけど」という言葉で思い出したのも、2週間前に観た彼らのことだった。

もちろんあの歳で、初来日から数十年がたっても、9時間の時差を超えてパフォーマンスしに来てくれた、その機会に立ち会えたことは何よりの僥倖だ。

けれど――やっぱり、もちろん細胞レベルでも存在していなかった頃のことだから仕方がないんだけど、4人揃ったライブは体感してみたかった。ただもちろん、そのころに生まれ育っていたとしても、その頃の彼らを好きになるかはわからないから、生まれたタイミングも、好きになったタイミングも、こうでしかなかったのだろうなあ、と思うけど。

まあ、つまり何を言いたいかというと、この4人が揃って音楽を創っていて、ライブをやっていて、それがとても自分にフィットするもので、出会って立ち会うことができて、それって本当、すごい奇跡みたいなもんなんだなあ、と、あの日初めて思った。大げさに感動するとか、だからどうこうしなきゃ!とかではなく、ただ事実としてそれが胸にすとんと落ちた、そんな感じ。

それを言ったら、どんな一瞬も、どんな出会いもがそうなるのだけれど、まあそうだよなあ、と、すごく腑に落ちたのでした。

そういえばロビンさん前に言ってたもね、「毎日が奇跡の連続だぜー!」って。

 

だから、とりあえず未来は見ないで、今を噛みしめていてもいいのかなあ、と。

 

この先どうなるかとか、次にどうするのかとか、今はわからない。けれど、とにかくあの日の私たちは、彼らにとても楽しませてもらった。音楽で胸を躍らせてもらった。まずはそれを噛みしめよう、と思ったのでした。

 

満たされてる、とりあえず今は、と言える若さはわたしには(もう、ではなく最初から)なくて、先のことも見ようとしてしまったりするのだけれど、その時の大事なものを、ちゃんと大事にできる自分であれば、多分この先も大丈夫だ、と思いたい。動揺しないのは、なかなか難しいけれど。

でもとにかく、去年からずっと全国津々浦々で祈っていることが、どうか叶いますように。今はそれだけです、本当に。

2019年を振り返る

2019年、終わってしまいましたね。
あまりにも怒涛のような日々で、何がなんだかわからんが乗るしかないこのビッグウェーブに!!と駆け回っている中、あっという間に過ぎてしまいました。年始の各所のスケジュールを見るだに濃すぎる一年だったのに、もう2020年に突入だなんて…。
都度都度つぶやいたりはしてきましたが、なんだかじっくり振り返り自分にしみ込ませる機会が全くなかったので、まずはこの一年を総括しておこうかと。完全に自分用の記録です。まあわたしが書いてるものは全てそうなんですが…。
とはいえ本当に膨大すぎるので、去年と同じく「今年のライブを振り返るバトン」(もう去年だけど)を使わせていただくと共に、書いておきたいことをちょこちょこっと追加してみようかなと。
 
 
★今年行ったライブを列挙してください
 
(1/1 COUNT DOWN BUMP SHOW!!2018→2019@SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE)
1/20 REBROADCAST TOUR@マイナビBLITZ赤坂
3/3 REBROADCAST TOUR@旭川CASINO DRIVE
3/4 REBROADCAST TOUR@札幌ペニーレーン24
3/6 めざましライブ〜日本お元気キャラバン in国技館@両国国技館
3/17 REBROADCAST TOUR@ZEPP TOKYO
3/20 仙波清彦とはにわオールスターズ 気がつけば芸歴50年祭@EX THEATER ROPPONGI
3/28 THE YELLOW MONKEY 9th Album「9999」世界最速先行試聴会@日本武道館
4/6 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@三郷市文化会館
4/11 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@市川市文化会館
4/12 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@市川市文化会館
4/27 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♦︎@静岡エコパアリーナ
4/28 ARABAKI ROCK FEST. 2019@エコキャンプみちのく
4/29 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@新潟テルサ
5/11 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♦︎@北海きたえーる
5/12 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL❤︎@北海きたえーる
5/17 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@コーチャンフォー釧路文化ホール
5/19 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@苫小牧市民会館
5/25 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♣︎@サンドーム福井
6/8 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL❤︎@大阪城ホール
6/9 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@那須塩原市黒磯文化会館
6/10 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@茨城県立県民文化センター
6/11 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♦︎@横浜アリーナ
6/12 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL❤︎@横浜アリーナ
6/22 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@三重文化会館
6/29 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♣︎@秋田県立体育館
7/3 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@日本武道館
7/4 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@日本武道館
7/6 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♦︎@さいたまスーパーアリーナ
7/7 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL❤︎@さいたまスーパーアリーナ
7/12 DELICIOUS LABEL 20th Anniversary "DELICIOUS BUMP SHOW!!"@川崎 CLUB CITTA'
7/27 ABEDON×斎藤有太 ナマpp(ピーアニシモ)@Motion Blue YOKOHAMA 1st、2nd
7/28 ABEDON×斎藤有太 ナマpp(ピーアニシモ)@Motion Blue YOKOHAMA 1st、2nd
8/3 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♦︎@宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
8/4 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL❤︎@宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
8/8 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♣︎@日本武道館
8/9 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♠︎@日本武道館
9/3 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♣︎@アスティとくしま
9/12 ABEDON 弾き語りLIVE 「pp(ピアニシモ)」vol.2@eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
9/14 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♣︎@福島あづま総合体育館
9/15 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♠︎@福島あづま総合体育館
9/21 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♣︎@グランメッセ熊本
9/22 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 GRATEFUL SPOONFUL♠︎@グランメッセ熊本
10/5 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@かつしかシンフォニーヒルモーツァルトホール
10/6 鶴フェス2019@鶴ヶ島総合運動公園
10/17 LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA@横浜アリーナ
10/20 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@あましんアルカイックホール
10/21 ABEDON 弾き語りLIVE 「pp(ピアニシモ)」vol.3@旧グッゲンハイム邸
10/26 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@名古屋センチュリーホール
10/27 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@名古屋センチュリーホール
11/6 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@オリンパスホール八王子
11/9 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@ベイシア文化ホール
11/15 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@札幌カナモトホール
11/16 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@小樽市民会館
11/18 brainchild's 2019 Ura Omote Kikaku VIP "Veshari In Panties" 10th Anniversary Edition f^_^@味園ユニバース
11/21 brainchild's 2019 Ura Omote Kikaku VIP "Veshari In Panties" 10th Anniversary Edition f^_^@豊洲PIT
11/29 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@やまぎんホール
11/30 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@やまぎんホール
12/4 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@中野サンプラザ
12/5 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@中野サンプラザ
12/8 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@富山オーバード・ホール
12/16 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@大阪フェスティバルホール
12/17 ユニコーン100周年ツアー"百が如く"@大阪フェスティバルホール
12/25 ヨッチ リサイタル "きよっちこの夜 with むねきんトリオ"@摂津市民文化ホール
12/26 RADIO CRAZY@インテックス大阪
12/28 THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR@ナゴヤドーム
12/31 COUNT DOWN BUMP SHOW!!2019→2020@SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE
 
け…計66本?か?ナマppの1stと2nd分けたらさらに+2本。つまり1年の1/6がライブの日だったと。わあ…。5days連続の時とかあって、さすがに狂ってるなと思いました。よく切り替えられた(ライブとライブも、仕事とライブも…)。
この他にも、OOPARTSやNODA・MAPのお芝居観たりとか、どうでしょう祭とか、王様になれの試写会とか舞台挨拶とか、タワレコカフェとか、それはもう色んなとこに行きました。楽しかった。
2019年が始まる時に、1年のスケジュールが書き込めるカレンダーを用意して予定を書き込んでたので、それを見返しながら書いたんだけど、2月は一つもライブに行ってなくてびっくりした。逆にどうやって生きてたのか思い出せない(麻痺)。
 
 
★今年一番印象に残ったライブは?
 
ブログに個別で書いたやつはどれも印象的だったんだけど、改めて挙げるならば、
 
・REBROADCAST TOUR@札幌ペニーレーン24
・LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA
・百が如く@やまぎんホール(2日とも)
・pp(ナマppやきよっちこの夜も含め、行ったものすべて)
・GRATEFUL SPOONFUL@宮城セキスイハイムスーパーアリーナ♦︎❤︎、秋田県立体育館♣︎、日本武道館♠︎
・30th Anniversary DOME TOUR@ナゴヤドーム
 
でしょうか。ありすぎ。
 
ピロウズに関しては、横アリが印象的だったのももちろんだったけど(あとアラバキのトリビュートもよかった)、REBROADCASTというアルバムがわたしはとても好きで、ライブで聴けるのがとっても楽しみだったので、去年からのツアーは本当に嬉しかった。それもあって今回は思い切って、夢だったピロウズでの北海道遠征、夢だったペニーレーンでのワンマンに繰り出した。札幌のライブは特にお客さんの熱量が半端なくて、実は舞台がなかなか見えなかったんだけど、バンドのテンションも高くてとてもグッときた思い出がある。
 
ユニコーンに関しては、別記事にも書いたけど文句なくこれ。そして百が如くに関しては後で別にまとめたいのでとりあえず割愛。心が折れたらここに追記する…。
ppは本当に、とにかく凄いものを観てしまった、聴いてしまった、いや体験してしまった?という思いが強くて…音楽を、耳だけでない感覚器も刺激して全身で体感できる芸術に造りかえているあべどんさんは恐ろしいほどの芸術家で、探求者で、音楽家だなあと改めて思い知らされた。恐らくナゴヤドームでエマさんも使っていた、音に反応して光の波が現れるシステム?による映像。それをバックにぐうううっと猫背になって鍵盤に向かう姿は、新しい宇宙を創り出しているようだった。わたしは個人的に、何かを感じとる時に、耳とか目とかだけじゃなく、手ざわりとか雰囲気とか他人におよそ説明ができないものにも頼りながら把握しているのだけど(※オカルトな話ではない)、その感覚もびしばしと刺激される濃密な時間だった。MCで、休んでもいい、と言われたけれど、だから確かに終わった後に疲労感とか空腹感があるという…。けれどそれも体感した証として丸ごと持って帰りたいような、そんなライブ…というか、作品でした。新たなモジュラーシンセも加わり?今後も続けてくださるようなので、その進化がとても楽しみ。
 
イエローモンキーに関しては、そういえばアルバムの感想もライブの総括もしてなかったなあと今さら/(^o^)\いや、なんかこう、彼らに関しては、わたしみたいな青二才ファンがおいそれと、な、気がしてしまいまして…(じゃあ他のバンドに対してはどうなんだ)。なので個人的に4つのセトリそれぞれのベストアクトを。映像化されてるさいたまも良かった。個人的にはセトリは♦︎が一番好きだったかな。
そして、このツアーを経たナゴヤドーム公演がまた、とても良かったのです。ツアーの中でもまだ、「9999」の曲たちは"再集結後の曲"みたいな、ちょっと特別な扱いをされてるような印象というか、水に油性の絵の具を垂らしてかき混ぜたような、マーブル模様もそれはそれで美しいけど…みたいな感じがあったのだけど、これがびっくり、ドームのセトリの中では見事に全てが馴染んでいて、解散前の曲と肩を並べても全く遜色がなかった(という言い方があってるかわからないけど…)のがよかったなあと。特に「天道虫」と、ちょうど一年前のライブでは新曲として一番の特別扱い(?)だった「I don't know」の馴染みっぷりときたら。演出をふんだんに盛り込んだロックショウのような2017年のドーム公演とは打って変わって、モニターに映るのはほぼリアルタイムのメンバー(過去のライブ映像とのオーバーラップもあったけど)(余談だけどこれ、百が如くの『HELLO』を思い出してしまった…w)。そしてチンドン屋さんの演出以外は抽象的な映像、そして文字ばかり。もちろん照明もすごく綺麗だったけど、つまりそれだけでも十分というか、バンドの音楽を主軸に置くだけでもドームに集まった数万人の心を動かせるのだ、それだけの力を放てる今なのだなあ、と胸が熱くなった。
 
 
★今年一番楽しかったライブは?
 
・きよっちこの夜
・VIP
 
ヨッチさんのことは別記事の通り。とにかくギャアアアと黄色い(?)声を出せたのが楽しかったw久々にアイドルを観たw
VIPは本当に、毎年楽しいのだけど、今回は特に"音楽の楽しさ"が大きなウエイトを占めていた気がしてワクワクした。そのうちツツミカクサズでやってくれるのかなあ、わからないけれど、即興で曲を構築する時に菊地Pがぽろっとこぼした言葉や、それぞれが(予定調和なのだとしても)ぽろぽろと奏でるフレーズが、だんだんと曲としてまとまっていく。個性豊かなメンバー全員が、ひとつの曲を作るという目標に真摯に向き合っている。そんなレコーディングやリハーサルの過程を垣間見られた気がして、とても楽しかったのでした。
 
 
★泣けたライブは?
 
・LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA
・百が如く@やまぎんホール(2日とも)
・GRATEFUL SPOONFUL@秋田県立体育館
・30th Anniversary DOME TOUR@ナゴヤドーム
 
印象に残ったのと被ってしまう…というか、涙が出るほど心が動かされたらそりゃ印象に残るってものですが。
 
ピロウズの横アリはとにかくオープニングのムービーで泣いた。泣いたというかもう見開いた目から何もしないのにあとからあとから涙が出てきてびっくりした。その辺は横アリの記事に書いたけど、今思い返すと、ああこのひとたちは本当に今年を、この公演を、バンドのではなく今までの人生の集大成にするつもりだったんだな、と改めて思う。だからといって今後の活動が尻すぼみになるとかではないけど、でも、出来るうちに(なおかつ、そのチャンスが巡ってきたから)人生の中の金字塔を立てておきたかった、のかもなあ、と。それが出来るってすごく凄いというか、それまでの人生があったからこそ成し得ることだというか。今はただ、凄いことだなあ、よかったなあ、と思うばかりです。人生の中でそういうことができるひとって、なかなかいない。
 
百が如く山形はとにかく1日目にあのエンディングムービーを見ながら号泣。2日目もアンコール中ずっと号泣。あと、民生さんがおしどりミルクケーキのCMソングを歌い上げたところでも泣いた。いい思い出なんだろうなあ。なんて。
 
GSツアーに関してはまあ各所で泣いたりしたんですがw、とりわけ秋田は「エマさんが格好よかった」ということだけでボロボロ泣けてしまって、終わった後も1人帰路を急ぎながら泣いていた。なんというか…まあ、ちょっとこう、それまでドキドキしていたので、開演直後から最後まで動きも演奏もキレッキレのロックギタリストだったことに、安堵したというか。エマー!!と呼び捨てで叫んでしまった。♣︎は特にアドリブ入れる曲の多いセトリだった気がするし、なんだかずっと色々ドキドキしながら見ていた記憶。
で、ナゴヤドーム。「Horizon」はやると思わなくて、なおかつその直後に「Father」だったもので、もうしゃくり上げるようにして泣いてしまった。あのコンボはずるいというかあざといというか、なんか、バックグラウンドを知らなくても多分号泣してしまうんだよなあ。「外からなんて何もわからないさ」ってふわりと笑ってくれる仲間がいることも、些細な、けれど自分にとってはすごく素晴らしいと思える発見をてらいなく近しい家族に伝えられることも(空に向かって、だからかもだけど)、しあわせなことだよなあ、よかったなあ、という思いに、少しだけの、いいなあ、が混ざって、あのどこまでも開放的でキラキラしたサウンドに、逆に泣けてしまうのでした。見上げた空が青すぎるというだけで、涙が出てきてしまう時のような感覚。
 
 
★もし楽しくなかったライブがあったら教えて?
 
楽しくなかったことは全くなかったのですが、ちょっとこう、色々と思うところがあり、ドキドキ、いや、ハラハラしながら観ていたライブはいくつかありました。いくつか…いや、片手ではおさまらない回数。それも一つのアーティストに限らず。
それはわたしの問題で、そんなところに着目するのはどうなんだって話なのですが、でもこう…見えてしまうとどうしても気にかかってしまって、辛いというか、怖かった。から、いつも通りに手をあげたり拍手したりはもちろんして、でもそうしつつ、とにかく少しでも早く無事に終わることを心の底から祈りながら観ていた。
全力でパフォーマンスしてくれてるのに失礼だとは思うけれど、それでも皆さん、全てを(表向きには)大きなアクシデントなく終えていたのは、凄まじいの一言でした。でもその後にご本人様方の口からポロポロと色々なことを聞いて、めちゃくちゃに肝を冷やしたのも事実。
 
ミュージシャンとしての生き様を全うしたい、それなら何かを犠牲にしても、という思いもあるのかなあ、と思ったりする。わたしもわたしで、色々なものを犠牲にしながら仕事をすることが少なくないので(ただ、じゃあそれが本当に自分の意思によるのかというと素直に首を縦には振れないのだけど)、わからないでもない。そして、その人の生き方に(特にこんな、見ず知らずの)他人がどうこう言っていいことでもない、と思ってはいるので、これは単なるわたしのわがままな独り言なのですが。
わたしは大好きなミュージシャンの皆さんから、その創作物に、言動に、存在に、大きな力をもらっていて、文字通り生き延びさせてもらっています。だから、そんなひと達には、ずっとしあわせでいてほしい。たとえばの話、もししあわせを追求した結果音楽を辞めると言われても、その方がそのひとのしあわせなのであれば(辛いとは思うけど)それでもいいと思うくらい。縁もゆかりもあるわけではないけれど、とても大切な存在だから。
だからどうか、身体を大切に、自分のしあわせを大切に、大阪ファイナルのあべどんさんの言葉のように来年も、それだけでなく再来年も、その後も、末永く、心身ともに健やかに生きて(この場合の『生きる』は、かにさんの言う『死ぬまで生きていこう』のような…そのひとらしく在る、という意味で)いてほしい。そんなことを考えた一年でした。
 
 
★一番印象に残った曲は?
 
・「Before going to bed」:REBROADCAST TOUR
本編最後にさわおさんがギターを置き、ハンドマイクで叫ぶように歌い上げ、歌パートが終わったら去っていって3人だけが最後まで演奏を続ける、というステージングが斬新でした。歌詞と歌い方も相まって、なんだか毎回ぐっときてしまった。横アリでやるかと思ったけどやらなかったなあ。
 
・「ハイブリッド レインボウ」:LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA
この日披露されたのはどの曲もそうだったけど、この曲は本当に魂がこもっていた。凄まじいほどの気迫でギターソロを弾くぴーちゃんの姿、あんなに遠くから観てたのに、いまだに目に焼き付いている。
 
・「この恋のかけら」:THE YELLOW MONKEY 9th Album「9999」世界最速先行試聴会、GREATEFUL SPOONFUL
試聴会の一番最初に鳴り響いたあのギターの音、あれに一瞬にして心を掴まれました。ほのあたたかさと寂寥感とある種の諦念とそれを受け入れた先の何か、が入り混じったような、少し灰色がかった曲。ツアーだとアニーさんのあたたかなタムの音に支えられて、冬の終わりに何かが大地から芽吹くような、前向きな力をはらんでいたように聴こえたのがすごく良かった。確か大阪でだけ、そのイントロのギターにかぶせてしゃらしゃらしゃら…とシンバルを鳴らしていたのがとても素敵だったので、いつかまた聴いてみたい。
 
・「ZERO」「HELLO」:百が如く
百が如くは別にまとめたい…けど…どうなるかわからないので。
「ZERO」はめざましライブのあべどんさんハンドマイク体制からガラッと変わって、ツアーでは前半後半とも本編最後に披露されていた。後半では特に、「半世紀少年」あたりから怒涛の盛り上げ曲がガンガンと続いてのこれ。今年世に出たばかりのこの曲が、盛り上がりと美しさと疾走感でもって本編の最後(または、ライブという組曲の最終楽章)を綺麗にまとめあげていたのがすばらしかった。そしてこのひとたちの放つ、眩い光に包まれるようなグルーヴには、毎度ながら心を揺さぶられ、最強だ…!と思わずにはいられなかった。
「HELLO」は本当に5年ぶりくらいに聴いた。10年前から少しずつ歳をとり、それでも同じ曲を歌い奏でる彼らの映像とともに聴く今の演奏は心にしみるどころではなかった。百が如くのうちの"十"、再始動10周年は大々的にフィーチャーされることはほとんどなかったけど、この曲と前半の「ひまわり」、そして今ここで彼らが、再始動後の曲をふんだんに取り入れたセトリで全国ライブツアーを行っているということ、それがまさにこの10年を表していたのかもなあ。
 
・「ひまわり」:pp
ppはライブ全体が一つの作品みたいなものだと思っているので、あまり曲ごとに括るのは無粋かなと思うのですが。
これを初めて聴いたのは確か渋谷。歌い出した時、会場全体がハッと息を飲んだのが感じられた。デモすら聴いたことのなかった、今のあべどんさんの歌うひまわり。ピアノひとつと歌声だけで表現されたそれはなんともエモーショナルで力強くて、胸が詰まった。これが聴けたのは本当に嬉しかった…。
 
・「Umbrella Flower」「Wanna go home」:VIP
前者は本当に、本当に嬉しすぎて、味園では小さく叫んでしまった。わたしはアルバム「PANGEA」が大好きなのだけど、中でも倒錯的な美しさと、歌詞の"らしさ"が相まって、生で聴きたいと思っていた曲の一つ。ケイタさんにしか歌えないと菊地Pが仰ってた気がするので、VIPならではだなあと。嬉しかった…。
後者は豊洲PITで聴けたのが嬉しかった。わたしは直接には何もなかったけど、それでも馴染みのある場所の姿が変貌していく様は本当に心が痛んだし怖かった。そんな今年を振り返る意味と、この会場の成り立ちも含めて、という意味もあったのか、ここで演奏してくれたのは本当にPらしいなあと。
 
 
★一番印象に残ったMCは?
 
・横アリについてのさわおさんのことば
晦日のカウントダウンでの発表からツアー中、デリバン、そして当日まで、いつもながら真摯に伝え続けてくれた。10年前の武道館が即完したから、今度は絶対売り切れないところで演って、来たい人が全員来られるようにしたいということ。なかなか会場を貸してもらうのが難しくて、916ではない日付になったこと。「平日だから全員仕事を辞めて来て欲しい」とか、当日も「みんな言いつけ守って仕事辞めて来たの?w」には笑ったけど、わたし達に向けて言ったことを忘れてない律儀さにちょっと泣きそうになった。
 
・「これから先、何かあっても今日のこと思い出したらちょっといい気分になれる、そんなライブにしたいと思います」
横アリでのぴーちゃんのことば。それにやられて(?)トチッてしまう皆さんw
その後のカウントダウンでは、思い出すだけでニヤニヤできるライブになりました、今年は皆さんにもそういうことが降りかかりますように、というようなことを仰っていて、ああやっぱり金字塔にするつもりだったのはみんなそうだったのかもなあ、と思った。別にここから下がるとかではないけど、ある種のピリオドというか到達点というか、そういうのを迎える過程を見てしまった、と、なんだかいろんな感情がないまぜになって、胸がきゅっとした。でも、その場に立ち合わせていただけたというのは、間違いなく誇らしいしありがたいことだ、勝手ながら。
 
・「みんながしあわせになりますように!ユニコーン永く続けられますように!」
「来年もユニコーンは生きているということで」
百が如くツアーでのあべどんさんの言葉。前者は山形で天を仰いでシャウト、後者は大阪ファイナルで民生さんに面と向かって言ってらした。
ppでも、鍵盤は座って弾くことにした、(音楽を)長く続けたいんでね、というようなことをぽろっと仰っていたのを思い出した。そりゃあそれなりに年齢を重ねてらっしゃるから当たり前なのだけど、個人差はあるにせよ積年の色々は身体に出るわけで、ではそれとどう付き合っていくか、って、永遠の課題だと思う。ロックンロールは不健康でなんぼ、みたいなイメージは昔からあるけど、60〜70代のロックミュージシャンだって活躍している中、じゃあ何を大事にするのかというと、やっぱりこのひとは音楽なのだなあと。それが、勝手ながらすごく嬉しかった。
そして、"あなたの願い事が叶うことが幸せ"と歌詞に綴るひと、七夕の短冊に"みんなの願いが叶いますように"なんて書くひと。そんなひとこそ誰よりもしあわせになってほしいし、そんなひとの願いは絶対に叶ってほしい。そう願ってやまないのでした。
 
・「皆さん!ユニコーンはファイナルに向けて全速力で走り抜けます!力を貸してくれてありがとうございましたー!」
これもあべどんさんのことば。ツアーも残すところあと大阪2daysのみ、という富山公演の最後、ハッタリが流れる中で高らかに仰っていた。
勝手にだけど、そのことばにめちゃくちゃハッとしてしまって、終演後これだけはとメモアプリに書きつけていた(けど、細かいニュアンスは違うと思うので雰囲気で読んでください…)。
わたしは元々、音楽の聴き手・バンドのファン、である自分は、好きな方々が世界に放っている創作物を勝手に享受させていただいている立場なので、応援してくれてありがとうとか、来てくれてありがとうとか、言わなくてもいいのに…と思っていた。こちらが勝手にやってることなのに、恐れ多いというか。
なのに「力を貸してくれて」だなんて。再始動直後はインタビューでも懐疑的な言葉を口にしていた方だから(それはそれで悪いことじゃないと思っている、わたしは)、余計にびっくりした。多少なりとも、力にしてくれていたのかしら、と、受け手である立場ながら、勝手にすごく…嬉しいというか、身に余るというか、光栄です、という気持ちになったのだった。そして、本当に少しでもそう思ってくれるならば、これからも同じように、陰ながら応援させていただきたい、と、切に思うのでした。迷惑にならないようにね。
 
あとVIP豊洲で菊地Pが明言してたことが個人的にめちゃくちゃ嬉しかったりした(そしておこがましくも『わかる』とちょっと思ったり)。けど、そのうち動画になると思うから、割愛。
 
 
★行きたくなかったけど行ったライブはある?
 
なし。
 
 
★今年一番行った会場はどこ?
 
日本武道館(5回)。何気に人生初のライブもここでした。改修前にたくさん行けてよかった。
次点は横浜アリーナ(3回)。まさかここがランクインするとは…。
 
 
★初めて行った会場or都道府県は?
 
・会場
旭川CASINO DRIVE
苫小牧市民会館
三重文化会館
アスティとくしま
eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
福島あづま総合体育館
かつしかシンフォニーヒルモーツァルトホール
鶴ヶ島総合運動公園
小樽市民会館
摂津市民文化ホール
 
都道府県
 
意外とあった…!去年と被ってなかったということか。
中でも嬉しかったのはペニーレーン。上でも書いたけど夢だったので。
秋田と福島の体育館も、本当に体育館!て感じで面白かった。秋田は途中で涼しい風が吹いてきたかと思ったら、クーラーがなくて窓を開けただけだったとか(幸い?雨の日で、外が涼しかったのだ)。
あべどんさん肝いりの旧グッゲンハイム邸に行けたのも本当に嬉しかった。周りの雰囲気も本当に逗子に似ていて、すごく素敵だった。
都道府県で言えばこれも長年行ってみたかったお伊勢参りができた三重県。あのあと台風で大変なことになってて心が痛んだけども…。徳島も風光明媚でとてもいいところだった。大塚美術館、もう少しゆっくり観たかったなあ。
 
 
★遠征はした?
 
上記の通り。もはや日帰りできるところは遠征じゃないと思う。名古屋とか北関東とか。
 
 
★ライブの前後に起こったアクシデントなどどうぞ
 
数々あるんだけど、今年は熊本ですかね…。
まず大型台風により行きの飛行機が出るか出ないか出ても戻るか、みたいな感じで前日から読めず。朝早い便でどうしようもなくて、一か八か新幹線に飛び乗り、条件付きの表示が出た瞬間にキャンセルした。結局飛んだらしいのだけど…。
で、帰り。当日便はやっぱり欠航。翌日の便に振り替えて、スーパー銭湯にでも泊まるか〜と思ってたんだけどお友達の勧めで同じホテルを予約。ライブが終わった後、余韻に浸りつつ食事してたら、なんと機材繰りの関係でわたしとお友達が振り替えた便だけが欠航との知らせが/(^o^)\(※ライブ直前にメール来てたんだけどもちろん気づかなかった) 他の便を探すも当たり前のように満席。楽しい気分が一転、焦る我々。とりあえず早起きして朝早い新幹線で帰ってきた。着いたらもう午後になってた。
めちゃくちゃ焦りはしたけど、お友達とツアーの振り返りとか色々話しつつ帰れたのは修学旅行みたいで楽しかったし、乗り換えで福岡に一瞬降りて駅弁も買えたし、早起きできてなかったらさらに新幹線動いてなかったらしいし/(^o^)\なんだかんだいい思い出になりました。九州はまたゆっくり行きたい。
 
あとレディクレの日にリングライトなくしかけたのは今年一番肝が冷えた/(^o^)\ホテルをチェックアウトする時バタバタしてて布団に紛れたっぽい。保護しておいていただけてよかったし、会場向かう前に気づいてよかった。
 
 
★メンバーが投げたものキャッチした?
 
キャッチしました。実はかにさんのスティックを。手渡しでなく投げたやつ。その日、わたしの前の席が空いてて、まあいつもながら曲のシメとかの真似っこしながらノリノリで見てたからこっちに…?自意識過剰だけどそういうことにさせておいてほしいw
あと、これは拾ったんだけど、確か上々終わりで民生さんが投げたピック。は!と思って手を伸ばしたら、あれ?赤??拾い上げたら「ABEDON」の文字と赤いロゴ。形一緒だから共用してるのかな…。
 
 
★チケット代、交通費、グッズ代などどれくらい使った?
 
相当使いました。もう…それはそれは相当…。
そういえば個人的に、今年はTシャツ以外にも買ってよかったグッズがたくさんでした。
ピロウズだとバスターくんのぬいぐるみマスコット、あと王様になれのラーメンどんぶりwとパンフ。
ユニコーンはハンドタオル(前半の大きめのやつ)、フラッグケース、スタンプ帳(今年は参加数多かったから特に!)、リングライト。それからグッズじゃないけど、白どんちゃんことあかちゃんチワワさんw あとあべどんさんのイヤーカフもお気に入り。
イエローモンキーはスマホ用ガラスカバー(スワイプしづらいけど、人に見せると『あっ!イエローモンキー?』と言われるのがちょっと嬉しかったw)、あとブレチャのティッシュケース(こういうのマジで欲しかったから助かった。うどんちゃんもかわいい)、張子の:▽:。風呂敷はこれから使うのが楽しみ。
 
 
★今年最後のライブは?
 
カウントダウン!去年と同じ。
そういやさわおさんが最初に言ってたMC、変わってないなー!wって感じで嬉しかったw「51歳にもなってこんな…w」って仰ってたけどw
 
 
★来年は今年よりたくさんのライブに行きたい?
 
多分これよりたくさん行くことは今後ないのではないだろうかw
でも行けるとこにはなるべく行きたい。お金と時間と身体の許す限り。
 
 
★来年最初のライブはもう決まってる?
 
カウントダウンを抜かせば、決まっております。わたし史上初、洋楽アーティストのライブ。しばらく他のライブ観られなくなるかもしれないと噂のwやつ。めちゃくちゃ楽しみです。英語の勉強は結局できてないけど、せめて曲だけでも予習せねば。
 
 
いやはや、人生で最も濃かったと言っても過言ではない一年でした。
ライブに行く、というきっかけで、行ったことのなかった所、見たことのなかったもの、食べたことのなかったもの、なかなか会えなかった人、それらにたくさん出会えたことも本当に大きかった。だって、普通に過ごしていたら、いつか…で終わっちゃう(下手したら、そういう夢想もしないかもしれない)もの。
オタクはジャンルでしか一年を振り返れないと言われてたけれどw、それでいいじゃん!と思う。だって好きな物事を抜いたとしたら、わたしの今年は(も)すさまじく暗澹たるものだったし/(^o^)\たくさんの新しい人、場所、物事、考え方との出会いもなかった。楽しみでどうにかこうにか生きた時間が延ばせるのであれば、そして少しでも人生が豊かになるのであれば、それはそれでいいのではないかと思うのです。
ただやっぱり、他力本願というか、それだけにすがるのはあまり良くないことかなと思うので、これからは少しずつ自分自身の視野も広げていけたらいいな、なんて。それから今の好きなものに立ち返った時、また別の視点で見られるのもいいかな、とか。
あと、できたら、都度振り返りもちゃんとしたい。自己満足だけど、ちゃんと文章にして、その時見たこと思ったことを記録していきたい。忘れてしまうのはしかたがないから、後から見返して少しでも思い出せるように。
 
最後に、繰り返しになるけれど、2010年代最後の一年を心震えるように彩ってくださった皆様に、たくさんの感謝を。皆様のご多幸をお祈りしております。
2020年も、どうぞよろしくお願いします。

2019.12.25 摂津市民文化ホール

2019年12月25日、クリスマス。
わたくしはその日を、3年前に一度映像で姿を見ただけでガチ恋案件となってしまった(?)ニッチなアイドルと、ありがたくも過ごさせていただくべく、今年何度目かの大阪に降り立っておりました。
以下、だいぶ自分目線の感想と備忘録。ただし前半後半でものすごい振り幅があり、普段の倍以上の勢いで体力と精神力を(もちろんいい意味で)消耗したため、本当にいつも以上に曖昧です。もし正確な「レポート」を期待するならば、どなたかの呟きか何かをぜひ…。
ていうか映像化してほしいなあ…いや、内容を見たら「こりゃ無理だ」ってなるんだけども…どうにか…。
 
 
駅から歩いて10分ほど、摂津市民文化ホールにたどり着くと、そこでお出迎えしてくれたのは立て看板とポスター、そして完売御礼の文字。改めて「狂気の沙汰…」とつぶやいてしまう。だって開演18:45、終了予定21:15って!2時間半も演るの???
道ゆく地元のおばさまが、立て看板に「?」という顔をして、近寄ってじっくりポスターを眺めて首を傾げていらしたのが可笑しかった。わたしはなぜかいつもそういう時に「これ誰?」と話しかけられやすいので、そそくさとその場を離れてしまったけども…(※うまく説明する自信が全くなかった)。
 
グッズ販売は16時から。会館入口の外に、いかにも会議室に使われてます!な机にのせられたグッズが運ばれてきて、突然流れ出すインストのクリスマスソング。商店街のバザーみたい…wと思いつつ購入。うちわがガチのサイズで笑った。いやいにしえのジャニオタなわたしもうちわは買ったことないんだけどね。
ちなみにそれぞれのソログッズも売っていたのであべどんさんのイヤーカフを買いました。とてもかわいい&かっこよくてすでにお気に入り。思っていたより耳にフィットした、けどなくさないようにしないと。
 
開場は18時。ロビーもホール内も、こじんまりとはしているけれどとてもきれいで新しい感じ。しかし452キャパとはこの程度か…とびびる。中学のコンクールとかだってもっと大きいとこでやってたで…
舞台は奥行きを広く使っていて、バックは赤い幕がそれこそコンクールのように幾重かにかけられていて、真ん中のモニターにポスターと同じ「きよっちこの夜 with むねきんトリオ」の画像。
その手前、一番下手側に、それこそUCFCツアーで使われてたような細長い司会用の台。赤く塗られていてそこにも「きよっちこの夜」の文字。そしてその手前にクリスマスツリー。
舞台手前の下手側にひとり股旅セット(OTマークのついた事務用椅子とアコギが数本、あとちゃんといつものフェーダーとかが置いてある机)、そして上手側にグランドピアノ(メーカーはわからなかった)。ピアノは椅子が舞台中央になるように置かれていて、その傍ら(舞台の奥側)に鎮座するは、今までのあべどんさんのセットでは見たことないほど大きなモジュラーシンセ!ケーブルはそんなにたくさんついてないように見えたけど、ところどころがランダムに光って、まるで生きているかのような雰囲気。えええ?これ、pp演るの?と胸の高鳴りが止まらなくなる。
 
 
開演時刻をわずかに過ぎたところで暗くなる会場。そこに流れる、「アベストテン」のOPとEDでお馴染み、ワンナイがアレンジされた曲。
そして現れたのは、まさかの「司会の、綾柳徹子でございます⭐︎」綾柳さん!!!!!会場めちゃくちゃヒートアップ。綾柳さーん!!と手を振りまくり。「私の衣装も金銀パールベイビー」「(客席に)そこのお父さん!出場者のお父さんですか?ボサノバ父さんですね」「胸がトキメキーノ」などなどとにかく初っ端から飛ばしまくる綾柳さん。好き。
いつのまにかバックの画像が「14th SONY UNIQUE SONG CONTEST unicon」とキラキラ文字で書かれたものに変わっている。「第14回ソニーユニークソングコンテスト、通称『ユニコン』」が始まったことをとうとうと説明する綾柳さん。場内は早くも爆笑の渦。「全国各地の代表が8組集まって最優秀賞を決める」にニヤリ。なんとなく今回の設定が見えてきたんですが…w
「まずはエントリーナンバー1番、中国・四国地区代表」おお、トップバッターは!と思ったところで「奥田民生くん18歳です!」に盛大にずっこけるわたくし。じゅ、じゅうはっさい??
民生さんはいつもの緑っぽいワークシャツに黒っぽいパンツ、グラサンで登場(このパートの皆さんの衣装はインスタの通り)。いやどっからどう見ても54さ…「よろしくお願いします!」喋り方がなんか違う。奥田原さんのようなそうでないような不思議なしゃべり方。
未来のスターを夢見て(?)広島から出てきた18歳の少年に優しく話しかけ、パフォーマンスの開始を促してはけていく綾柳さん。
 
 
アコギを抱えた奥田くん、「18歳なんですけど…w」と言いながら弾き始めたのは「イージュー⭐︎ライダー」。さすがの貫禄。貫禄…?
演奏が終わると、用意された薄茶色の液体をぐびり。わずかにザワつく会場に「ジンジャーエールです」そうですか。
「アマチュアなのに4曲も…w」と言いながら続いては「俺のギター」。歌詞を考えると実に堂々とした18歳w
ここでだったかギターを変えて「アマチュアなのにギターをこんなに持ってきて…w」みたいなことも言ってたような。そしてまた茶色いお水をぐびり。「ジンジャーエールです!」「アップルタイザーです!」そうですか…。
「西の方から来たので」と、「風は西から」。そうか、広島って大阪より西なんだなあ、と今さらながら思う。
最後にまたちょっと困ったように笑いながら「一緒に歌ってください…w」と、「さすらい」。「はい摂津ー!」と煽られて一緒に歌う会場。うみの、なみの、つづきを、と、ちょっと高くなるところはひとつひとつ顔をあげて歌っていて、あと最後のフレーズもなんだかひとつひとつの音を確かめるように弾いていた。いつもこんな感じだったっけか。
 
演奏が終わると綾柳さんが出てきて「よかったわよ〜!」みたいに褒めてくれる。恐縮の奥田くんw
「これからはどんなミュージシャンを目指してるの?」と聞かれ「井上陽水さんみたいな…髪型も(リスペクトしてる?)w」と答える奥田くん。「いつか共演できるといいわね!あなたソロでもいいけどバンドに入ってもいいんじゃない?」「…そうすか?」「今ならなんとかコーンとか、とんがりコーンとか」「コーンフレークも流行ってますしねw」と、時空を超えてM-1を見たらしい奥田くん。なんだか示唆に富んだ会話に、なぜかちょっとだけぐっときてしまった。
 
 
「続いてはエントリーナンバー6番!」突然のタイムリープ
「関東地区代表!斎藤太(ふとし)くん、15歳です!」えええ有太じゃないの?wしかも15歳ってもしやガチの年齢差とあわせたのか。イケメンね〜と褒めまくる綾柳さんに、太くん15歳、やや?恐縮した感じを醸し出しつつもピアノにつく。そういやここでピアノ脇、モジュラーの手前に薄茶色のお水が用意されていたんだけど誰も手はつけてなかったような。
流れ出したリズムに合わせて演奏されたのは「雪代水」。ナマppを思い出して胸が高鳴る。素人耳だけどめちゃくちゃ音がいい。有太さんの力なのか会館やピアノのポテンシャルなのか、どうなのか。
続いては「ボレロ」。真上から1人をぽつんと照らすスポットライトが曲に合っててとても綺麗。そしていつもながらとても良い声…。
「緊張しすぎて(雪代水の)最初入り損ねましたw」と苦笑しながらも、「今から35年後の…50の時に出したアルバムを…w」と、「飛行船」「Go on」を続けて披露。いや本当にかっこいい。ナマppで聴いた、他のアルバムの曲も素敵だったけど、今日ここにいる2人も参加してるアルバムからのセトリだったのがなんか嬉しかった。今日はシンガロングはなかったけども、それもまたよかった。
 
再び出てくる綾柳さん。「どこから来たの?」「東京の保谷市で…あんまり有名じゃないんですけど(←これは綾柳さんが仰ってたかもしれない…)」15歳の時だからまだ保谷市なんだwww地味に細かいこだわりに胸熱のわたくし。
あなたはこれからどうなりたいの?と聞くのは恒例のよう。「色々なミュージシャンとやってみたいです」と答える太くんに、いろんな人のサポートやってもいいんじゃない!?と綾柳さん。ふふふ。
 
 
ここでピアノ周りに一斉に転換が。椅子が、背もたれなしのフカフカのものから、背もたれありの黒いもの(普段ユニコーンのライブで使ってる白のと作りが同じやつ)へ。板さんも運ばれてきてたような。
 
「1969年、14回目となるソニーユニークソングコンテスト、最後の出場者です。エントリーナンバー8番!」ここでもタイムリープ。「東北地区代表、阿部純くん!」
え?じゅん??と思ってたところに、ppで見せるような黒のロングジャケットを羽織って出てくる純くん。ぎゃあああと心の中で叫んだところに「じゅんでぇーす!」と自己紹介。え?そのビジュアルでヨッチのしゃべり方??もしかしてヨッチはヨッチになる前から素でそのしゃべり方なの???
「山形のどこから来たの?」「金井です!下から読んだら"いなか"です!!」これ本当に昔から言ってらしたのかもなあ。この前の山形のことも思い出してちょっとほろり。
 
綾柳さんがはけると、純くんは立ったままモジュラーシンセの手前に置かれていたシャンパングラスの中の赤いものをぐーっと飲む。「おさけじゃないです」そうですか……。
椅子に腰掛けて鍵盤に指を置く。と、奏でた音の一つ一つのあと、エコーのようにストリングスみたいな音が響く。なんだこれ…!また新たな魔法を手に入れたのか?
そのまましばらくピアノを奏でる純くん。ぽろぽろぽろぽろ、指が滑らかに細かく動く。そのまま「欲望」へ。ピアノの音と相まって、なんだか静かながらエモーショナルな演奏。
歌が終わると立ち上がってモジュラーシンセに手をかける。あ、これは持ち時間いっぱい、ノンストップでやる気だ…!
モジュラーシンセからは、百が如くツアーの客入れで流れていたような、ぴちゃんぴちゃんと水滴が落ちるような音から、宇宙で光線が放たれるようなやや攻撃的な音(に、わたしには聴こえた)などが響く。そこに手数の多いピアノがぽろぽろぽろぽろと絡まっていく。すごいなあ、今日のこのピアノさんとは相性がいいのだろうか、それとも有太さんがあたためていたからなのだろうか、はたまた初対面だから会話を尽くしているのだろうか。
しばらくして立ち上がってピアノの上に乗った板さんに向かい、ぐーーーっと猫背になって念を込めるかのようにストリングスのようなそうでないような、な音を放つ。太くんと同じスポットライトもありつつ、音に合わせて周りの照明がゆっくりと赤、青、緑に変わっていく。
そして再び椅子に腰掛け、「白い虹」を。とにかく最後まで滑らかに鍵盤の上を流れていく指が奏でる音に、おそらく20分ほどの持ち時間の間、息を飲んで動けずに聴いていた。凄い。まさか今年の最後にppが体験できるなんて。
 
演奏が終わると、凄かったわね…!と、心持ち丁寧に出てきた(ように見えた)綾柳さん。向けられたマイクに、若干お疲れ気味に、息を切らしながら答える純くん。余談だけど自分も突然ものすごい空腹を感じてびっくりした。急にめちゃくちゃに集中して対峙してしたからだろうなあ。
「今日はお父さんお母さんもいらしてるんですか?」と聞かれ「はい!」と客席に手を振っていたのもなんかぐっときた。けどそんなこんなで、あなたはこれから…の質問にはどう答えていたか忘れてしまったのが心残り。ここだったか曖昧だけど、「名前を変えてもいいんじゃない?あべの…あべのハルカスとか!」って言われてたようなw
 
そしてここで、エントリーしていた全てのミュージシャンが呼び込まれる。と、ゾロゾロと出てくる8人。8人ちゃんといる!w でその中に、某マー坊さんの格好(『一番』と縦に書かれた赤いTシャツをズボンにインして、鉢巻きとカツラも装着してる)のJメンさん!!w「沖縄代表の比嘉くん」て呼ばれてたと思うんだけど名前は違ったかもしれない。◯◯みたいとしきりに言われてたんだけどネタがわからなかった…w
ここで審査結果の発表。流れるドラムロール、グルグルする照明(細かい…)。
「審査員特別賞は…中国・四国地区代表!奥田民生くん!」カッと照明がつき、口をパカーンと開けてびっくり!!の顔で自分の右隣に並ぶ純くんを見る奥田くん。それに応えて?小さく拍手してあげる純くん。運命の出会いや!これ後々インタビューで「初めて会った時のお互いの印象は?」とかって聞かれて披露されるエピソードや!!(アイドルあるある)
スーツを着たスタッフさんが盾を持ってきて、綾柳さんから受け取る奥田くん。
「準優勝は…関東地区代表!斎藤太くん!」びっくりの太くん。今度は小さめのトロフィーを渡しながら「準優勝って一番もらっても嬉しくないのよね」と綾柳さん。辛辣w
「そして最優秀賞は!」流れるドラムロール、胸の前で両手を組んで祈る純くん。この時点でかわいすぎて優勝。「東北地区代表!阿部純くん!」長くて綺麗な指を真っ直ぐ伸ばした両手で口を覆って"うそー!"みたいなリアクションの純くん。育ちが良い。優勝。太くんのよりひと回り大きいトロフィーを受け取り、「応援してくれたお友達(?)に一言」とマイクを向けられた純くん、右手を高々と挙げて「やったぜ!!」最強かわいい。一生推す。
受賞した3人が並ぶと、確かここで(結果発表の前だったかもしれない…)綾柳さんが「旅する芸能事務所、ジャーニーズ事務所の社長、ジャーニー多喜川さん!」を呼び込む。と、ぷるぷる震えながらよたよたと歩いてきたジャーニーさんにどよめく会場。だって、誰にとは言わないけどそっくりなんだもんwwwわたしもちゃんとしたしゃべり方知らないけど似てるんだもんwww中の人は星屑さん。詳しい風貌は翔やんかあべどんさんのインスタをご参照いただきたいのだけど、とにかくあの感じで「YOUかわいい顔してるね」とやたらと太くんに絡むジャーニーさん。やめ…ww
どうやら受賞した3人はデビューが決まったらしい。「1人はギター、2人はピアノで、それぞれ個性がありますね」的に綾柳さんに紹介されると突然「君たち3人をアイドルにする!!」と宣言するジャーニーさん。「えええー!?」暗転する会場。
「ここで10分間の休憩に入ります。しばしご歓談ください」との綾柳さんのアナウンス。
 
で、バラバラとお客さんがトイレに行くなどする中、突然モニターに映像が。
「ヨッチでぃ〜す!!」突然のヨッチ。しかも外ロケ。「今から会場に向かいまぁ〜す!!」そして消える映像。
そして映像は休憩(というか転換、股旅セットとピアノセットと司会の台が全てはけられて、手前に2個置かれるプロンプターと思われる大きなモニターw)中、途切れ途切れに現れる。
まず始めに「着きましたぁ!」と指差した先には「ZEPP NAMBA」の看板。いや行ったんか。「ゼップでぇーす!間違えました!!」バンに乗り込むヨッチさん(ここでシートに座るんだけど、なぜか真顔で膝を直角にし手を揃えて腿の上に置いてスン…とした顔でちまっと座ってる様が可愛くて可笑しかったwスイッチ切っちゃったアイドルw)。
「着きましたぁ!」と降り立ったのは「リッツでーす!!」いやリッツカールトン。あのホテルの前であの格好を…w「間違えましたぁ!」またもやバンに乗り込むヨッチさん。
そしてようやく、摂津市民ホールの入口に止まるバン。と、その横から赤いママチャリにまたがり両脚を開いて爆走してくるヨッチさんww(※入り口手前が下り坂になってたのでとても危なかった/(^o^)\) いや車乗ってなかったんかい。自転車を降りて駐め、「あっちですかぁ!?こっちですかぁ!?」と指差し、清水温泉の清水さん(だったよね?)に案内されw会場に入るヨッチさん。ここで映像はおしまい。
 
 
明るくなった舞台、モニターには「むねきんトリオ デビューライブ FirstKiss」の文字。ちなみにFirstKissの文字は筆記体のような、斜めになったピンク?のネオンみたいなフォント。80年代…!!
綾柳さんの呼び込みだったかで舞台に現れる3人とジャーニーさん。と、カツラと衣装(確かポスターみたいな白のやつではなかったか…)、素目な3人。自己紹介してください!と言われるも、自分の名前が曖昧すぎて早くもプロンプターを覗き込む。「寝村ナイ男です、ナイちんです」確か自分で言えてた最年長。「むだばら…」「む"たはら"」「パシ…」「パシ彦!横浜!」とジャーニーさんにささやき女将されまくりの末っ子。そして「近藤ヨチ彦でぇーす!(←光のソウルをウルトラと言っちゃう並のアレ)」と盛大に間違え、「今日はメガネをしてないので見えないんでぇす」と眉間にシワを寄せながらプロンプターを覗き込むも「僕たちはいきんトリオでぇーす!」と口走ってナイちんにぼそりと「むねきん…」と訂正されるセンター。大丈夫かこのアイドル。
「方言は直してきました」「この2人は山形と広島だもんねw」という会話も。「僕が指導しました」というパシちゃんが「大丈夫か?」と聞くと「大丈夫だぁ」と志村けん風に訛りで返すヨッチさん。だいぶ大丈夫じゃない。
 
何はともあれデビューライブ、ということで用意してきまーす!とはけていく3人。
 
ここで綾柳さんとジャーニーさんがトークでつなぐ。
「皆さんクリスマスですよ!」と話しつつ、恐らく危ない橋どころか川に落ちまくりなネタを連発する2人。書いて大丈夫なのは帝国劇場とか日生劇場とか新橋演舞場とかくらいか。ジャーニーさんが繰り出したネタに綾柳さんが「お前それ細かすぎて伝わらねえよ!w」とつっこむ場面もw「マックあるよ」が面白すぎて大笑いしてしまった。
準備ができたかチラチラと下手袖を気にしつつ「実はこの繋ぎのトークが一番緊張する」と2人。「この(リサイタルの)打ち合わせの時、民生さんにマジトーンで『ふざけすぎ』と言われてめちゃくちゃヘコんだ…w」という綾柳さん、いや翔やん。「それ見てて俺も何も言えなくて、さすがに一緒に(朝の)7時まで飲んだw」と苦笑いの星屑さんwこのお2人も盟友って感じでなんか素敵だなあと思う。字が小さくて見えないって言うからプロンプター置いたのにそれでも見えないって!と愚痴、いや、反省会?してたのはここでだったかしらw
準備ができました!との合図を受け(確かこの時点でもう百が如く黒パーカーになってたJメンさんw)、「我々はホッとしています!w」と言いつつはけていくお2人。
 
 
そこからはもう怒涛のステージが展開されるのでした…。
セトリは翔やんのツイートからもお借りしています。
 
・パラダイスダイナシティ銀座
実はこの曲の記憶がほとんどない。ようこそ〜ここへ〜のメロディでとーどーかないー!と歌ってた記憶しかない。それほど衝撃的だった、何ってお三方の風貌が。
詳しいのは公式インスタ(に、載せるんかい!!と思ったけど)を見てほしい。髪型は少年隊、衣装は聖闘士星矢みたいな、ごめんわたしもさすがにリアタイじゃないからわかんないんだけど、とにかく感じる演出家翔やんの「本気(とかいてマジと読む)」。
そして踊りながら歌う3人。やばい。ちゃんと踊っている、アイドルしている。思わずキャアアアアア!!!と絶叫し手を振っていた。
ちなみに舞台のモニターには一つ一つピンクの丸ゴシック体で曲タイトルが出て、歌詞も黒バックに白文字の字幕が出てくる。リアルタイムの映像は出なかったから、やっぱり今日限りのアレなのかもしれない…。
 
・PTA〜仮面父母会〜
もうあのイントロです。てれれれてれれれ、じゃん!じゃん!のアレ。
おーどるーよーおーどるーよーティア!と、もちろんマイク持ってない左手を挙げる振り付けで歌い踊る3人。やばい。健くんの才能マジでやばい。多分基本的にメロディが原曲(原曲…?)、歌詞をユニコーンの曲でマッシュアップしてるんだけど、すごいマッチしてる…(ダジャレではないです…)。
 
・欲望びんびん物語
タイトル出ただけで大歓声。ヨッチとパシちゃんははけ、ナイちんがソロで歌う。もちろんあのステップもついている。これナイちんの持ち歌になったんだ…w
とにかく笑った。3年前を思い出した。変わらぬあの絶妙な音程。さっきピアノとモジュラーシンセで聴いた曲と同じとは思えない(※同じではない)wでも同じ曲でアレンジだけでここまで違う表現ができるってすごい。音楽って幅広い(もちろん当日はそんなこと考える暇もなかった)。そしてよく考えたら、他はユニコーン曲とのマッシュアップなのに、これだけ阿部さんソロ曲だったのねw
 
・Wonderful Days
イントロを聴いた瞬間、頭が真っ白になった。ありえない。ありえない、いやもう二度と生でもテレビでも聴けないだろうと思っている、けれどそれこそ10年ほど前までは何度繰り返して聴いていたかわからない、あの曲。
歌うはパシちゃん。オンリーユー!きーみがー!のメロディで、すーばーらーしーいーひーびーだ、と歌い上げてくれる。タンクトップに短パンのバックダンサーの男の子2人は、下手の子が茶色のベース、上手の子が黒いレスポールを持っている。もちろん弾いてはいないんだけど、そういえばパシちゃんもメンカラ赤だったわ、いや、芸が細かすぎだろ…!と奥歯を噛みしめて号泣を我慢した。まさか、こんなところで、こんな。
 
ここからちょっと余談。長い。
わたしが人生で初めて好きになった"バンド"は、何を隠そう、ネタ元の彼らだった。
一応あの事務所ではあるしファンになるきっかけはドラマではあったけど、曲が、音が、カッコよくてアルバムも繰り返し聴いていて、ライブはうちわやペンラなんか振らず(そもそも途中から売ってなかったのもあるけど)、Tシャツ着て首にタオル巻いて拳をあげつつジャンプしながら観てた。つまりわたしにとってロックバンドの原体験であり、ロックの楽しさを一番最初に教えてくれたのはあのひとたち。
ここ数年はライトファンになってしまっていたのだけど、それでもやっぱり彼らが音楽活動をぱったり止めることになってしまったのは、だから本当につらかった。
彼に戻ってきてほしいという思いは今は全くないけど(恨んでるとかではなく…個人の意見だけど、被害者がいる時点でその人の意向を無視して公共の場に再び、というのはナシだと思う。とにかく治療と生きることを続けて、ちゃんと仲間たちの成り行きと自分がそこに及ぼした影響は責任を持って見続けてほしいけど、それはわたしのわがまま)、彼らが楽器を持たないことで、わたしの好きだった音楽が聴けなくなってしまったことが(そして、多少なりとも演奏することに楽しさをおぼえているはずの彼らが、それをできないことも)とても悲しかった。
歌の途中、服部本の中であべどんさんが、曲があまりに普通だとアルバムの中でボツになってしまう、それだと曲がかわいそう、というようなことを仰っていたのを思い出した。以下に挙げる曲の中にも、今はオリジナルメンバーでの披露はできない状況にあるものもある。だけど、この言い方が合っているかはわからないけど、曲自体に罪はなくて、なおかつお蔵入りになるにはもったいない、素敵な音楽なのだ。
だから、こんなニッチなステージではあるけれど、そうやって愛情をもってほのかに光を当ててくれたのは、とても嬉しかった。本当にありがとう、翔やん
 
・背キーン・ムキッ!
続く曲のイントロとともに、なんと下手袖からあの赤い自転車を爆走させ舞台へ入ってくるヨッチ。真ん中で止めるんだけど、重たいのかスタンドがなかなか止まらない。ケガしなかったろうか(過保護)。
ようやく駐めて歌うは、はいきーん!ムキッ!腹筋を俺にくれー! 字幕を追っていると、海辺でビールケースを運ぶ仕事をしていて背筋は鍛えられたけど腹筋がないからバランス悪い、腹筋をくれ!みたいなストーリー。理に適ってるけど、どんな!?ww
 
・チンチロリンになにげなく
ついに来たあああ!まんをじしてのこの曲!3年前の中継ではワンフレーズで途切れてしまった伝説の曲!!ヨッチ(まっち、だったかも…)の外れでブルース〜な〜にげなく、夢にまで見たスニーカー、青い靴〜♪ ぎんぎらぎんじゃなくて青なのかw
曲のシメは、あべっちゅベイビーよしっちゅベイビーはるっちゅベイビー!あべどん!だった。いやもう今度からこれで歌うわ。カウコンはリアタイしなくなって久しいけど。すごい、推しの代表曲をフルコーラスで聴いてしまった…!(その割に歌詞全く覚えてない)と大感動。だって3年越しだもの。
 
・ばいしくるシーフ
これもイントロで叫んだ。あのメロウなギターのフレーズですよ。ナイちんとパシちゃんも出てきて、3人で真ん中で右手を重ね合わせ(ナイちんはその下のヨッチの手を軽く握ってた)、ぐるぐる。曲の途中で反対側の手を重ねてぐるぐる。再現度…!!(本家は手は重ねてないと思うけどw) てか本当に全ての曲、振り付けをちゃんと覚えていてすごい。どこかを見て確認とかしてないもん。
歌詞とメロディがあまりに合いすぎてて覚えてないけどw、君を守るため〜のとこが、髪を切りすぎた君は〜になってたような。原曲のようなあべた…ヨッチ&ナイちんのハーモニーが素敵だった。思えばもう一方wの原曲も、ユニゾンとコーラスが良いよね。
 
・How many マジ顔
イントロですぐにはピンと来なかったんだけどそんなのすぐ吹き飛んだ。パシちゃん、やや下手側のモニターに片足をかけ(確か)、ラップを披露!!!やばい!!!ギリギリどころじゃねえよ!!!かっこいいわ!!!
ペケペケって聴こえたからそのマッシュアップなんだろうけどラップの衝撃で内容を全て忘れてしまった。でもメロディはいつも生きていたいアレだったのは覚えてるw
 
Official髭母inism 〜ヒゲボン〜
なんとここで3人それぞれがミルキーなメンカラのフラッグを取り出して、ああ〜男には〜と左右に振りながら歌う!多分それぞれの?顔のイラストが白抜きで描かれてたような。かわいいー!売ってくれればよかったのに!!ごめんなさいだけどこれだけは元ネタがわからんやった…若い子のかな…?(※わたしにとっての『若い子』は山風さん以降を指します)(違ったらごめんなさい…て誰に謝ってるのか)
確かこの曲の最後に、ヨッチがモニターに足をかけ、両手で大きく投げキッス!!黄色い声が怒号のように響く場内。すごい!!さすがのセンターっぷり!!!
 
そんなこんなで、デビューリサイタルは大成功!(とはいえややお疲れ気味の3人w) 改めて出てきた綾柳さんも喜んでいらっしゃる。
「ちょっと待ったー!!」
と、そこへ響く男の声。
振り返ると客席に、先ほどユニコンに代表として出ていた毛利くん(関西地区代表)(黒い長髪でチェックのネルシャツにデニムのベスト姿)が。
「こんなの出来レースだ!!」どうやら審査結果に不満がある様子。そのまま舞台に上がる毛利くん。「しねぇ〜!!」と、取り出したのはまさかの包丁(もちろん、わかりやすくニセモノw)。
そこからの舞台の様子はまるでスローモーションのように見え…いや、全員がスローモーションで小芝居しとるがなww一番下手側にいたパシちゃんはすんでのところで刃を避ける。続くナイちんはもみ合うように毛利くんの腕を掴む。刃はヨッチに向けられるも、逃げられないヨッチ。と、その前に果敢にも立ちはだかる綾柳さん。なんと、刃はナイちんの手をのせたまま、綾柳さんの胸をぐさりとひと突き!
スローモーションから一転、時間の流れは元通りになり、逃げる毛利くん、倒れ込む綾柳さん、駆け寄るむねきんトリオ、「俺が刺した…?俺が刺した…??w」と素で焦るナイちんw
息も絶え絶えの綾柳さん、それでも「だめよ、あなた達の仕事はみんなを笑顔にすることでしょう…?私を越えて行きなさい…」と3人を励ます。「わかりました!!」文字通り、倒れている綾柳さんを跨ぎ越えてww舞台の前に出て並ぶパシちゃん、ヨッチ、ナイちん。
パトランプの回るヘルメットに白衣姿のスタッフさんにより、担架で綾柳さんが運ばれていく中、最後の曲が始まる…!!
 
・君に胸キン
ここでYMOてwwwあの事務所じゃないんかいww先程の大きなモジュラーシンセに、そのうちYMOみたいになるのかしら!とワクワクしていたのに、先になぞるのはこっちなのかw
きーみーにー胸キン(キンっ!)という合いの手(キンっ!)に合わせて、舞台手前に乗り出して、サイドチェストのように片肘を突き出す3人。非常にかわいい。それ以外の部分では腰を左右に軽く振ってるんだけど、ナイちんは流石のキレ(チラーRhythmのやつみたいなw)。時々方向を間違えて腰がぶつかっちゃうパシちゃんとヨッチw
歌詞は焼肉の種類が並べ立てられたりなんだりで、倶知安のアレを思い出す。君に胸キン(キンっ!) 肉のハナマサ〜♪ が一番ウケてたし面白すぎた。キンっ!で指差しちゃった。
途中で、ようていざーん!倶知安いちの高さー!の元ネタ(わかりづらい)のメロディで、君のー!むねきんをみせろー!と、2フレーズほど別の曲、いや、フレーズを挟みw、また胸キンに戻 ってシメ。
確かここでもヨッチが両手投げキッス。ギャアアア!!!もう一生推す!!!
 
そんなこんなで本当に無事(じゃないだろ)デビューリサイタルは終了。暗くなる場内に綾柳さんのナレーションが響く。
むねきんトリオは1986年結成、一世を風靡したものの翌1987年に解散。ええっ!?と思ったところで、メンバーそれぞれの"その先"の紹介が。以下、ニュアンスでその流れを。
 
ナイちんこと奥田民生(ここでみんな、1人ずつのむねきんアー写が出る)。解散後はバンド・ユニコーンに加入(パニアタの時の、4人が上はタキシード下はトランクスの画像)。
解散後はソロでも活躍するかたわら(『愛のために』ともう一枚の8cmシングルの画像)、井上陽水とも共演、PUFFYなどのプロデュースでも才能を発揮(PUFFYちゃんの画像)。
その後ユニコーンを再結成し(UC100Wのアー写)、現在はカーリングシトーンズ(アー写)、地球三兄弟などマルチに活動。
 
パシちゃんこと斎藤太。解散後は保谷市に帰り(そうなのかww)、ピアニストとして活動を再開。
サポートミュージシャンとしても、奥田民生GLAY、ゆずなど(それ以外にも、一つ一つ読み上げられたアーティスト名が、ピアノを弾いてる横顔のアー写の上に字幕で出てくる)、幅広いアーティストからの信頼も厚い。
ジャーニー多喜川社長から一番「YOU」と呼ばれていたため、本名に「有」をつけて「斎藤有太」とした(これもアー写に字幕が出る)(そこ!?と、ものすごいアハ体験wだからあんな絡んでたのかw)。
 
ヨッチこと阿部純。解散後はユニコーンに加入(93年の、赤バックの5人の写真)、ユニコーンを名実ともに日本を代表するロックバンドへと成長させる。
解散後はソロでも活動する傍ら(ここで風花雪月の時の、タバコ咥えてるアー写が!!)、氣志團などのアーティストのプロデュースも行う(もちろん氣志團ちゃんの画像)。
その後ユニコーンを再結成(やっさんのとジミヘンのアー写)。映画音楽なども手がける(南極料理人のポスターの画像!!)。
(ここで突然、県民会館の番組チラシにも使われてるモノクロアー写)占い師から「あなたは糸より金」と言われたため、純→鈍に改名(これも字幕が出る)、現在はABEDONとしている(ABEDONはちゃんとロゴのやつ)(アハ体験その2wだから純だったのかー!!)。
 
ナレーションはさらに、解散から数十年経ち、今夜久しぶりにむねきんトリオが再結成することを告げる。すごい!そこに繋がるんだ!わたし達は時を超えて、デビューリサイタルと再結成コンサートを同時に観に来ていたのか!!!
舞台の上には、下手から作業椅子とアコギ、こちらを向いたピアノ用の背もたれのある椅子、そしてグランドピアノが用意されている。
 
舞台が明るくなると、3人が再び登場。50代になってる!(いつもと同じです)
あべどんさんはあのまばゆい(浅草で買ったw)白ジャケットへお召し替え。お2人も衣装変わってた気がするけど思い出せないごめんなさい…。
ナイちんが作業椅子、ヨッチが真ん中の椅子、パシちゃんがピアノにつく。「久しぶりだなあべどん…いやヨッチ」とナイちん。ユニコーン再結成したんじゃないのか。いや"ヨッチ"に会うのは久しぶり、ということなのか。
「最後までキャラが作れなかったよ…」とやや反省気味のナイちんを「いいんだよ!」と励ますヨッチさん。優しい。やはり運命の出会いだったのでは(どさくさ)。
「今日はなんの日か知ってるかい?」と、伊達男ヨッチさん。「クリスマスだから、きよっちこの夜でも歌おうかな!」
「終われるのか…?」と不安げなナイちんを「終われるよぉ!もうずいぶん(長時間w)やってるもん!」と励ますヨッチさん。やはり運命の(略)。
 
静かに始まる演奏。皆が聞き慣れているであろうあのピアノのフレーズに、ゆっくり重なる優しいアコギ。
「き〜よっち〜♪ こ〜の夜〜♪」ここでまさかのヨッチ声歌唱。クスクス笑いが起きる会場。それでもだんだんといつもの"ABEDON"の歌声になってって、歌い上げてくれる。
そしてそこに、確か「すくいのみこは」か「まぶねのなかに」から民生さんのコーラスがすうっと入ってきたのだけど、それがもう白眉だった。前から思っていたけれど、特に先週の百が如く大阪2daysで、阿部民の声は本当に"ふたつでひとつ"なのだなあと思ったわたくし。たとえどちらかまたは両方に普段と同等のパワーがなくても、ふたつ合わさると倍音のような響きをもって美しく力強い声になるんだなあ、と、ここでも実感。今回は曲が曲なので、2人ともやさしい歌い方なのだけど、それによって本当に賛美歌のような荘厳な美しい響きが生まれていて、なおかつ有太さんの声も合わさってよりあたたかな歌になっている。
キラキラしつつも落ち着いたピアノと、甘やかに爪弾かれるアコギの音が歌声を支えていて、体験したことはないけれど本当に教会で迎える夜のような、静かであたたかでやわらかでずっと浸っていたいようなクリスマスが、そこにはあった。
 
一番を2回繰り返して歌って(最後の歌詞は『いとやすく』だった)、演奏は終了。立ち上がってお辞儀の3人。
と、あべどんさんが下手袖に声をかけると、優雅にお辞儀をしながら綾柳さん再登場。肩を組んで「綾柳さん生きてたー!!」と笑顔のあべどんさん。そういうところ、本当に好きです。
 
全員がはけたあとも鳴り止まないアンコールの拍手、時刻は予定より少し早い21時。けれど凄い勢いで撤収が始まり、余韻を胸に会場を後にした。
思えば、OTマークのついてる椅子を含めた股旅セットと、モジュラーシンセとグランドピアノのppセットが並んでるのって、めちゃくちゃ貴重なんじゃないか。ソロ同士で共演って、それこそ再始動前のイベントとか以来だよね…?なんだかドキドキしてしまった。
 
モタモタしていたら会場を出て行くバンに乗り込むモコモコさんを目撃してしまい、なおかつ別のバンを運転するヨッシーさんを見かけたので勢いで(お礼の意味も込めて)手を振ったら軽く振り返していただき、とてもあたたかな気持ちで帰路(※明日もあるのでホテル)についたのでした。
 
 
いやあ思い出すだに要素が多すぎる。頭の中身がスッカスカで、でもとにかく楽しかった、いいものを観せてもらったという思いでいっぱいです。
ヨッチに関しては、ご本人というよりはどちらかというと周囲の気に入りっぷりと盛り上がりが凄いのでw、どうなるのかしら…と思っていたのだけど、ちゃんとアイドルとしてセンターを張っている!というのが素晴らしかったなあと。お客さんを盛り上げる肝を知っている、そしてさすがのパフォーマンス力。脱帽でした。
それに、こんなに忙しい時期なのに、3人ともダンスも歌も練習したんだなあ(なんと言っても、プロンプターがよく見えないのにあんなに歌えていたし!)。有太さんなんて「みみそうじをしよう」あたりからだいぶじわじわと巻き込まれてるんじゃ…wと思うのだけど、こういうことにも全力で当たってくれるの、凄いです。楽しませてくださって、ありがとうございました。
そして改めて、3人と、そしてそのお弟子さん達の、音楽的なポテンシャルの高さも感じました。そして愛も。ふざけ過ぎたんじゃなくて愛を込め過ぎたんだよね、きっとwマッシュアップされた楽曲の数々はもちろん、あの解散後の紹介ムービーからMCの一つ一つに至るまで、先輩とあの事務所へのリスペクトが溢れていて、アベストテンでも氣志團万博でもそうだったけれど、やっぱり熱意がたっぷりこめられたものは胸を打つのだなあと思いました。多幸感半端ない。
来年がどんな年になるのか、当たり前だけど想像はつかない、けれどジャーニーさんの名言「YOUがCANと思えばDO」と、この素敵なクリスマスの思い出を胸に、年を越そうと思いました。
願わくばまたこの3人の共演が観たいなあ。アイドルもよかったけれど、50代の3人のガチでもガッツリ。あべどんさんのモジュラーシンセがタンスのようになった頃にでもいいのでwぜひ。密かな夢です。

ありがとう 山形県県民会館

2019年11月29・30日。
山形県県民会館、現やまぎんホール。そこで行われた最後の公演を見届けてきました。
演者はユニコーン
百が如くツアー後半、既に何公演か参加させていただいていましたが、この2日間はとにかく特別で、なんとも言えない雰囲気がありました。とてもあたたかくて、晴れやかで、胸がいっぱいになってしまって、いまだに余韻の中にいます。
とはいえ、メモ書きも形にしないと何が何だかわからなくなってしまうと思うので、そして今この胸に渦巻く感情も書き記しておきたい(ウザい)ので、なんとかかんとか文章にして吐き出してみました。
しかしレポというには今回普段に輪をかけてあまりにも記憶が曖昧なので(なんせ(´ё`)阿部B!呼びに気がつかなかったくらい)、その辺りはニュアンスでお読みください。
で、言うまでもなく、ネタバレです。
 
 
1日目は雪もちらついた山形市内。
ふだん冬期はビニールシートをかけているという噴水からこれでもかと水が湧き出ていて、その横には立ち見席を求める方々が長い列をつくっていて、会館の姿を写真に収めるお客さん達を地元のテレビカメラが追っている。もうそれだけで胸がぐっとつまって泣きそうになる。
会館の中に入るのは個人的にも実に5年ぶり。土門拳美術館の名前が刻まれている仏像のアップの写真が飾られていて、思わず心の中で手を合わせてしまう。壁に施された美術作品なんかはどうするのだろうとぼんやり思いつつ、古き良き、といった趣の真っ赤な椅子に腰かけて開演を待っていた。
 
 
程なくして場内が暗くなり、SEが流れてくる。
賛美歌のような、幾重にもなる歌声に合わせて、宇宙船を模した舞台セットから一つ一つ放たれる青い灯。それがなんだか、長い歴史を重ねて壁にできた隙間から、中で生まれた力による新しい光が漏れ出てきているように見えて、普段よりさらにぐっときてしまう。
SEの歌声に合わせて、メンバーが登場。あべどんさんは2日間とも、キーボードブースに入ると後ろにスタンバイしているヨッシーさんとハイタッチ(もしくは会話)を交わし、下手袖に向けて右腕を縦に挙げてみせる。2日目は民生さんも片手を挙げながら入場していたような。
あべどんさん、椅子に座ってスタンバイ。本格的に始まる「M&W」。
この演奏が素晴らしかった。素人なのでどこがどうとは言えないし、フィルターがかかっていると言われればそうかもしれない。でも、"消えない愛がここにある"と美しく歌い上げる声が、ここでの思い出ーー2日目のライブ前にラジオで話していらしたような、家族を含めた小さい頃からのそれが、あべどんさんだけでなくこの地で育ってきたたくさんの人のそれが、時が経ってもここにある、と言っているように聴こえて、涙が出た。
ふわりと鍵盤から手を離し、ブースを降りるあべどんさん。民生さんの静かな「ワン、ツー、スリー、フォー」が響くほどの静寂から始まる「すばらしい日々」。そして10年前にも、そしておそらく解散前にも演奏された「おかしな2人」で会場は既にヒートアップ。
 
 
ここでMC。
1日目は民生さんが、最後なんでね、思い出がいっぱいありますけども…噛み締めていきましょう、的な言葉を。そしてテッシーから順に紹介するんだけど、あべどんさんにはそちらを手で指して「そして!w…その辺から来た男!wあべどん!」と。
テッシーが被せ気味に「奥田民生!」と紹介すると「俺は広島から来た男w」とぼそり。
2日目は「そして!…ここ、山形県民会館を建てた男!」と紹介し、顔を見合わせて笑う阿部民。「すごいなあw」「生まれる前から建ててたんすねw」などと微笑ましいやりとり。「柿落としはできるけど、最後ってのはなかなかできない」とあべどんさんが話すと「そうですか?」と謎の自信?wをのぞかせる民生さん。なんだかそのやりとりが、友達っぽくて、そしてこの会館を昔から知ってる仲間のようで(その通りなんだけど)、とてもよかった。
 
わたしの席が上手寄りだったからかもしれないけど、「That's life」のコーラスがめちゃくちゃよく聴こえるえびさん。「Goodtimeバレンタイン」では1人上手花道に行きすぎて「自由か!w」とツッコまれるえびさん。
さらに「Lake Pracid Blue」では「山形生まれのお前に夢中さ ブラックアイズの〜」と替え歌したり、最後の「プレベー!」を連呼するところを「山形ー!」「サイコー!」と叫ぶえびさん。ご当地替え歌、今回はあんまり遭遇してなかったからなんだか嬉しかった。この3曲はもうえびさんコーナーだね…w
 
「7th Ave.」ではタンバリンを叩くあべどんさんを、「でんでん」では板さんを弾くあべどんさんを見つめてニコニコなかにさん。
特に板さんを奏でるとこは毎回毎回新鮮な感じというか、「すごいのう!板からかような音が!」みたいな反応をしてるようだったり、曲のシメも板さんの音に委ねようとしてたり、見てて微笑ましくなる。それに応えてあべどんさんもうなずいてたりするのもステキ。
 
 
そして服部メドレーの「ジゴロ」。
1日目はSEが終わったところでおもむろに「お〜らは〜ズ〜ゴロ〜」と山形弁?wで歌い上げる民生さん。わあ!昔阿部民がTV番組でやってたって話に聞く山形弁講座のやつや!と感動していたら、最後の「数知れず〜」のところは「おしどりミルクケーキ〜〜〜♪」と替え歌。わああそれもやってたってやつや!歌い上げたら、あべどんさんを振り返って両手指差しする民生さんw捧げたのか?w
2日目はSE始まる前からあべどんさんと顔を見合わせてアイコンタクトをとっていた民生さん。そうかと思えば舞台手前で「おらのふるさと山形の〜」と、おしどりミルクケーキのCMソングをフルで歌いあげる。「いろよす!あじよす!かおりよす!」って本当に言ってた!!w 途中からお客さんたちの手拍子と合唱も加わり、あべどんさんも後ろでニコーッと笑ってから歌っていて、最後は大拍手。
例えばサービスで入れ込むご当地ネタと違って、本当に地元のひと(そして、それを30年近く前に教わっていたひと)が、山形らしいものとして入れ込んでいるのが良かったなあと。そしてそれがちゃんと地元のお客さんに伝わって喜ばれてる感じがして、なんとも心温まる空間だった。ジゴロはかけらもなくなってたけどw
 
 
同じくメドレーの「人生は上々だ」。
1日目、下手側の花道に行くのに、えびさんを連れて行くあべどんさん。指差して「これえびちゃん!」と紹介wするが早いが、えびさんを1人残して客席に降りるあべどんさん、堂々と客席中央、横にのびる通路を通過。それを見ながら「今はスイスイ行くな…昔はあんなスムーズじゃなかったのに…」と解説のおくだたみおさんw
上手側の花道まで無事?到着したあべどんさん、反対側のえびさんに呼びかけ、「じゃーんけーんぽん!」とじゃんけんを始めるw戸惑いつつも素晴らしい反射神経で手を出したえびさんもあべどんさんもチョキ、もう一度やったらえびさんがチョキ、あべどんさんがグー。「やーい!!泣けぇ!w」とあべどんさんが囃し立てると、ちゃんと顔に手を当てて泣き真似してくれるえびさんw あべどんさん「なにこれ?w」さあ…?でも可愛いのは確かですw
そして確かここじゃなかったかと思うけど、「最後をできるということで…限りない喜びを…この胸のときめきを…あなたに…」と突然黒い方が降臨するあべどんさんw途中から民生さんも一緒に歌ってたw
それから、多分まだ発表されてない何かについてテッシーが何やら触れて、それに反応し「え?テッシー言ってみてくださいよ」と促すあべどんさん。「あべどんプレゼンツの、ありがとう山形県県民会館…」みたいに言うテッシー。ん?このライブは"ありがとう山形県県民会館プレゼンツ"じゃない??と思ってたら、「そうなんだ!ここは最後なんだ!」と話題を逸らす?あべどんさん。終演後に理解したけど、日テレプラスの番組のことだったのねw
 
そして2日目は、テッシーを上手花道まで連れてったと思ったら、指示して客席中央の通路を1往復させるあべどんさん。「誰のコーナー!?」とびっくりする民生さん、「あーおもしれっw」なあべどんさんwでも息も絶え絶えに舞台に戻ってきたテッシーに、すぐはしりつーするのではなく、息が切れてるよ?大丈夫?みたいに声をかけてあげてから曲に戻るのが、優しかったのでした。
 
 
「BLUES」は、特に2日目でかにさんがものすごい勢いで替え歌。「それがしも、山形県県民会館もやってこれました」とか、他にもたくさん山形を盛り込んで語りあげてた。字余りでリズム外れたとこで一瞬フリーズ?なさってたのもかわいかったw
抹茶アイス色(他に言い方はないのか)のフライングVをきゅいーんと鳴らすあべどんさんの向かいに座って真似っこエアギターするのもステキ。
 
 
「4EAE」からラストへ雪崩れ込む流れは、もう何度観ても圧巻。
「4EAE」はスクリーンの映像があべどんさんの手元から始まるのだけど、それに息を飲んだ。ピアノに置かれた指から静かなエネルギーがみなぎっているように見えたのだ。タッチに過剰な強さや激しさはなく、どこまでも滑らかにしなやかに美しい旋律を奏でているけれど、なぜだか演奏が始まる一呼吸前、指が鍵盤に置かれる瞬間からわかる。気持ちが入っている、そんな指先。アウトロに入るところから、かにさんが右手をゆっくりスーッと空へ向けて高々と挙げるのも、胸がぎゅっとなる。
そこからの「55」。素晴らしかった。正直なことを言うと、11月に入ったくらいから、ちょっと民生さんの喉の調子というか、お疲れなのかとか、とにかく小さいことに肝を冷やしがちなわたしはずっと心配だったのだけど、この2日間は調子を取り戻していたように聴こえてちょっとだけホッとした。シャウトも高音の伸びもとても良くて、グルーヴに身をまかせながら猛り狂うように弾くソロも戻ってきていて、わあ…!と思った。やっぱり、この2日間に向けての気合が入っていたのかしら、わからないけれど。
「半世紀少年」、1日目は大きな旗を演奏中のあべどんさんにひら〜っとかぶせていく(しかも『しあわせ〜♪』って歌うとこでw)民生さん。「チラーRhythm」のイントロでは両肘をわきわきさせてキーボードブースを見ながら下でダンスw 1日目は気づいたあべどんさんが演奏中なのに一瞬わきっと肘を動かしてあげてた。2日目は踊ってたらブース下のアンプ用マイクにぶつかっちゃって苦笑しながら位置を直すのだったw「やまがた〜〜〜!!!!!」のシャウトも凄くて、テンションめちゃくちゃ上がった。ちなみに「ちらちら〜」のところを「いもにか〜い」とかにさんが替え歌してたら、あべどんさんがニコニコしてたようなw
 
 
そして「Boys&Girls」。あべどんさんのシャウトでしゅぱーんと放たれ、キラキラと降ってくる分身。それもこれが最後なのだな、と思うと、こんなに綺麗なのに泣けてくる。曲終わりは「サンキュー山形愛してるぜー!!」そして「奥田民生ーー!」とシャウト。それに応えるように「あべどーーん!!」と本当にぴったり同じくらいの長さで(!)シャウトする民生さん。「テッシー!えび!川西幸一!」と紹介して曲が終わると、シームレスに「Feel so moon」「ZERO」へ。この流れが素晴らしくかっこいい。FSMのイントロの指揮、オーケストラ全体に向けてするそれのような両手の動かし方が優美。背面両手弾きもお手のもの?になってきたのかしら。ZEROのイントロもちょっとずつアレンジを加えていたりしてて、かっこよかった。
 
 
そしてアンコール。ライブの盛り上がりはもちろん、客席が1段しかないこともあるのか、手拍子が大きく響く。
2日目、ここでブースから降りて、民生さんに顔を近づけてほんの一言何かを伝えたあべどんさん。民生さんもそれだけですぐ了解した様子だったのが印象的。
と、その流れで民生さん用サイドテーブルに手を伸ばし、未開封だった水のボトルをおもむろに開けてごくっと飲むあべどんさん。「のっ…!?w」と一言発したまま、なすすべもなく(?)ブースに戻っていくあべどんさんを目で追う民生さん。おもしろいひとたちだなあ…w
ちなみにどこだったか忘れたけど、両日ともあべどんさんがおもむろにあの長い指でご自分の前髪をざあっ…とかきあげていて、それをなぜかへにゃっとしたお顔で見ていらしたりもなさっていた、なあw
 
 
アンコール、「HELLO」。
「到着、5分2秒前」という歌詞に合わせて、照準が合ったかのように、スーッと弧を描いていた白いライトがカチリと止まる。そしてバックに映し出され、今の演奏とシンクロする2009年からのユニコーンの映像。ツアー後半初日のかつしかで初めて観た時から涙が止まらないのだけど、この2日間は特に…勝手な話だけど、会場の内外でちらほらと耳にした「義っちゃん先生」や、ラジオで話されていたように合唱コンクールなんかで通い詰めていた音楽の先生にも、観ていただきたかった、いやきっと観ていてくれていると思うけれど、そう思ったら胸がぎゅーっと詰まってしまった。それでも走り続けてきた10年を、この会館で、この曲で、振り返ることができて、良かった。
 
 
演奏が終わり、すっと下手へはけるあべどんさん。残ったメンバーは上着を脱いで、ドンチャッチャ!ドンチャッチャ!のSEとともに手拍子。どうでもいいけどツアー前半からQueen要素が引き継がれてるの嬉しい、これだけでもw
 
1日目。いつものミツバチマイクを携えて出てきたあべどんさん、連れているふうせ…ペットの数がいつもより多いw「どんちゃんでーす!とうちゃんです!かあちゃんです!そしてお友達でーす!」と、いつものコーギー、茶色と黒の柴犬に加え、ダルメシアンと緑の恐竜を紹介。それに合わせて民生さんがタッチパッドで犬の声とゴジラみたいな声を出す。コーギーどんちゃんはなぜか紐が取れてしまい、えびさんが抱きかかえていたw
なんせ数が多いので、足元にまとわりつきまくるワンコたちをコラッ!!としていたらタイムアップw でもその前だったかに、「山形では(『よかった』を)『いがったー!』って言うんです!今日はどうでしたかー?」と客席に聞いてくれるあべどんさん。発音の良い\いがったー!!/の大合唱(?)が、とてもあたたかかったなあ。
いつもの通りどんちゃんたちを連れて先にはけるあべどんさん、ピックやらスティックやらを投げ込み退場するメンバー。えびさんはZEROで落っことしたリングライトを、ボーリングみたいに転がして客席に入れてた(曲中だったかもしれないけど…)。そして最後に立ち止まってこちらを振り返り胸をトントン、した手でチュッと投げキッスして去るかにさん。伊達男だ…。
で、ここでいつもなら客電がつくのに、フッ…と暗くなる会場。SEのハッタリに合わせて画面に流れてくるエンドロール、が、左端に寄って小さな文字になっている。
と、その右側に現れたのは、ルパンのジャケットを着て元気にカメラ目線を見せる、約30年前の"阿部B"さん。
歓声、絶叫、客席が混乱と熱狂の渦と化す中、映像はどんどん流れていく。解散前のツアー、阿部義晴40祭(の、楽屋であべどんさんとかにさん民生さんが握手してるところ)、勤労ツアー、Zツアー(航空隊衣装でアーティスト写真を撮影してた場面も)、イーガツアー。ここで行われた公演の映像が順々に流れ、最後には山形県県民会館の外観。そしてメンバーのロゴとともに現れる「ありがとう 山形県県民会館」の文字。
なんてことだ、と思った。なんて愛にあふれた映像なのか。今思い返しても、スマホをスクリーンに構えられる自分の冷静さが信じられないほど、しばらく震えが止まらなかった。とても言い方は悪いけれど、いち地方の小さな会館に、これだけたくさんの大切な"思い出"がある。その事実がなんとも言えず胸に迫ってきて、人目も憚らずわあわあ泣いてしまった。
 
 
そして2日目。
ドンチャッチャ!なリズムにのりながらも、下手袖の様子を伺いまくる民生さん。
しばらくしてあべどんさんは出てきた。そう、客席の一番後ろの扉から!
しーあわせ!しーあわせ!と恒例の掛け声とともに、ギラギラジャケットを着たしあわせ様が、花笠に盛られた紙吹雪を振りまきまくる。ていうかいつもより紙吹雪多くないかw
いつもの如く(と言いつつ、ここでしあわせ様を観るのは実に5年ぶりだ)、PA席にたどり着くあべどんさん。流れ出してしまったSE、なんとそれを自らフェーダーを下げて止める。民生さんが笑いながら「自分で止めた!!w」とお客さん全員の気持ちを代弁wしたところで、PA卓をお立ち台にして高々と片手を上げるあべどんさん。「今日は特別なんだ!」
そこでなんと「館長!!」と呼びかけ、PA席のすぐ下にいらした、県民会館の館長さんを呼ぶ。呼びかけに応えた館長さん、スーツのままあべどんさんとともにPA卓に立つ(その間ずっと、腰のベルトのあたりを掴んでいてあげているJメンさん)。そしてここでなぜか響き渡る\チャンチャン♪/のSE、「すいませんすいません!間違えましたすいません…」と平謝りする民生さんwどうやら別のSEを流そうとして間違えちゃった様子。珍しい。
「35年間頑張ってきたんだ!高橋さん!お疲れ様でした!!」掛け声とともに、客席の真ん中で、笑顔で喝采を浴びる館長さん。新聞とかの記事によると正確には館長でいたのは33年間らしくて、つまり服部がリリースされた頃から、すなわちあべどんさんがバンドに加入して山形で"凱旋公演"をやった頃から、何度もユニコーンをここで迎えていた(そして恐らく、数々のパフォーマンスを寛大に受け入れてくれたw)ということなのでしょうか。もちろん歳はメンバーよりも上ではあるし立場も違うけれど、同志というか戦友と呼んでも良いくらいなのかも…。PA卓の上で堂々とした笑顔を見せていた館長さんに、またぐっと胸が詰まった。
そして、言わば"裏方"の方々にこうしてスポットを当ててわたしたちに存在を知らしめてくれる、お礼や労い、そんな気持ちを向けさせてくれる舞台を、礼儀をもって、押し付けがましくなく、けれど晴れやかに、整えてくれる"しあわせ様"はやっぱりすごいな、と感服しきりだった。
 
館長さんが降りても、あべどんさんはPA卓に残り、話を続ける。昨日夢を見たんだ。俺は風船おじさんみたいに空を飛んでいて、福島の温泉に不時着した。メンバーとはなぜか無線で繋がっていて、すごくいい温泉だからおいでよ!予約するよ!という夢。もう死んでもいいと思った…と、そんなことを語る。本当の話なのかわからないけど、夢占い的には風船で飛ぶ夢は良い夢みたいなので(温泉に行く夢は疲れてる時に見るらしいけど、メンバーも呼んで皆一緒に癒されようとするところが、あべどんさんらしいなあ、なんて)、よかったなあ。まだまだ死んでほしくはないけれど、それほどしあわせな夢だったのかしら。
「今日はその夢を叶えるんだ!」みたいに言ったところで、というかその前からちょっと見えちゃってたけどw、客席後方からどんちゃん登場。浮いてる。風船をいくつも括り付けられて飛んでるw
ふわふわと宙に浮くどんちゃんの紐を持ちながら、しーあわせ!しーあわせ!と紙吹雪を振りまきまくり、舞台へ向かうあべどんさん。途中、やや浮力を失っているどんちゃんは下がってきちゃっていたのだけど、「どんちゃんに触るな!!」と警告しながら歩く。相変わらず、ご自身は後回しなのか…と、ほろり。
舞台下にたどり着きそうになったところで、スッとかにさんが奥から出てきて身を乗り出す。そのまま右手を差し出してあべどんさんの手を握り、片手でぐいーっと引っ張って舞台へ引き上げる。もちろん下から押してるスタッフさんもいたけど、王子様というか騎士のようでめちゃくちゃにかっこよかった。力が入って筋肉が盛り上がってた…。
 
無事(?)舞台へ戻ったあべどんさん、「みんなにも」と、新たな花笠を所望。下手袖から、紙吹雪がたくさん入った花笠が差し出され、メンバーそれぞれの頭に振りかけてあげる。スタッフにも!と、両袖の幕一枚一枚の裏にそれぞれ、そして「ここにもいるんだ」と(民生さんも『実はたくさんいるんだよね』みたいなことを言ってた)、キーボードブースやドラムセットの後ろにも、豆まきみたいにw振りまく。そのあまりの多さに笑ってしまう民生さん、「最後だから散らかしてもいいと思ってるだろ!w」。それを受けて、「いいよな館長!?」とあべどんさんが呼びかけると、さっきと同じPAの下の席から、手で大きな丸を作る館長さん。寛大!w
ひとしきり撒き終わったところで「俺にも」と、花笠を民生さんに手渡すあべどんさん。受け取った民生さんは、すこーしだけ頬をゆるませながらあべどんさんの頭に紙吹雪を振りかけ、最後には花笠を傾けて全ての"しあわせ"をざざーっと流したのだった。禊のようなお祓いのような、ともかく、他人に、周囲に、しあわせを振りまこうと頑張るひとには、こんな風によりたくさんのしあわせが降り注ぎますように、と願わずにはいられなかった。
 
最後だから、とメンバー一人一人に感想を求めるあべどんさん。
肩を組んでマイクを向けるとえびさんは「山形最高ですよ!」と。肩に腕を置かれてマイクを向けられたテッシーは「(いつも客席に降りている)あべどんの大変さが身にしみました」と。すかさず「身にしみてください」と返したのはえびさんwそういえば一番連れてかれてるのはえびさんだもんね。
テッシーにされたように肩に手を置かれたかにさんは、周りから茶々を入れられつつも「あべどんがいなかったら山形も地方の一つだったかもしれないけど、こうやって(会館の)最後に(ライブが)できた、第二のホームが出来た。それはあべどんがいたから」といったようなことをとうとうと語る。そのイケメンさ加減に、そしてその内容は自分にも思い当たることがあって、ぐっときた。だって、あべどんさんを、あべどんさんのいるユニコーンを好きにならなかったら、山形なんてきっと、足を踏み入れる機会すらなかったと思うもの。
最後に、正面からマイクを向けられた民生さん。照れ隠しなのかなんなのか、あの〜とか言いながら、相対したあべどんさんの二の腕を、持っていたスティックでペチペチ。そしてあべどんさんの連れている、ふわふわ浮かぶどんちゃんが目に入って、「ムフッw 」と笑って話し出せない。と、あべどんさんがわざと身体の前にどんちゃんの紐を持ってきて、余計に笑わせる。なんだか優しい。「…いい思い出ができましたよ」、しみじみ、といった体でこぼした言葉がまたなんだかじーんときてしまった。
 
最後に、舞台の真ん中で、「みんながしあわせになりますように!ユニコーン永く続けられますように!」とシャウトするあべどんさん。「山形県県民会館、終わりでーす!」とも叫んだそうな(なんとわたしに記憶がない)。
ここで改めてSEが鳴り、場内が暗くなる。メンバーを手招きし、スクリーンの前に座ってコロガシにもたれかかるあべどんさん。横に座ったかにさんが、床に落ちている紙吹雪を掬ってあべどんさんに撒きかけ、あべどんさんもやり返す。そうこうしているうちに、前日と同じ映像が流れて、食い入るように見つめるメンバー。途中でかにさんが、下手側で立って遠巻きに眺めている民生さんに気づき、Tシャツの袖を引っ張って真ん中のスペースに招き入れて座らせる。「ありがとう 山形県県民会館」の文字に大きな拍手がおき、メンバーもみんな晴れやかな顔で立ち上がった。
みんなと一緒にはけようとするあべどんさんを、優しく押し戻すかにさん。照れ笑いしながら、いつも最後にかにさんが立ち止まるあたり、舞台下手の端に一人立つあべどんさん。お客さんに向かって一礼。キュッと踵を返し、舞台に向かって一礼。その姿が、例えば卒業生代表として証書を受け取った生徒のような、きちんとした礼ーー形だけでなく、尊敬や感謝の念、万感の思いがこもったそれに見えて、直角になった姿勢に涙がこぼれてしまった。
 
 
しあわせ様が通ったところには、金銀、メタリックな青と赤、桜の花びらを模したものや千代紙を切ったもの、色とりどりの(そして、総じてやわらかな色合いの)しあわせのかけらがたくさん落ちていた。赤絨毯の敷かれた階段を一段一段登りながらそれを見ていると、まるで着実にいろいろなものを積み重ねてきたあべどんさんの足跡を見ているようで、またもや涙腺がゆるむ。「後で拾って持って帰ってくれ!」との言葉通り、会館を綺麗にする意味もこめてすべて拾って帰りたいくらいだったけど、手に握れる分だけいただいて、サクランボーのポーチに入れて持って帰った。
 
 
外に出るとたくさんの人が会館と記念写真を撮っていて、また涙が出た。こんなにもたくさんの人で賑わっているここが閉館になるなんてにわかには信じられなくて、笑顔でお客さんに挨拶する館長さんのお姿を遠くにみとめながら感傷に浸ってしまった。
 
 
 
 
ここからは更なる雑感。
 
1日目も2日目も、とても珍しいことに、わたしも会館の前で記念写真を撮ってもらった。昔から自分の写真を残すことはあまり好きではないのだけど、後からよく考えると、自分が"そこにいた"ことを残す術は、それくらいしかないから撮っていただけて本当によかった…そう思った自分にびっくりした。
思えばわたしが初めてユニコーンのワンマンを観たのがここ、山形県県民会館だった。
どうしてこんな遠くに、当時まだ慣れていなかった遠征をしてまで。それは紛れもなく、あべどんさんの出身地だったからだ。まだまだ浅い知識の中でも、彼が、彼らが、山形の地で行う公演を大事にしていること、それを知っていたからこそだ。
初めて参加できたワンマンはとても楽しくて、胸いっぱいで、そして終演後に混ぜていただいた打ち上げで食べた芋煮の美味しさが妙に鮮烈に記憶に残っている。それからも数度、ライブで山形を訪れる機会がいくつもできて、その度にライブ以外でもたくさん素敵な思い出ができた。街中でふと見かけた「山形産」の文字に惹かれて商品を手に取ることも、少なくなくなった。
 
2日目のライブ前、出演したラジオで、県民会館の思い出を聞かれたあべどんさん。そこで真っ先に挙げたのは、演者として自分が立った舞台のことではなく、お母様がよく行っていた、ということだった。曰く、音楽の先生をしていたので、学校行事でよく行く機会があった、と。もちろん僕もクラシックのコンサートに連れて行ってもらったこともあります、寝てましたがw、と。
以前ppで仰っていた、多分あべどんさんにとっての音楽の原体験とも言えるもの。眠ってしまったことを叱ったりせず、それは音が気持ち良かったということだから、と言葉をかけたお母様。それがおそらく、この山形県県民会館での出来事だったのだ。
幼少期にはそうやって客席にいたけれど(学校行事とかで登壇したかもしれないけど)、10代で後にした故郷のこの会館に、20代でバンドのメンバーとして戻ってきて、解散後のソロのコンサートも40歳の記念のライブもここで、そうして50代になった今、閉館前の最後の公演を、再始動させたバンドで行った。1人の音楽家の歴史や記憶が、これだけひとつの会館から生まれている。それってものすごくものすごいことだ。
もちろん、あべどんさんだけではなく、この地に生まれ育ってここを訪れた人の数だけ、そういう"思い出"はある。そしてそれだけでなく、わたしみたいに、山形県とは縁もゆかりもなかったはずの人間の思い出すらもーー言い方は悪いかもしれないけど、かにさんが言ったように、ただの地方の会館であるならば、わたしにもここまで思い入れはなかったはずだ。あべどんさんにゆかりがあるから、そしてあべどんさんが、ユニコーンが、その縁を、しあわせで楽しい音楽やライブを創ることで繋ぎ続けているからこそ、この地に焦がれ、足を運び、"思い出"と呼べるほど素晴らしい体験をさせてもらえて、山形という土地に思い入れができた。そんな人間が、きっとわたし以外にもたくさんいる。それも、すごくすごいことだ、と思う。
それを考えてのことなのかどうかはわからないけど、最後はユニコーンでしょう、そう言ってフィナーレを任せてくれた館長さん。それもご縁だなあと思うし、その思いに報いる公演になったのではないかしら。
1日目、会場を出るときに、キョードー東北のバッジを付けた方にもらったチラシ、「ABEDON from ユニコーン presents ありがとう山形県県民会館」。日テレプラスの特番で、最後にあべどんさんがスタンウェイのピアノで響かせる音がどんなものなのか。年明け、それを聴くのがとても楽しみです。
 
 
最後に、本当に蛇足。
上に書いた、ppでしていたお母様のお話。それはppのお客さんに、公演の途中で休んでもいいし寝てもいい、と言った時に、どうしてそうかというと、というところで出てきたものでした。
その思いというか考え方それ自体、そしてそれを幼い子供に対してもきちんと向き合って伝える姿勢に、わたしは心を震わされた。音楽は自由に楽しんでいいもの、それをわたしはユニコーンから教わったのですが、その根幹のひとつにはその言葉があったのかもしれないなあ、などと勝手に思った。
そしてきっと、あべどんさんの言葉や音楽を通じて、その思いはたくさんの人に伝わっている。深く深く根差したものから、ひらりと花びらが鼻先をかすめる程度と、差はあるかもしれないけど、それでも伝わっている。
そしてもしかしたら、それがさらに他の人たちや下の世代にも、少しずつでも伝わっていくかもしれない。肉体がなくなっても、建物が取り壊されても、寄せては返す波のように、思いだけは連綿と繋がっていくのかもしれない。
それって、"消えない愛"だなあ、なんて、思うのでした。
永遠なんてこの世にはないし、歌詞にも深い意味は込められてないかもしれない。けれど、そんなことを考えてしまうほど、心に残る思い出。わたしの中にまた一つそれを増やしてくれたことに、感謝しかないのです。
だからどうか、みんなの幸せを願うあのひとの願い事が、叶いますように。

横浜アリーナにthe pillowsを観に行きました

大事なことなのでもう一度言います。横浜アリーナthe pillowsを観に行きました。
ちなみに冒頭の「大事」は「だいじ」であり「おおごと」とも読みます。
 
忘れもしない2018年末(発表されたのはライブの最後の方なので正しくは2019年初だったと思うけど)、カウントダウンバンプショウで発表されたライブ。20周年は武道館だったし、それよりも盛大にやるみたいなこと話してたから、もしかして…と思ってはいた。いたけど、さわおさんの口から出た「LOSTMAN GO TO…横浜アリーナ」という言葉と、その時の眩しそうな目(をするよね、こういう時いつも)に、全身に震えが走って泣いてしまった。
横浜アリーナ横浜アリーナって、あの横浜アリーナ?ユニ再始動のツアーで阿部さんが客席の真ん中まで行った?モンキーが聖地のひとつにしている?わたしなんてフェスでしか行ったことのないあそこ?あの大きな大きな会場と、今渋谷のライブハウスで目の前にいる大好きなバンドがどうしても結びつかなくて、けれどとにかく物凄いことが起きているということだけは理解できて、涙が止まらなかった。
本当は916にとりたかったけど、祝日ということもあり貸してもらえなかった。別の会場がとれはしたけど武道館とほぼ同じキャパだった。武道館の時にチケットが取れなくて行けなかった人がいたので、そういう人をなくしたかったから大きい会場でやりたい。だからそこは断った。それで結局、平日、それも一日だけ、横浜アリーナを貸してもらうことになった。それが10月17日。
そんな説明を聞きながら、さわおさんはどこまでもさわおさんだなあ、と、かろうじて冷静さが残っていた頭の片隅で思ったのを覚えている。事実、当日券は出て、当初の目論見通りその日に思い立っても会場に行けば入ることはできた(映画のプロモーションの時にさわおさんが、売り切れそうだからあまり宣伝するなってなってる、売り切れたらスタッフが俺に怒られるから、と笑っていた時は笑ったけど)。けど、スタンディングと指定席は完売。立ち見も一応直前に完売マークがついていて、申し込みを締め切っただけかなと思っていたけど、二階席の最後列の後ろはずらりと人が並んでいた。
春から夏の終わりにかけて、結成年がピロウズと同じバンドのアリーナツアーに参加した。その中にはもちろん横浜アリーナもあって、お客さんがぎゅうぎゅうの2daysに、ここで演るの?あのピロウズが?と途方もない気持ちになったのを覚えている。客席はもちろんだけど、ステージがまた大きい。そしてZeppとかだってそりゃ縦長の会場だけどそれとは訳が違う。たった一日だけ、ワンマンではキャリア史上最大、そして慣れてもいない規模のライブを、結成30周年で行うのがどれだけのことか。何かに圧倒されたまま、遠い未来に感じていた"発表から10ヶ月後"が、とうとう来てしまった。
 
ピロウズのことについては、覚え書きをつぶやきこそすれ、あまりちゃんと文章にしたことはなかった。なんというか…吐き出さなくてもよくて、自分の心の内にしまっておけばそれでいい、そんな気持ちでいたからだ。
けれど今回のライブが終わって、今までのそれとは違う、なんだか大きい、それでいて混沌とした感情に飲み込まれて抜け出せなくなってしまった。一日ぼんやりぐるぐるし、いろんな方の感想やら何やらを読みあさっているうちに、ああやっぱりちゃんと書いておいた方がいいなあと思った。
ビデオどうしようかなあ、とさわおさんがこぼしていたように、映像化はされるだろう。けれど、あの日あの時自分が体験して感じたこと、それ自体はきっと何度映像を見返したとしても完全にはよみがえらない。ブログはクソデカ感情の吐き出し処、そして老後の楽しみ(そこまで残っているのかはわからんけど)として書いてるようなものなので、そこをちゃんと残しておかないとなあ、と思った。何よりも自分のために。
2回目のロストマンツアーの時、初めて過去のレア曲を演奏するという場に参加できたのが嬉しすぎて、誰に見せるでもないのにライブまでの道のりから一曲一曲の感想に至るまでを事細かにWordに打ち込んだのを思い出す。その時のことを思い出しながら書くので、今回は本当に信じられないくらい長い。作文が冗長だからテーマを絞って書きたいことを中心に書けと小学生の時に注意されたのをいまだに思い出すけど、わたしにとっては全てが大事な瞬間で、書きたいこと、なのだ。
 
 
前夜は緊張で眠れなくて、ピロウズをシャッフルで流していたらいつのまにか浅い眠りについていた。けど、やっぱり予定より1時間早く起きてしまう。とりあえず、近年のわたしにしては本当に珍しく前日に用意した持ち物を再確認し、会場へ向かう。電車の中で、すでに物販に数十人は並んでいるとの情報にびびる。嘘だろ…まだ午前中だぜ…?
昼頃にアリーナ裏手の最後尾に到着。曇り空で風が冷たい。人数はさほどでもないかな?とパッと見で思っていたけど、どんどんどんどん列が伸びていって、最後には折り返してきた最後尾すら見えなくなってしまった。
14時から物販スタート。列はかなり順調に進む。階段を昇った入り口で、中でピロウズの曲がシャッフルでかかっているのに気づく。おお、と思ったら列のままぞろぞろロビーを進まされ、その間にも途切れない音楽。見上げたら会場のスピーカーから直接流れていた。持ち込みの小さいスピーカーとかじゃなくて、横浜アリーナの、会場のスピーカーから、直接。涙腺をビシバシ刺激されながらも、いくらなんでも早すぎる、と必死に耐えた。けれど物販会場である小さなホールに入った瞬間、かかっていたFool on the planetとともに膝を折って泣き崩れそうになった。
入って右手、壁の一番上に、タワレコピロウズ展で飾られていたメンバー一人一人の大きな写真の幕が、左からシンちゃん、さわおさん、ぴーちゃんの順に飾られている。入って正面、壁に沿って端から端まで、商品見本のパネルまでがついた並べられた物販ブース。その後ろにはいつもライブでステージのバックにかけられている三本の剣のロゴの幕。ああ、これ、今日は使わないんだ。そう思ったらもうたまらない気持ちになって、心でわんわん泣きながら、予定以上にたくさんグッズを買ってしまった。いいのだ、ご祝儀(?)に素敵なグッズまでついてくるなんてタダみたいなものなのだ。
さらにHappy go ducky!特典のチケットホルダーを引き換えて(机の隅に懐かしのバスターくんフィギュアが居たのが可愛かった)、タワレコブースに並んでハイブリ本2と、このために購入を我慢していた前回のツアーBDを購入。特典の丸いステッカーはGO TO〜のTシャツと同じ柄。かわいい。
 
名残惜しいながらも物販を後にして、会場の正面に回る。ああ、6月とは違ってロゴの入った看板も何もない。けれどクロークのために入り口が開いていて、中には色々な方からのたくさんのお花のスタンドが置いてあった。ぴーちゃんの中学校の同級生の方々からのに涙(『犯人役』と聞き違いした方々でしたっけw)、ニンゲンドモ宛のわさおさん&ちょめさんからのにも涙。つばきさんの思いものっているかしら。そうそうたる先輩、盟友、後輩ミュージシャンからのお花も並んでいて、ああこういうとこだよなあって思う。音楽と人柄と、過度にひけらかすことは絶対にせず、けれど大事なひと達との縁を大事にしてきたところ。色とりどりに並ぶお花の並べ方を、マネージャーの三浦さんが指示していたのもなんだかぐっときた。
 
ただただ眺めているのもなんなので(本当はずっとここに居たかったけど邪魔になるし)、移動して買ったばかりのハイブリッドレインボウ2を読む。武道館の時はcastを熟読しながら物販並んだなあ…と軽い気持ちでページをめくり、そして衝撃を受けた。
読み進めるほどに内容がずしりと胸に降り積もる。時間はあったけど、だめだ他の人の言葉は多分入ってこない、と、とりあえずメンバーのインタビューだけ読む。これまで彼らの活動を追う中でほんのりと頭に浮かんでいた本当に微々たる違和感と疑問、そしてインタビューに対する返答への「つまりそれで…?」と重ねて聞きたくなること、それがほぼすべて金光さんによって引き出されていた。さすがだ。何も考えず、ただただいつもピロウズの音楽に助けを請うていた自分を省みて苦しくなった。
けれど同時に、何かがストンと胸の中に落ちて、浮き足立っていた気持ちが凪いだ。開演前に読んで本当によかった(わたしの場合は)。これは、このライブを心して受け止めなければならない。勝手に自分を重ねて泣いてる場合なんかじゃない。このひとたちのここまでの全ての思いと覚悟、それをきちんと目に焼き付けなければならない。そう思った。
 
日が傾き、雨がぱらつく。さすが雨バンド…と思いつつ、アリーナ(つまり指定席)開場列に並ぶ。18時ぴったりに開場。ピクチャーチケットがもぎられた瞬間、ああ、ついに…となぜか胸が苦しくなる。
広い階段を昇って降りて、たどり着いたのは上手のスタンド。舞台配置は基本パターンでくるだろうなと思ってたから予想はしてたけど、ライブハウスでもいつも上手に陣取るので勝手に嬉しい。ステージには大きなthe pillowsロゴの電飾、両サイドのモニターに「DON'T FORGET TODAY」の文字。静かに流れる客入れはストーンローゼスのアルバムだそうだ。見下ろすスタンディングエリアは順々に埋まっていって、Zeppの2階席ってこんな眺めなのかな、とぼんやり思う。
開演の15分前にもガラガラに見えていたスタンド席も、直前には満員になって、立ち見のお客さんもずらり。もうそれだけで胸がいっぱいになる。こんなにもたくさんの人が、平日にも関わらずピロウズを観に来ている。全国から、いや、おそらく国外からも(アリーナ前で外国の方々のグループを見かけた)。すごい、すごいよ。
予定を5分過ぎて、ままなく開演のアナウンス。わあっと盛り上がり拍手が起きる場内。程なくして客電が落ち、いつものようにケリーズダック…は流れず、モニターに静かに映像が流れ始めた。
 
 
映し出されたのはどこかのお家の写真、そしてモノクロの赤ちゃんの写真。え、と思った瞬間、60〜70代と思しき女性の声がかぶさる。2〜3枚目で、カートを押すちびちゃんが誰なのか、女性が話す"絵本を次々に取ってきて読んでとせがむ子"が誰なのかはっきりと理解し、買ったばかりのタオルで口を覆った。シンちゃんだ。
写真の中のシンちゃんはだんだんと成長していって、わたしが知っている昔のシンちゃんになっていく。女性…いや、シンちゃんのお母様は、快活さをにじませた声で、アメリカに出張に行くお父様にシンちゃんがレコードを買ってきてほしいと頼んでいたこと、音楽でやっていくと家を出た息子が心配で頼まれはしないけど何度も東京へ足を運んだことを話す。そして、お父さんも来たかったと思うけど、去年…ということを残念そうに仰るのだ。快活さは失わず、けれど本当に残念そうに。ぐっと胸が詰まって、ハイブリ2の中で"あまり環境を変えたくない、そのままでいいじゃん"みたいなことを言っていたシンちゃんを思い出す。それから今この瞬間、病院で明日の手術を待っているひとと、そのひとになんて声をかけていいかわからない、と音人のインタビューで言っていたシンちゃんを。ああ、いかばかりか…こんなこと断じて詮索されたくはないだろうけど、心中はいかばかりか。
いや、こんなの無理でしょ。知り合いの結婚式なんかのムービーでも1人泣けずに座っていることの多い冷血漢?なわたしなのに、じっとモニターを見上げているだけの目から、後から後から涙が流れ落ちる。わあんと声をあげなくても涙って溢れるものなんだ、そんなこと初めて知った。
ふっと画面が暗くなり、次に映し出されたのはあまりにも見慣れた光景、テレビ塔大通公園。それだけで息ができなくなる。次の写真は、昔懐かしい雰囲気の美容室の入り口。
段ボールいっぱいにバレンタインチョコをもらってきたという話が割と幼めのぴーちゃんの写真にかぶせられていて笑ってしまう。生みの親は私だけど美容室の従業員さんが育ての親みたいなもの、というお話、ツアー先ではお父様に電話を欠かさず、どこへ行った何を食べたと話していたというお話。さっき読んだハイブリ2の中にあった、優しいけれど心の隅にはひそかに孤独を飼っているようなぴーちゃん像とそれが重なって、なおかつ10年近く前、お父様がお店に並ぶピロウズのCDと記念撮影したという話を苦笑しつつも嬉しそうに口にしていたぴーちゃんを思い出してしまう。そして、そのお父様が亡くなられたことでその身に起きたことも。繊細で優しい子なんですよ、でもお金を送ってくれなんてただの一度も言ってきたことなんてない。北海道弁で静かに、淀みなくしっかりとお話されるお母様に、ぴーちゃんの普段の口調も思い出されて、余計にぎゅうぎゅうと胸が締め付けられた。
また一瞬暗くなった画面。映し出されたのは、わたしも一度だけ目にしたことのある、湾曲した海岸。ああ、銭函だ。流れてきたお声は初めて聞くものなのに、わたしはこの方のお名前を知っている。
話している途中でわずかにガサガサと音がして、愛子さんはおもむろに「話すのは得意じゃないから読みますね」とご自身の日記を朗読し始めた。その唐突さと律儀さに誰かを思い出して笑ってしまう、けど次の瞬間その文章力に舌を巻いた。上京する前夜の食卓が親子2人だけとはあまりに寂しすぎる、寝食を忘れるほどロックンロールとは面白いものなのか。冷静な筆致ながらも文章から滲み出る身を切るような寂寥感、その表現力。今度こそ咽び泣いてしまった(タオルを口に当てて声だけは押し込めた)。確かお父様が広大の校歌?の詞を書いていらしたとの話を聞いたことがあったけど、お母様にもその才があったとは。そして息子の好きなものを理解できないままに終わらせず、ピロウズのアルバムを手にとったという愛子さん。「MY FOOTが」「my girlいいですよね」というその口調があまりにも自然な"こっち側の人間"という感じで、思わず笑ってしまった。まずは食わず嫌いせず触れてみる、そんな姿勢がまた、誰かを彷彿とさせる。
お三方とも、最後には異口同音に「今があるのはファンあってのこと」と仰る。きっと聞き手の方が聞いたのだろうけど、お三方ともとてもクレバーできちんとした口調でいらっしゃるから、用意された回答ではないのかも、と感じる。
最後に愛子さんが仰ったこと。そんなに長い時間を共にしているなら、もうメンバーは家族だね、と声をかけた。息子さん…さわおさんは、「『そうだよ』って言ってました」と。
そうして画面は暗くなる。
 
 
ロゴの電飾に明かりが灯される。ステージは両開きの赤い幕で半円状に覆われている。
「聞こえてくるのは キミの声 それ以外はいらなくなってた」
いつもより固い声のアカペラが響き渡る。
あ、映画だ、「王様になれ」だ。
そう思った瞬間、聴き慣れたドラムの音が力強く響いた。
 
 
1.この世の果てまで
ゆっくりと左右に開いていく赤い幕。ターミナルヘヴンズロックやPIED PIPERのMVみたいだ、けれど今はそれよりも彼らの姿が見たい。さっき見たどの写真にも収められていない、今この瞬間の彼らを。
だから幕が開ききって全力の演奏を叩きつけてくる4人の姿が見えた瞬間、拳をあげて叫んでしまった。
8分の6拍子のダイナミックなリズムで演奏されるこの曲は、力強いのに(だからこそ?)ライブで演奏されると毎回泣いてしまう。開演前はちゃんと受け止めようと思っていたのに、感情が爆発して大泣きしながら、それでも腕はガンガンと突き上げた。スタンディングの人波もそれは同じようで、けれどあまりの人数のそれにまた胸が熱くなってしまう。
 
 
2.MY FOOT
いつものさわおさんの掛け声もなく、ほぼ間髪入れずに始まったのがこの曲。早足で歩くようなリズムに、もう限界だった。いつもライブでは口パクで歌ってしまうのだけど、口を開けるたびにひゅうひゅうと泣き声を殺した息が漏れてしまう。
この曲には本当に個人的な思い入れが強い。なんせピロウズで初めて聴いた、なおかつその場ですごく気に入って、アルバムをきちんと聴こうと思わせてくれた曲。そしてその後、歌詞をはっきり聞き取って吐き気を催すほど共鳴し、思わず都会の真ん中で動けなくなった、そんな曲。どちらの風景も、本当に何気ないのに(そして10年以上も前なのに)ありありと思い出せるほど、鮮烈に記憶に残っている。そんな曲を、20周年の時と同じく2曲目に持ってきてくれるとは。
果てもマイフットもどちらも定番ではないけれどライブでちょこちょこ演ってはいる曲で、もしかしたらアイドリングも兼ねてるのだろうかと一瞬思う。けれど演奏はめちゃくちゃに力が入っていて、そんなわけあるかい!と自分を殴りたくなった。いつでも全力で、真正面からぶつかる。そういうバンドだ、このひとたちは。
 
 
3.Blues Drive Monster
ブルースドライブモンスター!といつもの巻き舌混じりのタイトルコール。ここで!?殺す気か!?もうガンガンに名曲を撃ってくる、飛ばし過ぎじゃないか50代。
しかしこれもやはり思い入れが強い曲なのでもう泣きながら拳をあげるしかなかった。「みんな一体どんなシステムで感情コントロールしてんだ」「満員電車に乗れなくて」そんな歌詞に、自分だけじゃなかった、ここにもそんなひとがいた、と涙を流したあの頃。どこまでもカッコいいサウンドに身を委ねている時だけはその憂鬱を薄らげることができた。それは今も一緒で、だからこそ怪獣の咆哮のようなアウトロのギターが胸に頭に身体全体に響いてくる。やばい。息もつけない。
バックに現れるエフェクトもとても綺麗な青だ。あの頃のぴーちゃんのギターのようなパキッとしたメタリックな青。
 
 
確かここでさわおさんが最初のMCをした。飲み下した水のペットボトルを見て「アクエリアスじゃないじゃないか」。さざめきのような笑いが場内に広がる。ああ、わたしたち、みんな緊張している。
「久しぶりじゃないか!みんな元気かい?」も、「いい夜にしたい」も、「目は覚めたけどまだ夢の中だ」もなく、言葉少なに話すさわおさん。ああ、もう、本当にこれは普段と違うライブにするつもりだ。だから916の舞台挨拶ではあの台詞を言ってくれたのか。そう思うと、忘れかけていた開演前の決意が脳裏によみがえった。きちんと受け止める、そうしなくては。
 
 
4.アナザーモーニング
ダイナミックなシャッフルのビート、アラバキでも聴いたけれどやっぱりカッコいい。これも何度となく背中を押された曲だ。ハッピーリバースデー、それをこんな大きな会場で歌っているなんて。1番の歌詞にさっきの映像を思い出してしまってまた泣きそうになってしまう、けれどこらえた。
 
 
ああ、ここで…感情のジェットコースターは忙しい。これも本当に、ファンになった時から大好きなロックバラードだ。ハイブリ2を読んだ今は、重みが違って聴こえてくる。けれどメロディはどこまでも美しく格好いい、ぴーちゃんのコーラスも素敵。
映画でTERUさんとJIROさんがカバーしていたのも素敵だったけど、久々に聴いた本家本元のバージョンはひたすら胸にきた。あのギターソロのフレーズ、確か音源はそこだけムスタングで弾いたと仰ってたっけ、あれほど太いのにしなやかで力強い美しさを持ったフレーズは他に知らない。
 
 
6.バビロン 天使の詩
いやだからジェットコースター忙しいって!!とは言ってもタイトルコールに勝手に体が反応して両手をあげてしまう。
いつもサビでは小さくジャンプしてしまうのだけど、流石にスタンド席でははばかられた。けれどやっぱりひたすらカッコいい。
もはや涙もすっかり乾いていて、いつもより全然遠くにいるのに普段のライブみたいにワクワクしている。ステージや客席からも伝わる緊張感は、それでもわたしも持っていたけれど。
 
 
7.I know you
これまた聴き慣れたギターがかき鳴らされて、わー!となる。「I know you」のリフレインで、会場中がステージを指しているようでグッとくる。ここにいる人たちみんなが、あなたを知っている。「ぎゅっとつかんで騒いでる」のところで握られた拳も、数え切れないほど見えた。
このギターソロもそれはそれはオシャレでポップで大好きで、とにかく体がリズムをとりまくってしまう。
 
 
ここでまた小休止、と言っても普段のワンマンと比べたら全然短いし言葉も少ない。
「君たち……無職?」はここだったか。「平日にこんなに人がいるなんて」「言いつけ通り仕事辞めて来たんだろw」若干ざわつきつつ、い、いえー…と返す会場w いやあ、なんとかたどり着きましたよ、ええ…w
「ハタチからバンドを始めて、30年経って50歳になってしまった。けど…俺は今でも、サリバンになりたい!」
 
 
8.サリバンになりたい
もう、ぎゃー!!である。ここで騒がずしてなにを騒ぐのか。マジでスタンディングエリアに降りたかった…!!
攻撃的な最初のフレーズもフーッフー!のコーラスも良いけど、間奏のギターとベースとドラムがじりじりとせめぎ合う緊張感がとっても好きです。ネックにかじりつくように細かくピッキングするぴーちゃんがめちゃくちゃカッコいい。そこからの「ロッキーサリバンは〜」の不穏なボーカルも好き。最後のシャウトもカッコ良かった。ああ、確実に10年前より声が出ている。それってものすごいことだ。
そしてその時は来た。
「He's gone」からのアウトロ、ぴーちゃんがおもむろに歩き出す。…歩き出す?いや弾きながらこっちに来たーーーー!!!!
つまりは左右両側に舞台が長めにとられていたのだ。特効の発射台があったからそれを置くためかと思っていた、けど明らかにスペースが大きい。そこに、つまり上手の花道(花道!!)に、ギターを弾きながらのしのしと歩いてくるぴーちゃん。上手の端まで来てくれて、普段のように表情も見える。いやいやいや!!!!こんなことある!?!?!?花道でファンサ(?)する真鍋様だよ!?!?!?上手スタンドを配分してくれた神とFCに感謝したマジで。モンキーでエマさんが近くに来た時ばりに声出してしまった。
もちろんそんなステージアクション慣れてるはずもないのだけれど、そして緊張もしているだろうけれど、ぴーちゃんの歩き方は実に堂々としていてめちゃくちゃカッコよかった。持ち場に戻るときの背中が武士のようだった。弾いているフレーズも、ステージから援護するバンドももちろんカッコよくて、すげー!すげー!!と心の中で繰り返し叫んでしまった。いいもの観せてもらっただあ…
 
 
9.LAST DINOSAUR
いやいやいやここでぶっこむんかい!!興奮収まりきらないのに息つく暇もないセトリがすぎる、どうしてくれようか!!
「悲しみを全部引き受けたって大丈夫」「どこでだって誰の前でだってただ自分でいたい」。あのリフとともにそんな歌が鳴らされる、このどでかいアリーナで。ダイナソーが咆哮をあげている、そのシーンにふさわしい舞台であるような気がして全力で拳をあげた。ソロのチョーキングな………(言葉にならない)。
 
 
10.Please Mr.Lostman
あのイントロだ。曇り空を飛行機が旋回しながら飛んでいくような、どこか不穏さの流れるイントロ。わたしたちはこの先に何の曲があるのか知っている。それでも、チャイムのようなあの一音がギターで奏でられた瞬間、フロアに静かな歓喜が満ちたように見えた。
バックの映像はアルバムのジャケットのよう、薄明かりの中で枯れ木が左端に小さく立っている。空の色は明けもしなければ暮れもしない、けれど曲が進むにつれ枝の後ろ側にキラキラと星が輝く。
さわおさんの声の伸びが素晴らしい、緊張はしていてもやっぱり10年前よりも声が出ている。
 
 
11.No surrender
じんわりしんみりしていたところで響く「ワンツースリーフォー!」のシャウト。反射的に「ファイブシックスセブンエイト!!」と答えていた。いやだからテンションの落差!!w
この曲も本当に…最初はただのアルバムの一曲なイメージだったけれど、2011年からたくさんの意味を背負うようになったなあ、と思う。けれど大変なことがある前から、「どんなに悲しくても生き延びてまた会おう」と歌っていてくれたのだ、さわおさんは。ライブ特有の「また会おう!!」に、全力でイェー!!と答える。それがいつになるのかわからないけど、あのひとはきっとそういう約束は破ったりしない。単なる歌詞だから、とかじゃない。約束できないなら歌ったりしない。よくわからないけど祈るようにそんなことを思いながら観ていた。ギターソロの、真夏のどこまでも晴れ渡る空のような爽快感。それがアリーナに響いたのが嬉しかった。
 
 
12.Kim deal
「永遠のオルタナクイーンに」とさわおさんが言ったのでおおおお!となった。アリーナで!やるか!これを!
可愛らしいサウンドは健在。ボーカリスト以外がするコーラス愛好家(?)のわたしとしては「あ〜Please sing for me〜♪」がアリーナで聴けたのめちゃくちゃ嬉しかった。ああ緊張してらっしゃる…と思っていたけど、お二人とも頑張って歌ってらした。
オルタナ=亜流、の(さわおさんの中での)象徴である彼女に捧げた曲を、主にポピュラーなアーティストが演るこの会場で演奏できたのはなんか素敵だなあと思った。そこまで考えてないかもだけど。
そして勝手にだけど、「年をとって変わってもかまわない」「歌ってよダーリン」の部分はもう、そっくりそのままわたしがピロウズ に、敬愛するミュージシャンに言いたいことなので、いつもステージを指差しながら聴いてしまうのだ。
 
 
13.ぼくは かけら
イントロで、ああああああかけら!!!とテンションぶち上がり。いや大好きなんだよこれもおおお!なかなか聴く機会ないけどなぜかアニバーサリーでやりがち!!
寂しいことを歌っているのにやけくそに?明るい曲調なのがまた良いのです。ライブの後に読んだ、ハイブリ2の友康さんのインタビューを思い出す。ブリティッシュぽい、というのかな、ぴーちゃんのこういうギターがとっても好きです。
 
 
14.1989
ぼそりとタイトルコール、やるとは思ってたけどやっぱりぎゅっとした。いらしてるはずだけどオクイさん聴いてらっしゃるかなあ、などと思う。
やっぱり声の伸びがすごい。緊張はあると思うけど、演奏も含めて正直10年前の武道館のそれよりも良かった。この曲はすごくリピートするということはないのだけど(なんか20周年の思い出が強すぎて)、ギターソロのフレーズがなんだか好きで、なぜかそこだけ事あるごとに思い出したりする。
「ひとりぼっち〜」のあたりのキーボードの音、なんとぴーちゃんがギターで弾いていたのでわあああとなった。しかも本当にキーボードみたいな不思議な音。あんなの出せるんだ、凄い…。「嘘だよ」って一緒に歌ってるようなフレーズが、ひっそりと寄り添っているようでとても良い。
 
 
15.ニンゲンドモ
最新アルバム枠(そんなんあるのか?)、これかあ!!わさおさんたちのお花を思い出してニヤリ。今歌いたいことが一番入ってる、のか、なあ。帰って来てから、「加害者と被害者の〜」のフレーズとハイブリ2の内容がなんかリンクして、あああ〜…と思うなどする。でもそこで、まあ怒ってはいるけど、それよりも誰かを「傷つけてる」って歌うのがさわおさんだなあ、なんて。怒りや悲しみも含めてなんだろうけど、"傷つく"んだなあ、なんて。
コーラス愛好家()としてはやっぱり、ぴーちゃんの「白状すべきだろう」がアリーナで聴けたのが嬉しかったですとっても。ツアーでもすごく楽しみにしてたので…(そんなにか)。アウトロの魂のソロも相変わらずカッコよかった。
 
 
16.雨上がりに見た幻
「10年ぶりに歌うよ」、その言葉に過ぎた年月を思う。ああ、本当に武道館から10年たったんだなあ…
この曲もやっぱり10年前より歌えてる、と思う。有江さんの優しさも加わったロマンチックなベースラインが良い。
 
 
17.サード アイ
聴き慣れたイントロ、あーやっぱきたか!と思ったとこで、ステージのバックにメンバーの映像が初めて映し出される。うわあああ!!!カッケー!!!
バックのスクリーン?は、細長いのが5本垂れ下ってるような感じ。そこに物販会場と同じ並び、下手からシンちゃん、さわおさん、ぴーちゃんの順にリアルタイムの映像が。MVみたいだ!!とテンションぶち上がると同時に泣いてしまった。無くてもそりゃあ良いけれど、こんな演出で観るピロウズも、めちゃくちゃカッコいいんだなあ。
合間に有江さんも映し出されて、それからホルスの目というらしい、エジプトの壁画とかにありそうな目の紋章?が。スクリーンにはそれまでもほぼずっとエフェクトが出ていたし、両サイドのスクリーンもずっとリアルタイムの映像が流れてきたけど、この演出はすごくぐっときた。
他の好きなバンド、たとえばユニコーンやイエローモンキーではよくある(とはいえ毎回グッときてしまう)演出。それがピロウズで観られるなんて。一枚の画面が3分割されるんじゃなく、3つの等間隔になったスクリーンにそれぞれが映し出される、というのがまた、彼ららしくて良い。ピロウズの3人は勝手にだけど、あの三銃士の紋章のごとく、それぞれが持っているものをそれぞれの方向から合わせている、そんなイメージなもので、ぴったりだと思った。
 
 
18.Advice
さわおさんのギターに、え!?となる。ドタタッ、ドタタッ、というシンちゃんのリズムが少しずつ速くなって、いよいよイントロ。アドバイスだーーー久々聴いたーーー!!!フロア降りたすぎ問題再び勃発。
この広い会場にこれが響くのが最高に気持ちいいしカッコいい。人が集まって来たらそりゃあいろんな人が来ちゃうけど、もう本当そんなアドバイスしてくるやつaway with youだよおおお!!!と謎の全能感?が。2番の歌詞はさわおさんが全部歌ってた。
 
 
ここでメンバー紹介。
ベース有江嘉典、と紹介されたトップバッター有江さん。
僕がピロウズに関わったのは30年のうちのちょっとの期間だから、今日は皆さん(お客さん)と同じくお祝いする気持ちで演ります、よろしくお願いします。みたいなご挨拶。いつものニコニコな感じと違ってすごく緊張なさってるお声だけど、一生懸命話してくださってるのが伝わってきてぐっとくる。ああ、本当に有江さんにサポートしていただいてよかったなあ…宮っteaさんもありがとう…
 
ドラムス佐藤シンイチロウ、と紹介されたシンちゃん。
先程出てきたうちの母親なんですけど、ちょっと前に電話が来まして。「横浜アリーナがわかった。横浜スタジアムでしょ?」ってw 「横浜アリーナ横浜スタジアムは違うよ」って教えてあげたんですけど、「横浜アリーナって横浜スタジアムでしょ?」って。二回同じこと言ったよ…面倒くせえなと思って黙ってたんですけど「最寄りは関内でしょ?」って言うから、惜しい!ハマスタ(ってサラッと言うのがシンちゃんだなあと妙に嬉しかったw)は桜木町!と。「新横浜だよ」って教えてあげたら、「新しくできたところなのね!」って…"新"に引っ張られたんだと思うんですけどw横浜アリーナも30周年おめでとうございます!(場内拍手) バラしてしまってお母さんごめんなさい!!
みたいな感じで、結局無事いらっしゃれたのか?というお母様ネタをw しかしなんかいつものシンちゃん節という感じでとてもホッとしたのでした。正直、盛り上がってはいたけどあまりにシリアスなので、期待というか、頼む…ちょっとだけでいいから空気をゆるめて…と思ってたところはあったので(わたしだけかもだけど)…。武道館の時も、あのめちゃくちゃ緊張感ある空間の中で、シンちゃんのダジャレでふっとゆるんだのを思い出した。ただ、ご本人は御多分に漏れず緊張してたようだったのがあとの演奏で発覚するのだけど…w
 
ギター真鍋吉明です、と紹介されたぴーちゃん。
今日は集まってくれてどうもありがとう。これから先何かあっても今日のこと思い出したらちょっといい気分になれる、そんなライブにしたいと思います。
そんなことを仰って、会場がわーっと沸いて、おしまいかな、と思ったところで「この場を借りて…」と。
メンバー、スタッフ、関係者の皆さん、そして時期は色々だろうけどバスターズの皆さん。30年付き合ってくれてありがとう!
いつもの優しくもしっかりした口調で、珍しく?ストレートに、感謝を伝えるぴーちゃん。わあ、と思った。ああ、やっぱり集大成なんだな…と、ちょっとだけぎゅっとする。
 
 
19.Swanky Street
言葉少なに(喋らなかったかもしれない)曲に入るさわおさん。じゃんじゃじゃーーーん…スワンキーだ、とわかったところで、なんと、リズムが!合ってない!!
それぞれの音はめちゃんこかっこいいのに進行度合いだけバラッバラで、でも照明は曲に合わせて進んじゃってて、あらららどうするん…と思ったところでやっぱり演奏が止まったw 遠目からでもさわおさんがどんな顔して笑ってるかがわかる。「え!?俺!?w」と真っ先に自分のせいかと思っちゃうところがまた、らしいw振り返った先のシンちゃん、グラサン越しにもわかる苦笑いで自分だと申告wこんな間違え方するの珍しいなあ、特にまさかのシンちゃんが。そういや前回のツアーの旭川公演でもMarch of the godがグダグダになってやり直したなあ…と思い出したw
えええ…とわちゃわちゃしかけた雰囲気の中、シンちゃんが無言でシャン、シャン、とシンバルを2発。そこでバッと、ジャンジャジャーーーン!と息のあった演奏を観せる4人。正直、ここに一番しびれたのでぜひDVDにはノーカットで収録してほしい。ミスがあったとしてもカウント一発で立て直せる、それが30年の強みと重みなのだなあと強く思った。この前のモンキーの武道館でも思ったけど、過度に憔悴したり不機嫌になったりせず(というか、そうなったとしても表に出さず)合図だけですぐさまガッチリ合わせられる、それはやはりこのメンバーで、積み重ねたものがあるからこそだ、きっと。
よりによって「僕らは間違いながら」という歌詞が皮肉なようでいてw、けれど「何度も傷ついたけど」進んできた、それがこの一瞬に結集していた気がして、胸が熱くなった。そしてさっきのMC以上に空気がいい意味でゆるんだというか、ここで一旦空気が止まったことで、遅まきながらいつものライブのテンションを取り戻した気がする。少なくともオーディエンス的にはそうだった。
仕切り直した演奏はめちゃくちゃにカッコよかった。やっぱり、スワンキー、好きだ。
 
演奏終わりでさわおさん、「あんなに練習したのになぁ〜…」としおしおと膝に手をついてがっくりポーズ。苦笑するぴーちゃんに「お前が柄にもなく良いこというからこっちはやられてんだよォ!!w」と甘噛みw 「俺らこんなとこでやるバンドじゃねえんだよ!!w」とキレッキレなのでしたw
ここではなかった気がするけど、後からスワンキーのことについて再度「俺たちポンコツだなあ…」「大学生バンドかよぉ…」としおしおするさわおさん。すかさず「55歳で大学生になりました!!」とシンちゃん。再入学したのかw
ああ、でも、よかった、と、ついちょっとホッとしてしまった。空気がゆるんだだけではなく、何もなく全てをやり通してしまったら(そりゃ小さいミスはちょこちょこあったけど)、集大成を極めてしまったら、そこがゴールになってしまう気がしていたのだ。解散はしないと明言してくれてはいたけれど、何かが燃え尽きてしまいそうな…宗教的な儀式?とかでも、あまり完璧にやり過ぎると恐ろしいことになるから敢えて外しの部分を作る、みたいなの、あるじゃないですか(あやふや)。だから、よかった。また横アリリベンジしてほしい!とかそういうんじゃなくて、全力でやって、でも不完全だからこそ、まだ続ける意味があるというか。ガッチリできたとしても、そう思っていたかもしれないけど。
 
 
20.About A Rock'n'Roll Band
ここで来るかー!!イントロのハイハット、最初から入れちゃうシンちゃん。この会場の広さじゃ手拍子合わないもなあ、でもあれだけの人数がやっていたのは何度見てもグッとくる光景だった。
ここ最近のライブの定番が来たこともあって、本編最後だったけれどすごく盛り上がった、少なくともわたしは。「終わらない日々を過ごした それが全て」、ここのメロディと歌詞は何度聴いても泣きそうになる。
 
 
21.LITTLE BUSTERS
きたあああ!!両手をあげて盛り上がる。演奏はもちろんカッコ良くて、今回はどでかいバスターくんはいなかったけど、それでも演奏だけでめちゃくちゃカッコよかった。横アリを埋め尽くす人波がみんな腕をあげている、その光景も目に焼き付けたくて、チラチラと後ろを向いてしまった。遠くから見るピロウズは、間奏でさわおさんと有江さんが向き合って弾いてたり、ぴーちゃんが片手をあげてたり、シンちゃんが叩いてる様がカッコよかったり、いつもと同じなのに俯瞰していて、でも距離は全然感じなかった。サイクロンを銃に見立てて撃つやつも、こっちに飛んできたような気がした。
アウトロでおもむろに歩き出すぴーちゃん、またもや花道をこちらに来てくださる。さわおさんまでギター弾きながら小走りで下手花道の端へ。ああ、なんて光景だ。すっかり乾かしてもらった目がまた潤んできて、夢中でぴーちゃんにエールを送った(腕をあげただけだけど)。
2人がステージに戻って、さわおさんがいつものように自分の立ち位置あたりをぐるっと一周歩く。曲のシメ、サンキューバスターズ!とかは仰ったのかはわからなかった。
 
 
半分語りのようなブルースのような、そんな歌から始まる。うわーこれが最後なのか、なんとなくそう思ってイントロのコーラスに全力で手をあげていたら、バンドの演奏が入った瞬間、パーン!とフロアに放たれる銀テープ。わあ!!ここでかあ!!キラキラした銀色が大きなアリーナに舞って、その向こうでピロウズが歌っていて、ああなんかもう、めちゃくちゃに美しい光景だった。
So I'll live!Only this fact is wonderful」、ああ、この歌詞が似合う光景が他にあろうか。力強いシンバルとバスドラが響いて、曲が終わる。ギターから手を離す2人、ああ、本編のおしまいだ。
 
 
めいめい楽器を置いて(ぴーちゃんがギターを渡したのがクマさんではなくてちょっとびっくり、ピックは流石に投げてなかった)、ちょっと会釈したりしながらも、いつも通りさらりとはけていくメンバーたち。
 
程なくしてアンコール。手拍子がいつまで経っても揃わないのが新鮮だった。
 
 
en1.ストレンジ カメレオン
ここで!来るのか!!いややらないわけないとは思っていたけど。なんかすごく、ちゃんと聴いていたのに、いやだからこそなのか、浸りすぎてしまって記憶が抜け落ちている。この曲のドラムがとても好き。静かなエモーショナルを感じる。
 
 
en2.ハイブリッド レインボウ
カメレオンがきたらこっちもくるよねー!!
「Can you feel?」のC&Rがあってちょっとホッ。いやないわけないだろうけど。
とにかく力が入っていた。「こんなんじゃない」はもちろんシャウトする方。間奏中のあのストロボを連続でたいたような照明を、引きの目線で観たのがすごく新鮮で、それでもかっこよかった(近いと逆にメンバーの姿が見えづらい時もあるので…)。ぴーちゃん、腰を落とし床に膝をついてギターを抱え込むように上半身を折り曲げ、弾く、弾く、弾きまくる。入り込み方が遠目から見ても半端じゃなくて泣きそうになった。やばい。ギタリスト魂、とたまに仰るそれが炸裂しているように見えたのだった。凄かった。
 
演奏が終わり、3人がはけて、1人ステージに残るさわおさん。ぴーちゃんのボードのスイッチをひとつ切って、センターマイクに向かう。
 
「俺は」いつもみたいに、少しずつ息をつぎながら話す。
「音楽業界のことは信じてない」
「でも、キミたちのことは信じたいよ」
言うが早いが踵を返して足早に去っていくさわおさん。ああ、なんて、らしいのか。20周年の時とかはもっと感謝の言葉に近いものを口にしていたと思うけど、今回はこうだった。信じるんじゃなくて信じたい。先のことなんてわからない、昨日の友が今日はなんてこともきっとたくさんある。ああ、でも、ものすごく勝手だけど、できたらこれからもずっとその背中についていかせてほしい。そう強く思った。
 
場内には聴き慣れたシンセのイントロ、ああここで流すのか。「Thank you,my twilight」を口々に歌うわたしたち。「キミを待ってたんだ」の部分で一層声が大きくなって、ああそうだよなあ、ここだよなあ、なんて思う。別にどっちがいいとかはないんだけど、ここ最近はアンコール後に曲が流れても合唱まではいかない方が多かった気がするから、なんだか懐かしかった。
 
そんなに間を開けずに出てきたメンバーは、いつも通り★を手にしていた。一列になってぞろぞろと、全員で下手の花道へ。わあ!すごい!ご挨拶するんだ!下手側のお客さんにわーっと手をあげるなどして、こっちへ向かってくる。さわおさんはわざとらしく腰をトントンしてたw
上手花道の端まで来た4人、いつものように円になって缶を開ける。軽く乾杯して一口。なんだか嬉しかった、いつも通りなのが。またぞろぞろとステージに戻り、手にしていた缶を見て「中身はアクエリアスです」とさわおさんw「あんまり酔っ払わないうちにやるぞ」と演奏へ。
 
en3.Ride on shooting star
わーここで!前傾したり横に捻ったりのアクションが引きで見るとまた楽しい。ちょっと武道館の時のCalveroを思い出した。
 
en4.Funny Bunny
これもここで!最近何かと話題になってるけど、ああやっぱりわたしにとってはピロウズの曲だなあと思った。どんなアレンジをされたって素敵なのは、元の曲が素敵だからなのだ。
「君の夢が叶うのは」の大合唱のあと、いつものようにオフマイクでシャウトするさわおさん。「ありがとう!」の「と」の子音くらい、だけだけどちゃんと聞こえたよ。
 
 
1回目のアンコールと同じく、いつものようにはけていく4人。
ああ、終わってしまう。お客さんはほとんど残っていて、多分もう一回は出てきてくれるんじゃないかとは思うけど、そうしたら終わってしまう。何かを祈るような気持ちで手拍子をしていると、4人は出てきてくれた。
 
俺は今50歳になったけど、いまだに救われている。新しいも古いもない世界、それがロックンロールだ!!
 
そんなさわおさんのシャウトを合図に、最後の曲が始まる。
 
en5.Locomotion more!more!
うわーーー最後にこれ持ってきた!!武道館の時も、比較的新しいながらライブのシメの定番になりつつあったポイズンだったよなあ、と思い出す。冷静に書いてるけどもうだいぶ興奮していて夢中で手をあげた。5、4、3、2、1!のシャウトも曲げる指を間違えながら歌った。
「ヨコハマシティも揺らした」と替え歌するさわおさんに沸く場内。終わってしまう…なんて感傷に浸らせない、ぶっちぎりでかっこいいロックンロール。じゃかじゃかじゃかーーーーっと弾いて、ガーンとおしまい。ああ、いつもと同じで、いつも通りカッコいい。カッコよかった。
 
最後にぴーちゃんがピックをフロアに投げてみるチャレンジ(届いてたかは見えなかった)したくらいで、普段通り、本当に普段通りはけていくメンバー。写真撮るとか手をつないでとか肩を組んでとか最後に一言とか、そういうのも何もない。
ああ、ただただ全力でやりきってくれたのだな。息を切らしながら、全力で拍手をした。
 
 
会場の外に出たら結構な雨降りで、ああ、らしいなあとまた思った。
たとえばいつものツアーみたいに、また新しい曲作って届けにくるよ、みたいなことは何も言わなかった。集大成を見せる、先のことはまだ何も考えてない。その言葉の意味がなんとなく理解できたのはライブが全て終わってからだった。
本も読んで、予定のない"この先"に少しだけ不安になったのは事実。けれどそれはわたしの個人的な話だ。ライブをマイルストーンみたいにして、そこまではなんとか生き延びようと、ぎゅうっと目をつぶってイヤホンを耳に押し付けるように彼らの音楽を聴いていた毎日。ピロウズの音楽に出会った十数年前から、本当に今の今まで、わたしはそうして彼らに助けられてきた。体調を崩して娯楽を受け入れる体力がごっそりと削られて、回復段階にあっても意欲がわかなかった時も、ふと思い立って再生して、あ、これが見たい、と思えたのはピロウズのライブBDだった。音楽は娯楽である、ではあるけれど、どんなそれより自分の血肉に近いもの、価値観の形成に関わったもの、「楽しむ」「好き」という言葉だけでは表しきれないもの。それを彼らの音楽や生き様から受け取って生きてきたのだ。
だから、わたしは彼らに心の底から感謝している。そして、だからこそ、この先どうしてほしい(活動してほしい、ということさえ)とは、言いたくない。
ここは途中、まだ人生の途中だ。たとえば本当に彼らの考える"ピーク"があの日のステージであったとしても、何もない限りその先も人生は続いていく。だから、勝手な話だけど、なるべくしあわせでいてほしい。わたしたちのことを信じたいなど、身に余るにも程があることを言ってくれたあのひとたちが、健やかで楽しく人生を送ってくれればそれでいい。そうして、できるなら、気が向いて音楽を演ろうと思ってくれたならば、可能な限りそれを受け止めたい。普段からそう思ってはいるけれど、今回は特に、そう思ったのでした。
まあ、1〜2年に1枚アルバムを出してツアーを回ってさらにアルバム再現ツアーをやったりとか、これまでの活動ペース自体がかなり早いサイクルだったと思うのでw、そりゃあペース落としたっていいよ、とは思うのですが。
 
 
なんだか話が大仰になってしまった。というか正直まだ消化しきれてなくて、ふとした時にどこかの場面を思い出しては泣きそうになったりする。
けど、たとえば一生のうち、そんな思いをできることって何回あるだろうか。たとえば近くにいないひとであっても、崖っぷちで手を掴んでもらえることが何回あるだろうか。
そんな貴重な体験を、全身全霊をかけてさせてくれた彼らには、本当に感謝しかないのです。
the pillows結成30周年、本当におめでとうございます。これからの未来もどうか、たとえ全てがそうではなくとも、皆さんにとってすばらしいものでありますように。

 

 

 

 

「UC100W」を聴きました

今年はアルバムもう一枚作ります。あべどんさんからそんなお知らせを聞いたのが7月頭の武道館。
その詳細が発表された時、度肝を抜かれました。ZⅡみたいなミニアルバムなのかと思いきや、フルアルバムって!しかも曲はUC100Vから惜しくも漏れたもの、とかではなく、このアルバムのためにまた作って選考したもの。えええ…1年に2枚って99年のピロウズですか…。さわおさんは1人で曲を書いてるのでそれはそれでまたすごいことだと思うけど、この短期間でやりのけてしまうのはどちらにせよ凄い。
で、聴いてみたら、これがまたものすごい作品でした。いやついったの140字じゃおさまらない…いつもおさまりきってないけど…
 
ライブで聴く前に、とりあえず音源だけ聴いた感想を残しておきたい、いやかなり時間がなさ過ぎたんだけども走り書きでなんとかならんか、と書き残していた文章にさらにガンガンと肉をつけてみました。つけすぎという説もあるけどそこはまあ…。
なので、本当はツアー再開やインタビューの公開の後に書いたのだけど、それらをあんまり加味せずの感想。ちょっと分量が…偏りすぎた気がするけど…そこもご愛嬌ということで…。
 
 
1.M&W
「メダカの格好」を彷彿とさせるような、ブワブワした怪しげなシンセの音。そこに儚く響くあべどんさんの歌声がのって、心がざわざわとする。あべどんさんの創る新しい曲に触れるたび少なからずそんな感覚はおぼえるけれど、なんだかいつもと違う。ワクワクやドキドキに似たそれではなく、心の何かを毛羽立たせてくるような、そんなぞくりとする感覚。けれど、なぜか心が惹かれるというか、掴まれて聴いてしまう自分もいる。8分の6拍子で奏でられるシンセの音が、どこか聴き慣れたクラシック音楽に似た旋律を持っているからだろうか。ppで聴いたアヴェ・マリアみたいだなあと思ってしまった。素人だからわからないけど…
そんな相反するような、それでいて似通っているような感覚に揺蕩って聴いていると、突然歌とともにぱあっと曲の世界が開ける。そしてその先には、広大な海が広がっていた。
ぐうんぐうんと水面を撫でていく海風のようなベース、時々僅かに上がる飛沫に反射する陽の光のようにキラキラしゃらしゃらとした優しいシンバルの音。そして先程までのシンセの音を引き継いで、寄せては返す波が陽の光を受けてゆらゆらするように、行きつ戻りつするピアノのフレーズ。デジタルな音から壮大なバンドサウンドになるという構成はZEROを思い出すけれど、ZEROははじけてドライブするドラムが印象的なのに対して、こちらはあくまでもピアノの音が前面に押し出されているような気がする。規則的なようでいてどこか揺らいでいるようなリズムが、圧倒的に美しい、けれどどこか倒錯した雰囲気を感じさせて、やっぱりどこかざわざわする。色合いはとても綺麗で引き込まれるけれど、ほんのりと不穏な何かを感じさせる抽象画の前にいるような。足が底につかない沖まで泳ぎに出て、ふと見渡したら周りには海以外の何も見えなかった時のような。
のびやかではっきりとしたあべどんさんの歌声、それを取り巻くのは賛美歌のように荘厳なコーラス。聴いていてなぜだか唐突に涙が出てしまって、それと同時にさらになぜか、ああ、あのひとはいつか海になってしまうのだな、と思った。いつかブログで、溶けたいのよ、みたいなことを書いていらしたのを読んだからかもしれないけど。人間だけでなく生きとし生けるものはすべからくいつかは土に還るけれどそういうことではなくて、海そのもの、になってしまうというか。
最後にピアノとエレキギターの波が数秒間ゆらめいて、シンバルのしゃらりとした音で曲は消える。あんなにも広大だったのに、いかないでという言葉すら浮かべられないほどに、ふっとなくなってしまう。その後の数秒の沈黙の間、固まって動けなかった。ふわっと笑った顔が眩しくて目を伏せた一瞬、気配が感じられなくなって目をあげたら、そこには光を反射しながらゆらゆら揺れる水面しか残っていない。そんな場面が思い浮かんで、寂寥感なのか切なさなのか喪失感なのか、なんとも言えない胸を締め付けられるような感覚に苛まれる。なんという音楽を創ってしまったのだ、彼の方は。
ソロみたい、とも言われていたけれど、いやいやどうしてバンドの曲だ。いつになくやわらかなドラムが、そっとリズムに寄り添っているアコギが、壮大に弧を描くベースが、そして最後までピアノに寄り添うエレキギターが、少し離れたところからこの"問題児"を優しく見守っているような感じがして、余計に切なくなる。たとえばライブで彼の方が、たったひとり花道の端まで行って歌っている時のような。好きにやりなさい、とは思いつつ、見守ってもいるような。そして何か新しく面白いことをするのには、積極的に加担していくような。このアルバムは全体的に、それぞれに対してそれぞれがそんな姿勢でいるイメージだけど、バンドの、音楽の中でそれができるというのは、なんだかとてもすごいことのように思える。それぞれの懐の深さだったり、それぞれへのリスペクトだったりがないとなし得ないような気がする、そんなことは。凄い。大人って素敵。それを体現する素晴らしいオープニングだ。
ところでタイトルはどういう意味なのか。Music&Wave?Marine&Wind?Men&Women?それともただW(または、"波形")をひっくり返しただけなのかしら。謎は深まるけれど、きっと意味があるのだろうなあ。
 
 
2.チラーRhythm
ドラムの"タッ"という合図とともに突然始まるディスコサウンドと、のっけからジンギスカンを彷彿とさせるような力強いコーラス。前曲からのつなぎで、いやいや俺たちは俺たちとしてここにいるから!俺たちは良いから!!みたいなフォローをされているように感じて、勝手に笑みが浮かんでしまう。
自分ではほとんど触れたことのないジャンルの音楽で、実は最初ものすごく度肝を抜かれた。クオリティが高いことはわかるけどなんじゃこりゃ!?ジャンル何!?みたいな。後からヴィレッジ・ピープル(名前しか存じ上げなかったのである…)を教えていただいてすごい納得した。いやなぜ敢えて今これをやろうと思ったのかは全くわからないけども。「頼みたいぜ」もそうだけど、"俺たちの得意としていないもの"にあえて挑戦するパターン?でもこれ克服してどうするのかw
しかしリズムの鬼(とわたしは思っている)・民生さんの本領がここでもめちゃくちゃ発揮されていていて楽しい。触れたことのない音楽なのに、ビートのツボを的確に刺激してきて、自然と体がリズムに乗せられてしまうような"ドンツー"のリズム。パーカッション、ギター、シンセ、ベースが一体となって踊らせにくる感じ。
そして歌がまた良い。主旋律は"それっぽいけどオリジナリティがある歌い方"に定評のある(?)民生さん、寄り添いつつ「ロック!クロック!オクロック!」のような伸びのあるコーラスで華を添えるあべどんさん。左右から高&低音でさらに煽ってくるえびさんとテッシー、そして「チラチラァ〜〜〜」とインパクトのある合いの手を入れるかにさん。それぞれの歌の特性を活かしたら後は全員で合唱、みたいなとこがユニコーンぽいなあと思う。
歌詞の内容は、「私はオジさんになった」と「うなぎ4のやきとり1」を混ぜたみたいな感じでしょうか。最後の「面と向かって〜」あたりからは「恋のかけら」を彷彿とさせるような。別にチラチラじゃなくて堂々と向かい合ってもいいんじゃないのか。それはできないのか…w
 
 
3.That's Life
ハードめなギターの音のロックンロール。こういう"のっしり"した音はテッシーならではだなあと思う。一度だけ握手していただいたことがあるのだけど、その感触が音のイメージと一緒で、おお、と思ったりした(どんなだ)。ソロ回しも個性が出ててカッコいい!ライブでまた変わるのだろうなあ、楽しみだなあ。
これはもちろん(?)作曲者のテッシーが歌うのだけど、冒頭の合いの手までテッシーの声だったのでちょっと笑ってしまった。ライブどうするのかしら。あべえびがそれぞれ左右から入れる掛け声がなんかかわいい。そしてサビはテッシーとあべどんさんで2人で歌ってる?よね?なんか珍しい気がしたのでした。こういう曲を歌う時のあべどんさんの声、歌詞の「〜ぜ」という口調も相まって、ちょっとスカしてる感があって好き。
そしてなぜかだんだんだんだんテンポが速くなっていくという謎の構成w イントロの最初のドラムがなんか、んん?なかなか曲に入らないな??と思ったのだけど、もしかしてこの布石だったのかしら…最初はこのくらいのテンポですよ〜と示してくれてる的な…個人的には、ギターソロ回しあたりのテンポがちょうど好みです。何の話。
最後はもう本当に速くなっちゃって…wと思ってたら突然の(∂∀∂)。もう文字で表すなら本当に(∂∀∂)。「うるう年かーい!」より、普通に会話の中でツッコんでる風なのにまた笑いを誘われるのでありました。元はそんな曲じゃないだろうに…wいじくり回すのがまた"らしい"なあと。
 
 
4.TYT
レトロと言うにはちょっと早い、けれどセピア色がかったようなギターの音。そこにのるお馴染みのハイトーンボイス、けれどこれはメランコリックな方(←違う方もあるらしい)だ…と思ったら当たりだった。えびさんのシリアス曲。
実はこれはうっかり曲を聴く前に歌詞カードを見てしまい、えええええ、と思ったのでした。日記や手紙でもなかなか並ばないようなストレートな言葉の数々。これを歌詞として綴れる凄さよ…そこまで言えるくらいの存在があったというのは幸せなことだなあ、と勝手ながら思ってしまった。それでも、ただただ沈むような曲にはならず、どこか物語を読んでいるような"傍観"している感じが醸し出されるのがえびさん詞の"妙"さだなあと。「8月の」とか「水の戯れ〜」のような。
間奏のシンセの音が「家」みたいで、けれどベースもドラムもギターも、あそこまで壮大になりすぎないのがまた絶妙(あっでも『家』のそれはあれで正解だと思うのです、敢えてああしてるのだろうし)。あまりに作り手が感情を盛り上げようとしすぎると、逆に受け取る側の感情が引っ込んでしまう時ってあるじゃないですか…それを淡々と、けれどドライになりすぎないような音に仕上げられてるのがさすがだなあと思う。
 
 
5.4EAE
ラジオで初解禁された時にうっかり聴いて再起不能になってしまい、アルバムまで封印していた曲。イントロの一番最初、星屑がキラキラと落ちてくるようなモジュラーシンセの音から予感はしていたけれど、ABEDON曲+川西詞で、こんなにどストレートに作ってくるとは。そんなのダメに決まってるじゃん…ロマンチックとセンチメンタルの化学反応でエモーショナルが爆発しちゃうじゃん…。
歌詞がとにかく、胸がぐーっと苦しくなって息ができなくなるくらい切なかった。もしかして、「おかしな2人」の男の人から見たお話?と思ったけど、男女だけとも限らないような。あべどんさんの曲だからかどうしても「HELLO」を想起してしまうのだけど、自分の身を削ってでも、なんとしてもタイムマシンに乗り込んで君に会いに行く、という激情にも似たそれとはちょっと違う。だってこのひとは、「叶うなら」と、もう既に今の自分にはどうしようもないことを知っている。「時計の針巻き戻して」なんて非現実的なことだとわかっている。けれどそれでも、そう語りかけずにはいられないのだ。「目を閉じて おやすみ」なんて語りかけて触れられるほど(そんな描写はないけど、そう聴こえてしまう)近くにいるのに、遠いあの世界にいってしまったひとに向けて。歌声の甘さも相まってことばはどこまでもまろく優しい、けれどその奥に深い深い悲しみがたたえられている感触が確かにあって、胸がつまる。
別のバンドの曲を持ち出すのもどうかと思うけど、時計の針、というワードに、モンキー の「Horizon」も思い出してしまった。あの曲も「ベゼルの中の鼓動は戻せやしない」とわかってる、でも「けれど」という言葉が続いて、なんというかこう、癒えていない傷を隠し持っているのが見えているような生々しさがある。けれどこの曲はそれとも違っていて、例えばあたたかな海でも陽の光が届かないほど深いところの水はひやりと冷たいような、目には見えないけれど強い感情が根底にあることが、行間から立ち昇ってくるような感触があるのだ。
その差異が書いたひとのキャラクターによるものか、それとも40代の始めや50代の半ばと、もうすぐ60に差し掛かるひとの違いなのかはよくわからない。けれどとにかく、"遠い世界にいってしまった"、愛おしい(とか、相手に対する感情がはっきり書かれていないのも絶妙だ、これだけ深い愛を感じるというのに)相手とその事実に対する向き合い方が、大人というか悟りの境地に近くてびっくりした。しかも男性で…というのはわたしの固定観念かもしれないけど、なんかこう、特にこういうひとがこうなった時って、男の人の方が整理がつけにくい、印象がある。まだ経験していなくて想像で書いているのかもだけど、過去にこういうことがあったのならば、こう思えるまでにどれだけの…と…。まあそれは詮索するようなことではないけれど。
ちょこちょこと言及もしたけれど、かにさんの歌詞は本を読むひとの言葉だなあと思う。いやみんな少なからず読んでるかもだけど…「Oh,what a beautiful morning」みたいに(語りすぎると止まらなくなるので割愛)、くどくどと説明せず、行間から色々なものを滲ませて受け取り手の想像を膨らませるのが本当に上手い。それが、よくできた小説のようだなあと思うのだ。
そしてそれをとうとうと朗読するかのようなあべどんさんの歌声。目を閉じておやすみ、そんなひとことをこんなにさらりと甘く優しく歌えるひとが他に居ようか。いやいるかもしれないけど、わたしにとってはこのひとただ1人だなあ、などと、それこそ目を閉じて寝る前に聴いていると思ってしまう。枕元で歌われているかのような優しい声、そこにどこかスペイシーなかにさんの「4 E A E」の声がのるのがまた、どこかファンタジックさがあってニクい。
歌詞と歌だけで語りすぎだけど、そのインスピレーションを生んだ曲ももちろん素晴らしい。夜空を周回する星の軌道のようにゆっくりとしたリズム、あたたかで確かな美しさのあるピアノの音。そしてあべどんさんのこういう曲では珍しく?ギターがソロを奏でるのがまたなんとも言えないあたたかさで(気のせいかもだけどピアノで弾いたフレーズみたいなのにね、これは本当に気のせいだと思うけど)、余計に切なさを煽られる。これはわたしの耳が悪かったらごめんなさい案件なんだけど、イヤホンやヘッドホンで聴いて一番度肝を抜かれたのがアウトロだ。左側からアルペジオを奏でるピアノに、数小節遅れてぴったり同じ旋律を奏でるギターが右側から聴こえてくる。これさ、呼応してるよね?音速とはいえど音(もしくは、声…)は光よりも伝わるまでに時間がかかる、けれどちゃんと伝わってる、だから応えてる。遠くにいるけど共に歩いてるんだよね?そう思った瞬間に入ってくるリズムギターと、穏やかなドラムとベースによって、ゆっくりと世界が回りだす。シャッターをゆっくり切って撮影した星の軌道が夜空に描かれていくようなイメージで。言葉はないけれど、ずっと左右で、音色も楽器も違うけれど同じ音が鳴っている、それがどうしようもなく切ない。けれどそんな相手と巡りあえたことは何にも替えがたい幸せだな、と、何回聴いても考えてしまうのだった。
余談だけど、最初に聴いた時に、ちょっとだけ映画「銀河鉄道の夜」のサントラ、特にメイン・タイトルを思い出した。晴臣さんの作ったやつ。圧倒的に美しいものはいつもほんのりとした畏怖をも感じさせる、気がする。
 
 
6.BLUES
眼前がきらめく夜空から急にモノクロのスクリーンに変わる。イントロからそんなイメージだったけれど、歌が入ったら余計に時代劇だった。タイトルが絶対画面いっぱいに広がる勢いのある筆文字。いやわからんけど。
音がとにかくヘヴィでかっこいい!えびさんのベースの音がこんな感じなのもなかなか聴かないような。時々吹いては木の葉を巻き上げるからっ風のようなギターもかっちょいい。とにかく音を重ねるのではなく、抜いたカッコよさで作るのってユニコーンでは珍しいような。ギターやドラムの雰囲気からしてちょっと「Come together」ぽい…?けどこの新しい感じはなんなんだ!?と思ってたら、オーケンさんや向井さんぽいと他の方に言われており、聴いて納得。いやそれモチーフかわからんけど…と思ってたところにかにさんご本人からイメージのご教示が。めちゃくちゃ納得した。「悪童」のあの方(違います)、こんな曲歌ってらしたのだなあ。オーケンさんもカバーなさってたのね。てかブルースって本来こういう感じなのかしら。
歌詞がまたね!!四字熟語、語尾が「候」、そして二番の"引用"には度肝を抜かれた。願わくば〜しか知らなかったよ、その人の歌は…(不勉強)。そしてシメの言葉がなんとローリングストーンズ…もう、参りました。この、半分語りのようなリズムに合わせるのってかなり難しいと思うのだけど、100Vのパンク歌唱に続いて、かにさんの歌声、そして"一見シレッと、飄々とした感じ"をこう活かす道があったとは…。当て書きした(?)作曲者のプロデュース能力、さすがです。「潮目↑を見ながら」がめっちゃ広島弁ぽくて毎回笑ってしまいます(笑うんかい)。
 
 
7.GoodTimeバレンタイン
そしてモノクロの画面の真ん中でどっかりとあぐらをかいていた武士が、突如極彩色のセットと髪と衣装でドラムを叩きながらヘッドセットで歌い出すのであった。何そのカオス。インド映画でも見ないぞ。
サウンドがとにかく、80〜90年代!!って感じで、ああこのひとたちの昔とった杵柄なのだな!!というはまりっぷりにニヤニヤしてしまう。ダサくないのだ、一周回って。多分リズムとグルーヴがしっかりしてるからだろうなあ…こういう曲って上手いことやるの実は難しいんではないかと思う。とにかく「BOOM」の曲が思い浮かんで、ひすてりー!のーのーのーみすてりー!じゃん!という気持ちに。またこのシンセの音でライブで聴きたい!!(そこなのか) あと個人的なイメージとしてロマンティックが止まらない感じなので、ヘッドセットで歌うかにさんの横をあべどんさん(ショルキー)とえびさんが向かい合って歌える形に配置してくれ。たのむ。絶対にかわいいから。
歌詞は絶対こう、「ちら」みたいに、リズムに合わせて口を動かしてたらできたんだろうな〜みたいなリズム重視の言葉が並ぶ。あべどんさんて言葉を音というか語感でとらえるよね、あらいぐまタスカルとかマジすかポリスとか。だからダジャレがすぐ浮かぶ(というか、結果としてダジャレになっちゃう)のかなあと思うw
内容的にはこの年代を思い出すようなお気楽?ラブソング。わたしはちょっとらぶらぶしょうを思い出してしまった(何故ちゃんと表記しない…)。でもなんかこう、らぶしょは一貫して"私"が「愛とはあなたのため」なんて言いつつ結局カラダだけじゃん?みたいにドライというか斜に構えてるイメージなのだけど、この曲の"俺"は、「俺に乗ったら」!と威勢の良さを見せるも結局「君に乗ったら」と"君"にメロメロになってるのが見えて…なんかこう…恋愛感?の違いが出るよなあと…wふふふ。
どうでもいいけどこれ「他乗れないぜ」でスティックで客席指差し待ったなしですよね?また老若男女問わず川西の女が増えてしまう…。レキカンのひとこわい。
 
 
8.7th Ave.
タイトルの字面だけで、7あべ…?と思ってしまった阿部脳(?)は置いておいて。
なんかもうイントロから"らしい"って感じがして、ふふふ、となりました。何らしいかってのはその、対外的なイメージ"らしい"なあ、という。風まかせ、と歌っているけれど、本当に風まかせなひとたちではないと思うもなあ。でもゆるめの?バラエティ番組のテーマ曲になるようなので、これでいいんだろうなあ、とも。旅猿みたいな、さりげなくも存在感のある使われ方だったら嬉しいなあ。
ハープとギターで始まるイントロが、そしてユニゾンやらコーラスが「Please please me」とか「Love me do」とかみたいで、わたしにもわかりやすく、おお!となる。でも途中で突然我が家に花の香りを添え出したので噴いた。いいんかw
なんか、聴いてて唐突に、テッシー楽しそうだなあなどと思ってしまいました。"なりたいボーイ"だ、みたいな話をたまに冗談めかしてなさってるので、そうなのかな〜と思っていたのですが、なりたいというより"となりにいたい"ボーイかなあ、なんて。一応正式パート(とは、ってなりがちだけど、ユニコーンにおいては)だと、ボーカリストとギタリストなわけじゃないですか。その2人が並んで演るのが、なぜかこのバンドでは珍しいのですがw新鮮で面白かったのかなあと。共作だしね。そして7はやっぱりキャップのアレのことなのでしょうかw
ちなみにインタビューによると、ハープは唇から血を流しながら頑張った?とのこと。SONGSのイッセイタカハシ氏みたいなこと仰るなあとこれまた噴きました。あのお二人はわたしの中でどこかかぶるので、ちょっと嬉しくもあったり。
 
 
9.Lake Placid Blue
ビビビビーって感じのオルガンに足踏みするようなリズム。これは!と思ったら魅惑のハイトーンボイス。えびさん曲だ!元気な方の!!(?)
えびさんはよくライブで足踏みしながら弾いてて、それってなかなか難しいんじゃないかなあと思うのだけど(素人考えです)、そうしてると本当に足踏みしてるような、歩幅の揃ったベースの音。さいこ↑ぉう!ぜんか↑ぁい!っていう、よく聴く歌い方が満載で、ライブで演ることをイメージして作ったのかなあと。ベースソロも、こんなに明るい曲なのにぶりんぶりんしたワイルドな音がしてて面白い。そしてそれに追従するように軽快に響くオルガンがまたすてき。最後まで連呼されるこの曲の主役「プレベ」、つまりえびさんの愛器であるところの青い子は、実はあべどんさんと一緒に買いに行ったものだそうな。それを知ってから、どうしてもこのオルガンとベースの音が、行くよ!行こう!って連れ立って楽器の街へ繰り出す様子に聴こえて仕方ないのだったw想像するだにかわいい。
しかし50代で「イケイケ GO!GO!GO!」なんて歌えるのはえびさんくらいのもんじゃないだろうか。いやあの、違う曲調なら歌ってる50代知ってるけどw、なんかこのストレートなワクワク感というか少年性というか、それを出せるってすごい。TYTがあんな曲調だからバランスをとったのかしら。
 
 
10.D-D-D-,Z-Z-Z-
パチパチと何かがショートするようなモジュラーシンセの音。そこにのってくる、エンジンをドライブさせてからぐうんぐうんと周回しだすベース、そして、どっどどたっどどったっどたっ、とこれまたループするようなドラム。この感じはどこかで、そうだ「デジタルスープ」みたいだ、そう思ったところで響く伸びの良い歌声。それに誘われるようにギターが入ってきて、さらに音の混沌の中に引き込まれる。曲中でずっと鳴っている、不協和音のようでいてそうじゃない不思議な音、両側から立ち上るように途切れ途切れに入ってきたり、右から左に通り抜けていくようなギター(民生さんお得意のあのぎゅいぎゅいさせるツマミを使ってるのかしら)(余談だけど楽器編成を見たら、民生さんがジミー・ペイジのアレをやってらっしゃるようで、わー!となった。ミスタッチもコピーできるくらいお好きなんだもんね)。混ざり合わないはずのそれらがマーブル模様のまま一体となって、全身をぞくぞくとさせる。「デジタルスープ」はキラキラと暖かい銀河の中にいるようだけれど、これは違う。もっと重厚でカオスで、言うなれば違う星のジャングルに落っこちてしまったかのような。電気を使う機械で出された音なのに、まだ進化していない太古の生物のうごめきや咆哮や、生命の躍動の真っ只中に取り込まれてしまったような感じがして、心地よさの中にゾワゾワした感触がある。けれど全く嫌な感じはしなくて、もっとどんどん深く深くに飲み込まれていきたい気持ちになるのだ。
次の音に少しずつ食い込んでいくような変拍子と、それに合わせて少しずつ上下するサビの音程がドキドキを加速させる。あべどんさんの声と、「D-D-D-〜」からそれを微かに援護するようなギターの音が混ざり合う。2番目のサビでコーラスの声も重なると、ひとりでいくつもの声を同時に出せる生き物のそれみたいにもなる。ヘッドホンで聴くと没入感が半端なくて、体がまるごと取り込まれてしまったような感覚に陥るのがものすごく心地いい。あべどんさんのソロっぽいと言われそうだけど、いやいやどうしてバンドの音だ。楽器とコーラスと、いろいろな雑味(もちろんいい意味で)がぐちゃぐちゃにかき混ぜられてひとかたまりになって迫ってくる、ユニコーンのライブに行くといつもそんな感覚をおぼえるのだけど、今回のこれは特にすごい。このひとたちはまた、何かを超越した進化をしている。100周年なんて冗談めかして銘打つようなベテランになっても、なお。
サビの"でぃーでぃーでぃでぃー"とかは、GoodTime〜みたいに音に引っ張られて出てきたのかなあと思うけど、その前の歌詞はどこか、バンドで音を出した時の感覚を綴っているみたいだ。グルーヴがガッチリ合った時は何にも替えがたい快感がある、みたいなことを10年前のインタビューであべどんさんは仰っていた。自分にない発想が出てきて面白いというのももちろんそうだろうけど、融通無碍な個性が重なって、個人では出せない莫大なパワーを生む、それもあるからこそバンドで音楽をやる面白さがあるのだろうなあ。
演奏はめちゃくちゃに難しそうだけど、これはぜひライブで聴きたい。ZEROがそうだったみたいに、グルーヴを会場いっぱい、いやはちきれんばかりに響かせてほしい。あ、でも、ZEROも引き続き聴きたいんだよね…(贅沢)。
 
 
11.DENDEN
R&R IS NO DEADみたいなフェードアウトかと思いきやキュウッと音が消えて、一瞬の間。そして聴こえてくる、福音のようなたっぷりしたバンドサウンドとコーラス。わあ!ユニコーンだあ!と、どこか"帰ってきた"、ホッとする感じ。
先行シングル曲だというのもあってか「裸の太陽」みたいな入り方をしているけれど、これがどうして、エンドロールみたいでとても良い。映画に使われたというイメージもあるかもだけど、奥田曲+川西詞、んで全員で一斉に演奏とコーラスという布陣に、ある意味ユニコーンの"王道"みたいな確かさがあって、エンディングにふさわしいなあと。
「サラウンド」みたいなあったかいギターの音、軽やかに響く板さんの音、堅実ながらどこか前向きに歩みを進めるようなドラムとベース。そこで民生さんをメインに全員で歌われる言葉に、実は最初とても泣いてしまったのだった。一歩ずつ、一歩ずつ、四季の移り変わりを感じながら足を進める。比喩ではなく現実にもそうすることができることの、なんと尊いことか。勝手なこじつけだけど、今はライブの前にも溌剌とランニングをしているかにさんの、それができなかったであろう時期にも思いを馳せてしまって、なおかつわたし自身のそんな時期も思い出してしまって、ぎゅっとしたのだった。左の足出して右足出して、ができるって、本当にすごいことなのだ。
映画の関係者の方からもらったのは確か、若い人たちへのエールを、というリクエストだったと記憶している。けれど、この曲には、誰かへ向けたような直接的な言葉は一切ない。ただただ、何もない新天地を目指して歩を進める描写があるだけだ。なのにこんなに背中を押される気持ちになるのは、結成して30年あまり、今のメンバーになって30年、再始動して10年のユニコーンというバンドが、"音楽を、バンドを楽しむ"というテーマのもと活動を続けてきたからだろう。偉そうなメッセージなんて発しない、けれど貪欲に、真剣に、飄々と易々と(見えるように)、全員で音楽と向き合い娯楽となりえるものを生み出している彼らの背中を見せてもらうことだけで、この10年、わたしがどれだけ励まされてきたか。それを改めて思い知らされて、泣けてしまったのだった。願わくば、この福音がどうかこれからも、わたしやわたしたちの人生を太陽のように照らしてくれますように。
 
 
 
 
短期間で作ったから欲が出てない、そこがよかった。渋谷のppで、優しい先生のような口調であべどんさんはそう仰った。頭で考えすぎてない、作り込み過ぎてない、ということなのかな?ととらえたのだけど、そうしたらまあ、見事にそれぞれの個性が大爆発したアルバムになっていました。たとえば「M&W」はメンバーからも「問題児」と言われてたけど(だから一曲目にするっていうのもまた凄い、いやこの位置しかないと思うけど)、いやいやなかなかどうして、アルバム自体が問題作じゃないか。もちろんいい意味で。
一つ一つの曲が混沌とした世界を持っていて、全然違う輝きを放っている。けれどUC100Vと比べて圧倒的に共作が多いというのがまた面白い。メンバーそれぞれの独立した個性というよりは、それらが混ざり合って化学反応を起こした結果がこう、なのかしら。だからそれぞれキャラが立っていても、アルバム全体としてはまとまりがないわけではないというか。むしろ混沌の全てを内包して、一つの"ユニコーン"という個性になっている、そんな感じがしました。しかもそれも、惰性によるものでなく、新たな楽器や手法をも取り入れてまた違った反応…というか、もはやそれを通り越して超新星爆発のような猛烈なパワーを放っている。それがすごい。ガラパゴス的に進化していく面白さときらめきを感じられて、本当にしびれました。いやはや、どこまでカッコいい大人なんだ、このひとたちは。
ライブもまた後半戦がスタートするということで、このカオスな問題児(たち)がどこまで食い込んでくるのか、そしてまたこれまでの子(曲)たちとどんな化学反応を見せるのか、そしてどんな風に進化していくのか。今からそれがとっても楽しみです。

ピアノひとつで何をするのか横浜

ブルーモーションヨコハマ〜♪ (逆)

に、行ってきました。
ナマpp、2日間、4公演。
 
いやあ、凄かった。
凄かった、その一言しか出なくて、悔しいというかなんというか。
文字通り、言葉では言い表せない"体験"が、そこにはあった。
 
不勉強ながら、わたしは今まで鍵盤奏者同士が共演(競演)するようなライブを観たことがなかったのです。なので比較はできないのだけど、このお2人でやるとなると、こんな感じなのか…!と。
なんというか、お二人とも、音楽家だなあと。もちろん元からのお知り合いで、ライブでもレコーディングでもセッションしていらっしゃるのだけど、今回は鍵盤という同じ土俵で、どちらがバンマスとかもなく、対等な立場で"渡り合って"いる。それぞれが紡ぐ世界観を認めて、かつ、セッションではそこにどう入り込めばよいか、どんな糸をどう編み込めばよいか、相手の編み目をたどって考えて、自分の色と模様を足してさらに複雑で彩り豊かな音楽を紡ぐ、ような。
そのベース、というか使うものすべてが鍵盤であること、それがまたとても(わたしにとっては)新鮮で、けれどどこか懐かしくて、心をふるわされっぱなしでした。
 
そんな体験、できれば記憶にずっととどめておきたい。というか、とても文章では表現できない…けど、最近本当に(と毎回言っている気がする)記憶のこぼれ落ち方が半端ないので、書くだけ書き記しておくことにしました。
レポというよりは、感想ばっかりです。
 
 
Motion Blueは横浜の赤レンガ倉庫2号館の3階。会場と反対側の階段から上ってしまったので、バルコニーを通って行ったのだけど、そこからの眺めがとても良かった。
港に入り組んだ海が見えて、白く浮かぶ雲と船がゆっくりと動いていて、庭の木々と芝生の緑の奥にみなとみらいの観覧車も臨める。港町特有のハイカラでゆったりとした雰囲気のロケーション。暑くなかったらソファでお茶でもしたかった。演者お二方はランチ?したようですがw
 
開場の30分前から物販やります!とのことで、勇んで向かうと、スタッフさんに混じって…というかメインの売り子さんな感じでユッキさんがいらっしゃる。
青のトートバッグを買ったら「(飾りのしゃらしゃらが)革製品なのでツブツブが表面に付いちゃうんですけど、そのうち落ちますので…!」と丁寧にご説明してくださった。確かに皮の屑みたいなやつが付いてしまってたけど、これはこれで銀河みたいで良いなあと思ったり。濃くて鮮やかな青、大好きな色なのでお気に入りです。
 
受付で名前を照合してもらって(というところで色々わたわた連絡したりして皆様方にご迷惑をおかけしてしまいました…)、整理番号のついた札を渡される。1stが青で2ndが白。この配色も素敵。
宇宙船のような、くすんだ銀のトンネルみたいな通路を通って足を踏み入れると、真正面に「motion blue」の文字がバックに光る舞台が。
 
上手にはYAMAHAのグランドピアノ。蓋を開けたところに、クリスマスに使われるようなイルミネーション用の電球で飾り付けがなされている(電気はまだついてなかった)。譜面台の奥にモジュラーシンセ、後から気づいたけどその向かって左側に小さい板さん(Seaboard)。
舞台手前、ピアノから見たら側面に小さなテーブルがあって、そこにエフェクターみたいなサイズと形の機材、あとメトロノームが置いてある。
舞台真ん中の奥に小さなテーブルがあって、そこにノートパソコンとミキサー?が置いてある。すずらんみたいな形のランプがやわらかな光でそれを照らしている。これ、どこかにもあったなあ。1173 studioだったかしら。
舞台下手にはハモンドオルガン、その奥にレスリースピーカー
そして、舞台手前のど真ん中に、ガイコツスタンドマイク。
おお、本当に鍵盤奏者2人だけで演るのだなあ…!と胸が高鳴るのでした。
 
時間になると、ゆっくりと暗くなる会場。
そして突然そこに響きわたる、あからさまに歌謡曲ぽい音楽。回り出すフロア天井のミラーボール。
フロアの下手後方の扉が開き、出てきたお2人。
なんと、ギンギラギンのジャケットを着用していらっしゃる…!!!
あべどんさんのは百が如くツアーのアンコールで着てた、フレディリスペクト(?)なやつ。中にナマピーのTシャツ。そして有太さんは紫っぽい色の、こちらもまた全身ラメラメのジャケット。フロアを通って舞台に上るお2人、ガイコツマイクを真ん中にぴったりくっついて歌う。
 
「街の灯(2日目から『派手な上着』になってたような)がとても綺麗ねヨコハマ♪
ブルーモーションヨコハマ〜♪
電車で2人 来た訳よ〜♪」
 
そしてこの記事のタイトルにつながる。いや、もう、度肝を抜かれました。爆笑したけども。会場全体の、ちょっとかしこまった感じが一気にほぐれました。やられたw
というかアベストテンに続いて、有太さんがこんなことをやってくださるとは思わなかった…w←あべどんさんをなんだと思っているのか
1日目の1stはちょっと遠慮がちに有太さんの左肩の下へゆるく握ったような右手を当てていたあべどんさん。2ndでは有太さんがあべどんさんの右肩にしっかり左手を置いて肩を組むようにしていたのでした(ちなみにそうとうお酔いになられていたらしい)。2日目はあべどんさんのふわふわパーマがちょっと有太さんのおでこにかかるくらいくっついてらした。かわいい。
 
有太さんがガイコツマイクを自分の方に斜めに引き寄せて(この仕草が回を重ねるごとに様になっていくのも面白かったw)、「わた〜しが、おさ〜きに♪」と歌うと「あっ、どうぞどうぞw」とコントみたいに手を差し出すあべどんさん。
有「あべどんと〜」
A「さいとうの〜」
2人「最高の夜を〜♪ あな〜たと わた〜しは 赤いレンガで夢の中〜♪」
ひとしきり替え歌を歌いきると、まだ流れている音楽にのせてあべどんさんが語りだす。
 
A「今日は本日お越しくださいましてありがとうございます」(1日目の1st。かわいすぎた)
まずは斎藤有太が歌います、と司会者の如く紹介。ジャケットを脱ぐ有太さん。
1日目の2ndはそれを受け取って、頭上に両手を挙げて、わ〜〜!と子供のようにフロアを小走りで駆け抜けていくあべどんさんw 2日目の1stでは有太さんに向かって手をヒラヒラ〜とさせて、そのまま後ろ向きに小走りで退場したのでした(あむない…)。
 
 
さて、まずは有太さんのステージ。
1stでは白シャツ(よく見ると模様がついていた、オシャレ)、2ndでは薄い水色?で両胸のポケットの折り返しだけ豹柄になってるシャツ。ジーンズと、VANSのっぽい黒&黒チェッカーの紐なしスニーカー。とてもスマートだった。
ピアノについたらこちらを向いて、毎回「もう遊びは終わりですから。ここからオチはありませんw」と笑ってらした。
2日目の1stでは、用意された楽譜のファイルを見て「これ楽譜違うな?」とキョロキョロ。舞台上のファイルを開くも、これも違うな?と。「困ったなあ…w」と、ちょっとあせりつつ?も先に告知などしている間に、Jメンさんとヨッシーさんが届けてくれる。しかしこのハプニングが、のちのちネタになろうとは…w
 
セットリストは公式さんがアップなさってたので割愛するけど、結構毎回曲をいろいろ入れ替えてらして、そのどれもが素敵だった。
特に毎回最初に演っていらした「夏の日」という曲。イントロの、木漏れ日のようなきらきらとしたピアノの音からもう心を掴まれてしまった。
有太さんの歌声は初めて拝聴したのだけど、いい意味で、某米津さんとかのような現代っぽい青さがあるのにびっくり。けれど確かな力強さも持っている声。
真夏の昼間の道に一人で立っている時のような、日差しがギラついて逃げ水がゆらゆらして蝉の声がうるさくて、それなのにどこまでもしんとしている、あの感じ。暗く涼しい室内にいるのに、歌とピアノがそんな風景を紡ぎ出して、なんだかノスタルジーにかられて毎回涙が出てしまった。この曲を聴きたいがために(もちろん他の曲もとても良かったけど)、アルバムを買ったくらい。音源の方もとても良かった。
 
2曲目、これも毎回演っていらした「ミスムーンライト」。これがまた、モノクロの外国映画のような曲調で、オシャレですてき。歌詞もなんだかそういうストーリーっぽくて、ちょっとどうしよもない感じなんだけど、どこか憎めないような。阿部さんソロの「ドラマ」を思い出しました。いつか音源化してくださるのかしら。
 
ノリの良い曲では「手拍子してもいいんだよ」「歌ってください」とお客さんを誘うw有太さん。背筋を伸ばしながら、踵でリズムを取りながら、軽快に演奏するのがすてき。
1日目の2ndでは「予定になかったんだけど」と、以前この会場で外国人アーティストのサポートを急遽(!)やることになった時に、斎藤の曲もやろうよ!と言われて演った「列車」という曲も。その時も楽しかった、と仰っていらした。急なオファーでもそう思えるってすごいなあ。
 
そして1公演だけ、曲のアウトロから繋げて、インストで「ダニーボーイ」を弾いていらしたのが、本当に素敵だった。
洗いざらしのシーツがどこまでも広い夏の青空にはためいているのをぼんやり見ている時のような、確かな存在があるのにどこか心の切なさを感じる部分をふわりと揺らされるような、そんなイメージ。ピアノに似合う(なんて、偉そうには言えないけど、お洒落という言葉だけでは言い表せないくらい素敵だったのだ)アレンジと、曲の意味とが相まって、なんだかとても夏の夜にぴったりの演奏だった。
 
「去年も同じ時期に横浜に通って、あべどんにマスタリングしてもらったんです。16年ぶりにソロアルバムを出しまして」と。そして「横浜いいよねえ」と繰り返す有太さん。
1日目の1stの最初は「すごい(お客さんから)見られてる…w」とちょっと緊張なさってた?けど、だんだんこの雰囲気に馴染んでいく感じがまた素敵だった。
 
そして途中で「告知していいですか?」と。ぱらりと楽譜ファイルをめくって「あべどんのピアニッシモvol.2が決定しました!」と、先にあべどんさんの告知をなさる有太さんw ご自身のナマピーの告知ももちろん。アルバムを作ったけどそのままじゃもったいないから月一でライブを演ってて、最初はどうしていいかわからなかったけど最近は慣れてきた、みたいなお話をなさっていた。
 
さて、ひとしきり演奏して、ではここで、とあべどんさんを呼び込む有太さん。
2日目からは「尊敬できるアーティストです」と。それを聞いたあべどんさん、今までご自身がついていた、出入口に一番近いボックス席のテーブルに、シャンパングラスを持った腕をついてうなだれるようにしながら「『尊敬できるアーティスト』って…w」と、隣にいたJメンさんに向かって苦&照れ?笑い。
それでも、舞台に上がると(1日目の1stは特に)、「いいよお、いいよお」と有太さんに向かってうんうん頷きながら拍手を送ったり握手したりするあべどんさん。本当に認める時ってこういう言い方をなさるような。ちゃんと聴いていらしたのだなあ。今度は有太さんが困ったようにニコニコ。
あべどんさんがグランドピアノにつき、有太さんはハモンドオルガンへ。
ここでほんの僅かながら談笑タイムがありまして。
 
1日目の2ndでは、有太さんが結構酔っ払ってらして(と、ご自身で仰っていた)、確かここだったと思うのだけど、舞台に上がったあべどんさんを握手したままちょっと引き寄せて「相当酔ってる」と耳打ち。いや、マイクは通ってないですが、こっちにも聞こえてますw
 
2日目の1stでは、さっき譜面が無くて…と言う有太さんに、
A「ふめんがふめいだったのね」
有「譜面が不明だそうです(お客さんに説明w)」
A「俺のもなんか違うよ?」
あべどんさん、自分の黒い楽譜ファイルを手に取る。と、そこには、
A「『NOTE DEATH』って書いてあるよ???」
表紙に貼ってある、白地にあのwフォントで「NOTE DEATH」の文字が書かれたステッカー。なんという仕込み!!w
A「これ俺すごい準備したんだから」
有「忘れてた…w」←あべどんさんがこういうひとだってことを、と思われる
A「(立ち上がって)これ危ないやつじゃないの?(ファイルを床に落として)落ちてるやつじゃないの?」
有「やばいやつじゃないの?w」
A「だいじょぶ、日本語だから。『ノートです(明るい声)』!って」
いやあ笑いました。実はその後もうひとネタあったんだけどもw
そして別のファイルを手にしたところ、中に挟んであった(ちゃんとファイリングしてなかった?)クリアファイルみたいなものをいくつもばさばさと落っことしてしまうあべどんさん。その図ソリストでも見たなあw
少しして気づいたヨッシーさんが拾いに来たのだけど、「気にしなくていいの」と声をかけていらした。あべどんさんにとっては些末事なのでしょうかw
 
2日目の2ndでは、ピアノについて数秒で「なぁんか視線を感じるんだよね!?」と、有太さんの方を振り返るあべどんさん。「いやあ、なかなかこうやって(あべどんさんの背中)見ることってないから」と、有太さん、にっこり。そうだよねえ、鍵盤を弾くひとが自分以外に居ないと、この図はなかなか…などと勝手に納得するわたくし(?)。
 
で、お2人で演奏したのは、「ジャストライク」!音源だとMTRY演奏&民生さん健くんコーラスで録ったやつ。
これがまた、ロックンロール!って感じのノリの良い曲なのだ。最初からお客さんに手拍子を促す有太さん。
「お前と踊っているのさオーイェー!」とか「やりたいことなら尽きないぜ〜」とか、コーラスワークが素晴らしく良い!あべどんさんの声はどんな人のそれとも親和性が高いのが不思議だなあといつも思うのだけど、有太さんの声ともしかり。オルガンとピアノ、音色の違う二つの楽器の音が醸し出すグルーヴも、2人しかいないのにバンドサウンドのような厚みと広がりがあって、めちゃくちゃにかっこいい。回を重ねるごとに、あべどんさんの左脚が刻むリズムが軽快になってゆく。
ソロは互いに「ABEDON!」または「斎藤有太!」と掛け声をかけられた方が奏でる感じだったような。背中を丸めてキラキラしたピアノを奏でるあべどんさん、爪が鍵盤に当たる音も軽快にオルガンを弾き倒す有太さん。1日目の1stは、曲の最後にあべどんさんが両手で有太さんを指して手をヒラヒラ〜っとして、有太さんがシメていたのだった。
立ち上がり、がっちり握手を交わすお2人。爽やかな笑顔で舞台を去っていく有太さん。
 
 
「さあて、俺の出番かあ」
1日目の2ndではこう独りごちていた。おもむろにピアノの側面(舞台手前)にゆっくりと歩いていくあべどんさん。
ちなみに衣装は、1stが黒のロングジャケットに白いVネックT、2ndが黒のジャケットに水色のVネックT。つまり去年のソリストと同じわけですが、髪型とまるめが茶色グラサンで、なんだか伊達男な雰囲気が格段にアップしている。ケーブルネックレスは青か黒、ブレスレットは青と黒を両方左手につけていらしたような。
 
ピアノより手前にあるテーブルに置いてあった本を手にとって、真剣な顔でぱらりとめくる。舞台がやや暗いので、いつのまにか手にしていたマグライトで照らして眺めていらした時も。一体何を…と思いきや、舞台近くのお客さんからクスクス笑いが。後でよく見たらかの有名な写真集、サンタフェ。なんか学者みたいでかっこよかったのに…w今回というかppのミューズは彼女なのでしょうか…
それを片手に、あるいは閉じて(ちなみに2日目の2ndでは挟まっていたポストカード?が落ちてヨッシーさんが拾ってあげてた。そしてそれを見えるようにテーブルに立てかけてらしたw)。
そこからの時間は、息を飲んだまま呼吸を忘れてしまうような、スリリングな芸術の世界だった。
 
・1日目の1st
サンタフェを片手に、ピアノの中を何やらいじるあべどんさん。メトロノームを中に入れ、カチ、コチ、と刻まれるリズムの中、ティンパニを叩くようなバチで、ピアノの弦を叩く。不穏な足音を表す効果音のような低めの音が、なんとなく胸をどきりとさせる。
 
・1日目の2nd
メトロノームと同じくらいの大きさのエフェクターのような機材のスイッチを入れる。と、流れてきたのは「たらっ、たらっ、たらったらったらったらったら〜たらららら♪」と、ピンクパンサーのテーマを歌うあべどんさんの声。会場に広がるクスクス笑い。機材をピアノの中に入れ、ツマミを動かすと、だんだんテンポと声の高さが上がって、ユニコーンのライブのアンコールでおなじみミツバチさんのような声になる。それをまたゆ〜っくり戻して、機材を取り出して、メトロノームに交代。1stと同じように、やや不穏なメロディをバチで奏でる。
 
・2日目の1st
バチを両手に持ち、ピアノの弦を叩くあべどんさん。1日目のややゆったりしたテンポとは違う、木琴奏者のような手さばき。鍵盤を押した時にハンマーが奏でるのとは違う、くぐもったような不思議な音。メトロノームも中に入れていたような。
 
・2日目の2nd
サンタフェを片手に、もう片方の手に持ったバチでピアノの側面を叩くあべどんさん。その後また両手で弦を叩き、中の仕切り部分も叩き、バチの反対側で弦をカリカリとはじく。さながら大きなオルゴールを奏でているよう。
 
舞台のバックにいつのまにか降りてきていたスクリーンに、1日目は等間隔に並ぶたくさんのラインが静かに画面の真ん中を横切っている(時々、まわりに飛沫のようにキラキラと細かい三角形が光る)。2日目はDNAのらせん構造のような、銀河を横から見たような、靄がかった点状の帯。
それがどちらも、あべどんさんの鳴らす音に呼応して小さく波打つ。黒いスクリーンの上でゆらゆらと揺れるそれは、夜の海の波を可視化したようであり、はたまたごくごく小さな生命反応のようでもあり。
 
ピアノの中の電球もいつしか光を放っている。すずらんの形のランプと同じ、昔ながらの黄色くてやわらかな灯の色。蛍の光みたいに、ゆっくりと不規則に点滅している。
 
薄暗い中で行われる一連の…演奏というか、作業というか。
それがなんだか、小手調べというか、調律とはまた違うタイプのピアノのご機嫌伺いというか、そんな感じに見えて、ドキドキした。
画面と、音と、光。ゆっくりと静かな、でもどこか繊細さのあるそれらが合わさると、なんだかピアノが大きな生きもののように見えてくるのだ。光は生命反応、画面の波は電気信号から生まれる鼓動、音はそれぞれの臓器が出すそれをあらわしている、かのような。
本を片手にゆっくりと歩き回り、マグライトで照らしながら"作業"をするあべどんさんは、ピアノに命を吹き込んでいるようで、魔法使いかマッドサイエンティストか、わからないけれどどこか畏怖すべき存在のようで、固唾をのんで見守ってしまった。まあ、手にしてる本はアレなんですけれども…
 
そして、なんというか、ピアノというのは面白い楽器だなあと。弦や周囲を叩くと打楽器になり、弦をはじくと弦楽器にもなる。
もちろんどちらも本来の奏法ではないのだけど(ハンマーが弦を叩いているにしても)、音楽って自由でいいんだ、と、ユニコーンを好きになって真っ先に教わったことを、また改めて背中で示してもらった、ような気がした。
 
ピアノに命を吹き込んだあべどんさんは、おもむろにモジュラーシンセに向かう。
百が如くツアーの開場中に流れていた音。配管室に迷い込んだかのような、空気の流れと時々水滴が落ちるのが混ざったような音。あれみたいな音をベースに、つまみをひとつひとつ微調整しながら、音楽のような、"倍音"のような、機械的だけどなぜか心地よいような音が生み出される。2日目は指揮棒を持ってシンセに向けて動かしながらツマミをいじってらして、勤労ツアーとかで片手をひらひらさせながらソロを弾いてらした姿を思い出した。あと、海を矛で混ぜて島を作った神様の話もなんとなく思い出す。
モジュラーシンセの音にも呼応して、波打つ映像。2日目はそこに、正面からあべどんさんをとらえた映像がぼんやりとかぶさる。
頃合いを見て、そっと椅子に座り、鍵盤に手を置くあべどんさん。
 
ゆっくりと奏でられるメロディが「白い虹」のイントロになる。
よく晴れた朝に…という歌にも呼応して、というか一番敏感に反応して、さっきよりも大きく波打ちだす映像。これがまた、凄かった。
歌のアレンジが、毎回違う。最初は静かに、サビにくるとうわあっと歌い上げる、そんな大まかな流れは同じなのだけれど、細かなニュアンスや緩急のつけ方が少しずつ変わっている。特に2日目の2ndは、Aメロまで全てピアノで弾いて、「ああ ゆるりと」から静かに歌い出していたり。
そしてあべどんさんが大きく歌い上げるとともに、横にゆらゆらしていたはずの映像の波がぐわりと高さを増して、ざばんとこちらへ覆いかぶさるように向かってくる。それこそ白い虹がかかるのを根本から見ているようでもあって、引き込まれて目が離せなかった。
 
曲が終わっても、アドリブ?で演奏は続く。このシームレスな流れに、百が如くツアーのライブ後半を思い出す。
ここでだったか、2日目の1stでは、どこか耳慣れたクラシックのフレーズを奏でていらした。のちに"アヴェ・マリア"だと教えていただいたのだけど、ピアノのフレーズに合わせて板さんからチェロみたいな低めの弦楽器のような音も出していらして、まるで一人で小さなオーケストラを形成しているかのようだった。凄い。一人でバンドをやっちゃうひとは何人か知ってるけれど、それをできるひとってなかなかいないんじゃないかしら…。
 
両日とも2ndでは、そのままピアノが聴き慣れた星屑みたいにキラキラしたフレーズを奏で始める。「欲望」だ。
最初の音源の時よりも声の量と伸びと確からしさが格段に増した、今のあべどんさんが歌うこの曲。それこそ昔誰かに宛てて書いた手紙を、相手の部屋から偶然見つけ出してひっそりと読み上げるような、切ない思いではあるけれどそれがもう自分の一部になってしまったような、そんな歌になっていて、今のあべどんさんだからこそ似合うんだ…!と鳥肌が立った。去年のソリストで聴いたそれとも、ライジングで聴いたそれとも違っていたのだもの。
でもあるいはきっと、その時々によって、この曲は意味や顔を変える。テクニックによるアレンジの違いからくるものというよりは(もちろん、経験やスキルがないとアレンジもできないのだろうけど)、なんというか…人生の中の出来事のとらえ方が、起きたばかりと、それから数十年経ってからだと、少し見方が違ってくるような、そんな変化や意味を持たせられる曲なのだなあと思い知った。それを30歳そこそこで書いてしまうのが凄いのか、はたまたそうやって進化させていけるほど年々音楽家として成長してらっしゃるのが凄いのか…きっと両方なのだろうなあ。
そして一番(これももちろんいい意味で)ゾッとしたのが、1日目の2nd。「抱きしめたくなる…」と歌が終わるか終わらないかというタイミングで左手が板さんに伸び、ギュウウウと急転直下するような低い音が響く。それと同時に照明が暗くなって、思い出の波間に揺られていたのが、いきなり深く暗い海の底に引きずりこまれたような感覚に陥って、鳥肌が立った。
 
途切れることのない波(それも、水面のそれではなく、海の底だけを行き来する水流のような)のように、演奏は続く。
ピアノがだんだんと「R&G〜」のあのメロディを奏ではじめる。「BackGRound」だ。
去年のソリストの時のように、高い空に響かせるように歌い上げるあべどんさん。あの時は高橋さんのコーラスがあったけれど今回は一人。けど、十分に広がりのある、海の上に広がる真夏の空のような、ぱあっと明るい歌だった。
音源よりも少し速いテンポ(だった気がする)の間奏のフレーズが、思わず駆け出してしまうようなキラキラ感にあふれていて美しい。盛り上がる歌と演奏に呼応して、画面の波が大きくうねる
2日目の1stは欲望のそれと同じく、波が画面を超えてこちらに覆いかぶさってくるような迫力。それくらいの大波を生み出すほどの声と音。2ndではさらに、星屑が放射状に迫ってくるような映像になっていて(あんまりいい例えじゃないけど昔のWindowsスクリーンセーバーみたいな。でもあれわたしはすごく好きだったのだ)、曲の持つ多大な威力が耳と目の両方から迫ってきてくらくらしそうだった。それなのに押し付けがましくない、どこか優しくていつまでも目と耳が離せない。そんな"体験"。音楽は耳以外でも"感じる"ことができるということを、生まれて初めて身をもって知った。
 
歌が終わってもまだ演奏は続く。そこにすうっと現れて、真剣な表情でハモンドオルガンに向かう有太さん(2日目の1stでは、あべどんさんさんが無言でフロア後方に向かって手を挙げ、呼び寄せてた)。ピアノの蓋が「A」になってるあべどんさんT、非売品なのか地がグレーのを着ていらっしゃる。
そこでピアノから奏でられたのは、コロコロと転がるような光の粒みたいなフレーズ。「Beautiful day」だ。
これがまた凄かった。この曲も、あべどんさんは歌い上げる。去年のソリストではデッドな音で静かに奏でていたこの曲を、ピアノの旋律とともにとにかく歌い"上げる"。2日目の1stでは「蒼き水晶ぉー↑おー↑!」と二段階上げてきたかと思いきや、2ndでは「どうよーーーどうよ↑ーーーーー!!」と若干叫ぶように歌う。元の歌詞は「そうよ どうよ」だけど、どうよ!!とめいっぱい叫んで、海に?空に?聞いているようにも聴こえて、とてもエモーショナル。けれど全てをかなぐり捨てるような雑さはなくて、どこまでもきちんとした美しさというか、いい意味で自分の地平(単なる"地"ではなく)に足がついているような気がして、だからこそ胸を優しく、けれどしっかりと掴まれてしまう。
そんなあべどんさんをめちゃくちゃに真剣な表情で見つめながら演奏する有太さん。ピアノに向かったまま振り向きもしない背中に視線を送りつつ、そのひとが奏でる音を聴いて自分の音を絡めていく。例えばギターのソロバトルとかユニゾンのようなぶつかり合いやじゃれあいではなくて、冒頭にも書いたけれど、一方があざなったものの目を瞬間的に丹念に見て、ほどいたりすることなく自分の色の糸を縒り合わせていくようで、なんだかものすごく芸術的にハイレベルなことをやっていらっしゃるのでは、と震えてしまった。とにかく、お二人それぞれの青い炎のような静かな気迫に圧倒されてしまった。
だんだんだん、だん、という最後のフレーズを弾き終わり、だーーーっと鍵盤を叩くお2人。初日1stの最後はあべどんさんが有太さんを両手で指してシメてもらってた。
ふわっと照明が明るくなり、「斎藤有太!」「ABEDON!」と称え合うお二人。そこでやっと、引きずりこまれた海の底から、いつのまにか晴れ渡る浅瀬の波打ち際に戻ってきていたような感覚をおぼえる。(もちろんいい意味で)ずっと詰めていた息をほっ、とつきながら、我に返ったように拍手するわたしなのだった。
 
またゆうゆうとフロアを歩いて去って行かれるお二人。
鳴り止まぬ拍手の中、両日とも2ndはアンコールがあった。有太さんがオルガン、あべどんさんがピアノに座る。
 
2日目は確かここで有太さんが通りがけにサンタフェをチラ見して「これかあ」などとあべどんさんに話しかけてらしたw
そしてまたさっきの「NOTE DEATH」wを手に取るあべどんさん。
A「(フロアに見せて)"ノートです"!日本語だから。拍手しない奴は一人一人名前書いてくからな」
有「怖いよねえ、俺がさっき楽屋にアンチョコを置いてきちゃったんだけど、その後『俺もなんか違う』ってw」
ここで演奏が始まるかと思ったその時、有太さんが一人でおもむろにオルガンを奏でだす。聞き馴染みのあるイントロ!
有「ハッピーバースデートゥーユ〜♪ ハッピーバースデーディアあーべど〜ん♪」
と、下手から運ばれてくるケーキ。バックのスクリーンにはあのモノクロのアー写にハッピーバースデーの文字。
ピアノの椅子に座ったままうつむくあべどんさん、グラサンを取ってタオルで顔を拭き「はずかし…w」とポツリ。これがもうなんなのかってくらい最強に可愛すぎた。さっきまでなんなら畏怖すら感じてたんだけど、この素でこぼしたような一言は最高に可愛かった…
観念して(?)ステージの真ん中でろうそくの火を吹き消すあべどんさん。と、有太さんが「もう一人お祝いしたい人が」と、またもやハッピーバースデーを奏でだす。コールされた名前は「吉田くん〜♪」だったようなw
去年に引き続きヨッシーさんもお祝い!バックの画像も、アー写の右上に何かをかじってる?ヨッシーさんの写真がコラされた画像になっているw ずーっとそれを下手の端っこで小さくなって聞いていて、曲が終わると照れるというか恐縮しまくりながら出てきて、ケーキのろうそくの火を吹き消すヨッシーさん。本当にいつもありがとうございます、これからもどうぞよろしくお願いします…!(何様)
そしてこんな風にスタッフさんも含めてお祝いする…というか、職業人として対等に見て認めていらっしゃるところ、改めて素敵だなあと思うのでした。
 
2日目はさらに、じゃあアンコール!とピアノに向かったあべどんさん、「赤い靴〜は〜いてたら脱げた〜♪」と一節歌い上げ(後で調べたら嘉門達夫さんの歌らしいw)、そのまま立ち上がって去ろうとするw いやいやいや、みたいになる有太さんとお客さんにすっとぼけたお顔を見せて、「ダメ?ぶぶー?」と、両腕を胸の前でクロスするあべどんさん。いや可愛すぎるから(当日2回目の身悶え)。
それを見た有太さんが「エーックス?w」と軽いアクションつきで真似すると、お客さんから\エーックス!/とレスポンスが。「なにその一体感!?ぶぶー?エーックス!」と世界一ゆるいC&Rを要求してくるあべどんさん。子供みたいでとっても可愛かったw
 
さて、といった体で再度ピアノに向き直るあべどんさん。スッと短く息を吸って歌い出したのは、
「猫の手さえも貸したいくらい」
うわーーーーー!!!!!「開店休業」だーーーーー!!!!!
こーれがまた!とても!!よかったのです!!!
リングサイドのツアーファイナルで健くんがちょっと歌ったのとも、見事なアレンジでABE&OKUDAが歌い上げたのとも、ユニコーンでフェスで演奏していたのとも、そのどれとも違う歌。というかわたしはあべどんさんがメインで歌いきるバージョンをちゃんと聴いたのはこれが初めてだったのだ。風花雪月のように、弾むような歌い方をするAメロは健在。そこに軽快ながら優しいピアノとオルガン、有太さんのコーラスが寄り添って、初夏の日差しのようなやわらかな明るさが醸し出される。
なんというか、欲望でも思ったけど、この曲ではさらに「今だからこんな歌になる」といった雰囲気で、とても良かった。バンドの音源はもちろん、ソロのそれも繰り返し聴いたけれど、なんだろう、今まで聴いたどれよりも"確からしさ"があったというか。歌詞だけ読めばどうしようもないヒモ男みたいなイメージが浮かぶんだけど、ふたつの鍵盤の音にのせて昔よりはるかに声量も多く伸びのある声で歌われるそれは、ストーリー性よりも"いつもそばにいるだけだけど愛してるよ"というワードが胸に迫ってくる、そんな強さと優しさを持っていた。例えば寄生しているw恋人とか、結婚したばかりの相手とか、そういう人に向けて言っているのではなくて、なんというか…壮大かつ自意識過剰が過ぎるけれど、あべどんさんの生み出す音楽が、というように聴こえてしまったのだ。勝手な解釈だけれど、折にふれてあべどんさんの音楽に、音楽に向かうその姿勢に、背中を見せてもらっている気でいる自分にとっては、胸がぎゅーっとするようなあたたかさに満ちた演奏だった。
1日目のシメはあべどんさんがお尻で鍵盤に乗りw、それを見た有太さんも遅れてお尻で鍵盤に乗っていた。
2日目は最後のフレーズを「そんな日には有太とそうね横浜にでも〜」と替えて歌い("有太"って呼んだ!となぜかドキドキするわたくし)、おしまい。椅子を離れると、ステージ中央で「よかった!よかったよぉ!」と両手を上げて回りながら笑顔で飛び跳ねるお二人。おもちゃみたいでこれまた可愛かったw達成感も、ホッとしたのもあったかしら。とにかく晴れ晴れとしたお顔でした。
 
 
そんなこんなで、素敵な、楽しい、けれどそれだけでは終わらない、芸術的で真摯な演奏の饗宴2日間が終わったのでした。
まとめみたいなものは冒頭に書いてしまったけど、とにかくこれまでは本当に、美しいなあ、楽しいなあ、で追いかけてきたあべどんさんの背中が、少しだけ畏怖すべきもの(繰り返しますが、いい意味で、です。どこか崇高で異次元的であるというか)に見えて、またもや違うお顔を見せてくれるのか…!とドキドキした2日間でした。
それはもしかしたら、これまでの経験がそうさせたのかもしれないし、あるいは新たな興味や会得した知識技術によるものかもしれないし、有太さんとの"渡り合い"によって生まれたものなのかもしれない。
神戸でのピアニッシモには参加できなかったのだけど、写真とかの断片的な情報から察すると、多分横浜のそれとはまた違ったのだろうなと。もちろん共演者の有無や待ち時間の違いもあるけれど、それだけではない何か。さて、それはなんなのか。
 
去年のソリストではスタジオの一角を観せてもらったような気持ちになったけれど、今回はなんだか、音楽が生まれる瞬間、を可視化して観せてもらったような気がしています。
楽器の調子を見て、息遣いを合わせて、その場その場で生まれたアイデアとその日その時の雰囲気をも合わせて、曲を作り上げ、アレンジしていく。アイデアに息を吹き込んで音楽にする、または音楽で世界を創り出す様は、繰り返すけれど本当に神様のようだった。
でも、ピロウズの曲ではないけれど、自分の頭の中では誰だって自分自身が王様であり神様で、触れて感じて吸収し、自分の中にあるものと融合させて生み出す、そんな作業をきっと誰しもがおこなっている。あべどんさんの場合はそれが音楽であり芸術で、なおかつそれを頭の中だけでなく他の人も触れられるように外へ具現化して生み出せる力をお持ちなのだなあ、と、改めて、その創造性にこうべを垂れるしかなかった。
そしてこれは多分だけど、そんな作業をおこなっているからこそ、二度と同じ演奏はないだろうし、できない。それはつまり、ライブが"LIVE"と称されるが如く、音楽というものが実体のない芸術で、生き物のように同じ瞬間を生きることは二度とないものだからかもなあ、と思うのでした(まあ、生き物が生み出すものだから、当たり前かもしれないけど)。
もちろんCDとかを繰り返し聴けば同じ演奏が聴けるけど、多分それを流す機材や状況や受け取る側の気持ちによって、きっとその都度、形を変える。そしてそんな"生き物"と対峙するには、それなりのパワーも必要である。それを改めて実感させられたような気がして、身が引き締まるような思いでした。
 
それこそ二度と同じものはない、だから全てを見聞きしたい。そうも思うけれど、なんだかもしかしたら、その日その場に居合わせた時が聴き時でもあるというか…うまく言えないのだけど、ライブと自分のタイミング(休みやチケットが取れたか否かとかも含めて)が上手く合った時だからこそ出会える体験というか。人と人との出会いもそうだけど、その日その場所そのタイミングで会えたからこそ仲良くなれたとか、生まれるものがあったとか、そういうのと同じような気がしました。
だからきっと、いつどの公演に行ったとしても、何回繰り返し行っても1回しか行かなくても、その時の受け止める自分が"生きる"ことをできていれば、きっと同じくらい、心を震わされると思う。感動に上限があるとかそういうことじゃなくて、充足するかどうか、というか。多分相手も自分も(そして芸術も)生きているって、そういうことだ。
生きてりゃきっと会えるから、生きてりゃなんとかなるだろう、そんなフレーズを思い出すような公演でした。
 
まあ、とか偉そうに言いつつもやっぱり原始的なところでというか、少しだけお洒落をして、会えたお友達や他のお客さんと美味しいものを飲み食べしつつラグジュアリーな空間で音を楽しむ、という体験だけでも、毎度ながら本当に楽しかった。とても贅沢な経験をさせてもらっている、自分を大切にさせてもらえる(お洒落をするというのはわたしにとってそういうことなので)、そのことだけでも十分に有難く思っております。
 
 
最後に。
1日目の2ndでだったか、有太さんが「次(のナマpp)は決まってないんですけど、阿部くんと相談します」と仰っておられまして。
2日目には「次は決まってないんですけど、俺は楽しかったので。次があったらいいなと思うので俺がABEDONを説得しますw」という、頼もしいお言葉も。
「この歳になってこんな楽しいことがあるのはミュージシャンならでは」と、ピアノの前でお話されていた有太さん。あべどんさんもすごく有太さんをリスペクトしていらっしゃるのを感じたし、観ているこちらからしてもとても素敵な共演なので、この機会を楽しいと思ってくださったこと、すごく嬉しかった。
あべどんさんは「この2人でやるのは今年最後なんですけど」と仰っていたけど、ぜひともまた、このお二人の芸術的な邂逅を観聴きしてみたい。それもまた、生きてりゃきっと会えるから、の気持ちで、音源を聴いたりしながら次回を待ちたいと思います。